指静脈認証システムによって 電子カルテへの迅速なログインを実現
電子カルテの導入が進む中、重要な課題となっているのが、患者さんの個人情報を守る確かなセキュリティとカルテの真正性確保です。
そこで医療法人大分記念病院(以下、大分記念病院)は、電子カルテの認証システム更新にあたり、日立の指静脈認証システムを採用。従来の「ID+指紋」に代わる「ID+指静脈」での認証により、さまざまな状況下での確実・迅速なログインを実現し、利便性と真正性をさらに高めました。
大分記念病院は、1980年12月に「患者さん中心のチーム医療」という理想を掲げた4人の医師が、新しい船出を“記念”して名付け、設立された病院です。医師、看護師、薬剤師、セラピストなどがお互いに専門分野で協力し合い、患者さんにとって最善の医療サービスを提供しようという理念、そして常に“患者さんの目線で考える”というスタンスは、当時まだ日本では珍しい先進的な取り組みでした。
「開院当初は血液疾患を主体とした急性期の病院としてスタートしましたが、血液疾患の患者さんは重症化すると、さまざまな合併症が出てきます。そこで現在は血液、消化器、呼吸器、循環器、神経、透析、リハビリなど、各専門分野の医師を擁して、急性期から介護まで最善のサービスを一体的に行える内科の専門病院をめざしています」と語るのは、総務部長・臨床技術部長の麻山 美喜雄氏です。
大分記念病院では2006年11月に電子カルテを導入し、電子保存のための3原則(真正性、見読性、保存性)に準拠したシステム構築を行いました。なかでも真正性を担保するため、カルテの虚偽入力や書き換え、消去などを防ぐ認証基盤には、「生体認証が必須であると考え、周波数解析法を用いた指紋認証を採用しました。これは指紋データが画像として残らないため、外部へ流出する危険性の少ないものです」と麻山氏は説明します。
指静脈認証システムの利用風景
導入当初は問題なく運用されていた指紋認証でしたが、ユーザー数が増え、さまざまな状況下での本格的な活用が進むにつれ、「いくつかの課題が出てきました」と振り返るのは、院内情報システムを管轄する経営企画課 課長の上土井 雅章氏です。
「この指紋認証システムは、指紋の紋様パターンを波形とみなし、認証していましたが、医療用手袋を外した直後では、認証できないケースが少なからず発生することがわかりました。これは手袋内部に付着している円滑用パウダーが指紋の溝に入り、紋様パターンの波形を変化させてしまうのが原因でした。このため手袋を外した後は丹念に手を洗った後でないと電子カルテシステムにログインできません。また冬などの乾燥する時期も、認証精度が落ちるケースが発生し、ドクターや職員から“なんとか改善できないか”という要望が寄せられていたのです」と上土井氏は続けます。
そこで2013年3月、新たな認証基盤として採用されたのが日立の指静脈認証システムでした。「指紋認証システムのベンダーさんは、新技術を採用したバージョンを提案してくださいました。以前に比べて確かに認証精度は上がりましたが、やはり生体外部の情報を活用するという面では不安が残りました。一方、日立さんが提案された指静脈認証は、生体内部の情報を利用するため、乾燥や手洗いなどによる手荒れといった外部的な影響を受けない点が非常に優れていると判断しました。医療業界だけでなく、銀行ATMや重要施設の入退室管理などにも適用されており、将来的な横展開が期待できること、また生体認証でトップクラスのシェアを持っておられることも高く評価しました」と麻山氏は語ります。
日立は電子カルテシステムのメーカーと協調して接続インタフェースの開発を支援する一方、電子カルテにアクセスできる約160端末に、小型で使いやすい指静脈認証装置を設置。電子カルテを扱うドクターや職員、約200名の指静脈情報を一人あたり左右2本ずつ、計4本の静脈パターンを登録する作業を行った後、予定どおり運用をスタートさせました。
IDと指静脈で本人認証する新システムにより、「手がどのような状況でも、認証できるので、ログイン時のストレスがなくなりました。診療部からも非常に高い評価をいただいています」と上土井氏は笑顔を見せます。
日立の指静脈認証システムは、生体内の静脈パターンで認証を行うため、偽造が極めて困難なうえ、照合時間も非常に短く、ユーザーを待たせないスピーディな本人認証が行えるのも重要なポイントです。これにより、患者さんの個人情報を厳重に管理することが可能になったほか、迅速性が求められる医療活動にも支障をきたさない高レスポンスな業務環境を実現。さらに麻山氏は、「IDと生体の組み合わせによる認証のおかげで真正性が担保でき、外部監査においても問題とならない点も大きなメリットです」と強調します。
今後は指静脈認証を「勤怠管理や入退室管理などにも横展開していきたい」と語る麻山氏は、より喫緊のテーマとして、電子カルテをタブレット端末やスマートフォンで活用する際の対応にも期待を寄せます。
「これからは、より患者さんの近くで、さまざまな医療情報を活用する機会が増えてきます。電子カルテへの安全なアクセスについても、可能ならば常に携帯できるスマートフォンで実現したいと考えています。すでに指静脈認証はタブレット端末に対応していますが、今度はぜひスマートフォン対応も実現していただきたいですね」と麻山氏は今後の展望を語ります。
高度な医療システムの導入とグループ医療の実践により、地域の患者さんに信頼され喜ばれる病院を追求し続ける大分記念病院。その積極的な活動を、これからも日立は指静脈認証システムの継続的な機能強化によって力強く支え続けていきます。
なお本件は株式会社日立製作所の指静脈認証システムを株式会社九州日立システムズが大分記念病院に提供したものです。
日立の指静脈認証技術の概要
[所在地] 大分県大分市羽屋9-5
[設立] 1980年12月
[職員数] 219名(2013年4月1日現在)
[診療科] 血液内科、消化器内科、循環器内科、糖尿病内科、呼吸器内科、神経内科、腎臓内科、人工透析内科、リウマチ科など