「日立システムプラザ新川崎」の社員食堂と売店において、「指静脈マネー」の実証実験を行いました。
「指静脈マネー」は、銀行ATMなどで実績のあるセキュアな指静脈認証技術をクレジット決済処理に適用したもので、レジで「指」をかざすだけで瞬時に処理が完了します。
カードレス、サインレスの身軽さと利便性が、新しい決済サービスの可能性をきりひらきそうです。
国内金融機関の約8割*でATMの本人認証に採用され、すでにデファクトスタンダードの地位を確立しつつある指静脈認証技術。その高セキュリティ性と利便性は、データセンタやオフィスビルなどの入退管理システムとして、また企業システムのログオン認証やセキュアシングルサインオンなど幅広いシステムにも適用され、高い評価をいただいています。
この指静脈認証技術を、さらに付加価値の高いソリューションへと発展させるため、新たに考案されたのが「指静脈マネー」です。指静脈マネーは、クレジットカード決済の本人認証に指静脈認証技術を活用したもので、最初に指静脈データを登録すれば、あとは「指」を装置にかざすだけで本人確認とクレジット決済処理を実現。カードの提示はもちろん、暗証番号の入力やサインの必要もありません。まさに“手ぶらでクレジット決済”実現する、次世代型の決済サービスといえるでしょう。
指静脈マネーは、物理的・環境的にクレジットカードを持ち歩けない場所での利用に効果が高いサービスになると期待されています。例えば、スパやプール、トレーニングジムなど、財布やカードを身につけられない場所での決済手段として、「指」以上に便利な手段は思いつきません。生体内部の情報であるため、水や汗で湿っていたり、乾燥している指での認証にも強いことも大きなアドバンテージとなるでしょう。
また、ホテルやゴルフ場、社内施設(食堂や売店など)など、限られたエリア内にさまざまな決済の場がある環境でも、カードを常時携帯する必要のない自由さが、利用者の利便性と購買意欲を高めます。遊園地やテーマパークなどのアミューズメント施設で活用すれば、チケット購入やレストラン利用、ショッピングのたびにカードを取り出す面倒さから解放されるでしょう。さらにショッピングモールやスーパーマーケットの会員サービスと連携させれば、カードを忘れてもポイントサービスや割引セールなどのチャンスを逃す心配がありません。
こうした、一定のエリア内にクローズされたマーケットにおいて、セキュリティと利便性を高めなら、指一本で高額決済が実現できるのが指静脈マネーの大きな特長です。
指静脈マネーシステム構成概要
日立システムプラザ新川崎の食堂風景
日立は2007年9月から3ヵ月間、株式会社ジェーシービー(以下JCB)の協力のもと、情報・通信システム関連の事業所である「日立システムプラザ新川崎(神奈川県川崎市)」の社員食堂と売店において、指静脈マネーの実証実験を行いました。実験には約200名の従業員が参加し、一人ひとりの指静脈データと「クレジットカード付き社員証」をひも付けた情報が、事前にシステム登録されました。
これにより、食堂や売店でレジに接続された指静脈認証用センサーに指をかざせば、登録済みの指静脈データをマッチングして個人を特定後、ひも付いたクレジットカード情報を再びレジに返信し、決済を処理する流れとなっています。
食堂で使用された指静脈マネーシステム
利用者は食べたいメニューのタッチパネルのガイダンスに従い、認証センサーに指をかざし、表示された自分の名前に間違いがなかったら、確認ボタンをプッシュ。この間にかかる時間は、わずか数秒。あっという間に支払い(クレジット決済)が完了してしまいます。あとはメニューをトレーに載せ、食堂内の空いている席へと進んでいきますが、レジ前でのカードの出し入れがないぶん、ランチタイムの長い列がスムーズに流れていきます。
これまでの「クレジットカード付き社員証」を使った決済では、「食器を載せたトレーを持ちながらカードを取り出すのが大変だった」という声が多かったことからも、その導入効果は絶大。スマートでスムーズな決済に加え、カードを紛失する心配もないため、実験に参加していない従業員から、「自分たちにも使わせてほしい」との要望が非常に多く寄せられました。
隣にある売店でも、指静脈マネーに対応したPOSレジにより、迅速な決済が行われました。選んだ商品を差し出してセンサーに指をかざすと、レジ担当者から「○○さんですね?」と声がかかり、確認後に決済されます。「小銭やカードを持たなくていいので便利です」と、こちらも好評でした。
食堂での指静脈マネーの利用風景。指静脈認証用センサーに指をかざすだけで、クレジット決済がスムーズに行われた
売店でも、指静脈マネーに対応したPOSレジにより、迅速な決済が行われた
銀行ATMでも採用されている指静脈認証技術がバックボーンにあるため、その確実性とセキュリティ性の高さから、実験を開始して以来、認証間違いなどのトラブルもなく、スムーズに運用されました。本当に指一本でクレジット決済が行われているようすからは、これから生まれるビジネスモデルへの期待が高まります。
日立は11月末までの実験成果を経て、社内サービスを継続しています。さらに対象者を拡大したデータ収集を行いながら、事業化に向けたノウハウの蓄積やビジネスモデルの検討などを進めていく予定です。カードレス、サインレスの“手ぶらでクレジット決済”を、私たちがさまざまな場所で目にするまで、そう長い時間はかからないはずです。