病理検査では生検や、手術、細胞診でとられた組織、細胞を顕微鏡で検査をして病理診断を行います。病理診断は臨床診断を行う上でたいへん重視されており特に良性・悪性を決める場合には最終的な診断となります。病理診断は病理を専門とした医師(病理医)が行います。病理診断科の常勤医師(沢辺、坂田、杉田)は日本病理学会から認定された病理専門医、日本臨床細胞学会から認定された細胞診専門医の資格を持っています。病理検査には生検検査、手術検査、細胞診検査、病理解剖検査、病理特殊検査などがあります。
肺、胃、大腸、膀胱などの臓器から内視鏡検査の際に少量の組織をとり顕微鏡で検査します。また乳腺、前立腺、肝臓、腎臓、骨髄などの臓器から針で採取したり、皮膚、子宮、リンパ節の一部をとって調べることもあります。
肺、乳房、胃、大腸、虫垂、肝臓、胆嚢、すい臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮などを手術で摘出したあとに、くわしく顕微鏡を用いて検査をします。腫瘍の場合は悪性腫瘍(がん)か良性腫瘍かを調べます。悪性腫瘍の場合にはどのような組織型で、どこまで浸潤しているか、手術で取り切れているかどうかなどを検査します。また内視鏡検査で早期の胃腫瘍、大腸腫瘍を切除し検査することもあります。
喀痰(たん)、尿、胸水、腹水、脳脊髄液、子宮頚部擦過物、胆汁などの液状の検体を顕微鏡で検査します。乳腺や甲状腺から針で検体をとって調べることもあります(穿刺吸引細胞診)。超音波内視鏡下で針生検を行い検体をとって調べることもあります(EUS-FNA)。最初に細胞検査士(スクリーナー)が異常細胞をみつけて細胞診専門医と相談して細胞診断を行います。病理診断科では日本臨床細胞学会から認定された細胞検査士が6名います。細胞診の判定は一般には陽性、疑陽性、陰性の3段階で行われますが、婦人科子宮頸部細胞診検査ではベセスダシステムを用いてNILM, LSIL, HSIL, SCC, ASC-US, ASC-Hと評価されます。NILMは正常であり、SCCは扁平上皮癌です。
当院で不幸にしてお亡くなりになられた場合には、ご遺族の方の書面による了解を得て病理解剖(剖検ともよびます)を行うことがあります。病理解剖は直接の死因を明らかにし、臨床診断が正しかったかどうか、治療効果があったかどうかなどを確かめるために行います。病理解剖は死体解剖保存法に則って行われており公衆衛生、医学教育、医学研究の上で欠かせないものです。ご遺族には病理解剖が終わった時点で担当医から肉眼所見による説明があり、その後に病理医から病理報告書が作成されます。
近年、悪性腫瘍に対するゲノム診療が急速に実用化されてきており、さまざまな悪性腫瘍に対して分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が開発されてきました。投薬にあたっては悪性腫瘍がそれらの薬物に対して効果があるのかどうかを病理検体を用いて調べる必要があります。病理診断科ではEGFR, RAS, BRAF, ROS1, Her2, MSI, PD-L1などのゲノム検査が行えるように検査体制を整えています。
病理診断科では顕微鏡による通常の検査以外に術中迅速診断、電子顕微鏡検査、蛍光抗体法、免疫組織化学検査(免疫染色)、in situ hybridization 検査などの特殊検査を行っています。術中迅速診断は手術中に少量の組織を採取し凍結切片を作製して直ちに行う診断です。電子顕微鏡検査は通常の顕微鏡で観察できない細胞内の微細な構造などを超高倍率(1,000倍以上)で観察する場合に行います。蛍光抗体法、免疫組織化学検査(免疫染色)は抗原-抗体反応を利用して特定のタンパク質を顕微鏡下で同定するのに用います。In situ hybridization 検査は核酸ハイブリッド形成反応を利用して特定の核酸配列を顕微鏡下で同定するのに用います。
沢辺 元司(主任医長)
1983年東京医科歯科大学医学部卒。2022年4月より当院勤務。日本病理学会病理専門医、日本病理学会病理専門医研修指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本臨床細胞学会教育研修指導医。
坂田 晃子(主任医長)
2006年筑波大学医学専門学群卒。2016年4月より当院勤務。
杉田 翔平(医員)
2017年東京医科大学卒。2024年4月より当院勤務。
検査の種類 | 件数 |
---|---|
生検・手術標本組織診断 | 6,552 |
術中迅速診断(組織) | 239 |
蛍光抗体法検査 | 65 |
免疫染色 | 2,193 |
ER免疫染色 | 293 |
Her2免疫染色 | 329 |
電子顕微鏡検査(外注) | 15 |
細胞診検査 | 4,474 |
婦人科細胞診 | 1,948 |
その他の細胞診 | 2,526 |
病理解剖 | 7 |