日立の指静脈認証装置でPOSレジと勤怠管理システムの認証一元化を実現
いま外食業界では、競合他社との差別化を図り、ステークホルダーからの支持を獲得するため、接客品質の向上や従業員のモチベーションアップ、内部統制の強化などが重要な課題となっています。
そこで「庄や」「やるき茶屋」「日本海庄や」などの全国展開で知られるフードサービス大手の株式会社 大庄(以下、大庄)は、POSレジ会計システムと勤怠管理システムの本人認証に日立の指静脈認証装置を導入。操作者のログ管理によるリスク対応強化やスキルの向上、勤怠管理の精度向上と認証システム全体のスピードアップにより、さらなる経営改革に向けた高効率・セキュアなシステムを実現しました。
「庄や」「やるき茶屋」「日本海庄や」などの人気居酒屋チェーンを主軸に、約40業態、全国約990店舗(2009年11月末)を展開している大庄。「人類の健康と心の豊かさに奉仕する」を企業理念とし、安全・安心・旬で新鮮な食材を使用した手作り料理が特長です。同社はIT活用についても積極的であり、全国店舗に食材や用品を日々遅滞なく送り届ける物流配送システムをいち早く構築。直営店の勤怠管理システムにも7年前から指紋認証装置を導入していました。
「しかし従業員が増加するにつれ、指紋では認証できないケースが増えてきました。特に厨房で働くスタッフは水濡れなどのため指紋認証が難しく、代わりに個人IDでデータを入力するなどのダブルスタンダードが発生していたのです」と語るのは、全国店舗の環境整備を担う店舗本部 第三支社 首都圏第六店舗部 ブロック長の渡部和也氏。IDだけでは本人以外も入力できる可能性があるため、勤怠管理の精度向上をめざす次期システムには、「指紋に代わる本人認証の仕組みが必要との結論に達しました」と渡部氏は続けます。
同じくシステム更改の時期が近づいていたPOSレジ会計システムについても、「従来は店長などが持っている物理キーでレジを管理していましたが、セキュリティ性と管理性を一段と高めるため、かねてから生体認証の仕組みを付加したいという思いがありました」と語るのは、管理本部 情報システム部 部長の土屋 敏則氏です。「そこで勤怠管理とPOSレジ、これら2つのシステムを連携させた厳格な本人認証システムとして新たに採用したのが、日立さんの指静脈認証装置だったのです」。
[土屋氏]
土や竹、木など自然をイメージした安らぎの空間で、旬の鮮魚やプレミアム焼酎などの菜食美酒を楽しめる「ととや市場 結 銀座店」。同店のPOSレジと勤怠管理システムにも、指静脈認証装置が適用される
日立の指静脈認証技術は、生体内の静脈パターンを利用して本人を識別するため、かすれや乾燥肌、水濡れなどによる影響を受けにくい特長があります。また、偽造がきわめて困難なため、第三者のなりすましを防ぐ高度なセキュリティも実現。装置のコンパクトさや認証スピードの速さについても、国内外の導入企業から高い評価を獲得しています。
「手のひら静脈認証も検討しましたが、レジ周りスペースは非常に狭いため、小型で設置スペースの小さい指静脈認証が、当社の利用環境には最適でした。また、指静脈認証は、指紋認証と同じ“指”を使った運用なので、移行に際しての従業員教育も行いやすいと判断しました」
[土屋氏]
2009年6月から首都圏の試行店でテスト導入が開始された新システムは、POSレジと勤怠管理用PCそれぞれに指静脈認証装置が接続されており、従業員は所属店舗のPCから指静脈データを登録する仕組みとなっています。勤怠管理システムでは、出勤時と退勤時にそれぞれ指を装置にかざすだけで、瞬時にデータが記録されます。またPOSレジを使う際には、操作権限を持った従業員のみが指静脈認証でレジを操作できて、1件1件の会計をだれがいつ操作したのかの記録も正確に残せるようになりました。
「POSレジや勤怠管理システムのベンダーさんから協力を得て、従業員の指静脈データを本部で一元管理しながら、両システムでデータを柔軟に活用できる仕組みを構築しました」と語るのは、新システムの導入を担当した管理本部 情報システム部 係長の飯室 裕次氏。飯室氏によれば、店長や社員は繁忙期、所属店以外の店舗にもヘルプで出向くことがあるため、その際に本社のサーバから自分の指静脈データを呼び出し、他店のPOSレジでも認証できる仕組みを作れば、他店で指静脈データを再登録する必要もなく、会計操作のセキュリティや記録管理がより向上すると考えたそうです。
同じく新システムの導入に力を注いだ管理本部 情報システム部係長の内間 智章氏も、「従来の勤怠管理システムは、指紋認証のエラー率が高いことと、IDで代替入力する際の手間などで、かなりの時間を費やしていました。しかし指静脈認証ではエラーも起こらず瞬時に認証できるため、従業員のストレスがなくなり、システムに対する信頼感と業務効率が大幅にアップしました」と評価します。
大庄では、POSレジの新機種が物理キーからID管理へと変わることを機に、一気に指静脈認証装置によるセキュリティ強化を決断しました。これは外食業界では初めての試みとして注目されています。
「自動車に例えるとわかりやすいのですが、免許証を持った人が3人いるのに自動車とキーは1つしかない。すると人はどうするかというと、みなが乗りたいときに乗るには、いつも自動車にカギを付けておけばいいじゃないかと考えるんですね。もし合鍵を3つ作っても、本来なら運転できない人にカギが渡らないよう、管理を厳重にするしかありませんが、これにはたいへんな労力が必要で、時にはトラブルの原因にもなります。POSレジでもまったく同じ状況が起こっていましたが、指静脈認証を使うことによって、そうした不安がすべて解消できます。自分の指1本で、操作権限を持った人だけがレジを使え、だれがいつ操作したかもきちんとログで管理できる。もはや物理キーは必要ないと考えたのです」
[土屋氏]
POSレジと勤怠管理システム双方の操作手順が指静脈認証によって標準化されたことで、「社員教育も非常にやりやすくなりました」と喜ぶ渡部氏は、さらなるメリットとして社員のモチベーショ ンやスキルの向上にも言及します。「POSレジ操作で個人が特定され、レシートにも名前が記入されるようになれば、おのずと“ミスをなくそう、一生懸命やろう”という緊張感や向上心が生まれてきま す。将来的には個々人の操作スキルを見据えた対応、教育なども行えるようになるでしょう。チームや組織全体のレベルアップにもつながると期待しています」。
庄やグループの全国店舗に導入される指静脈認証システム
現在は全国直営店への本格展開がスタートし、POSレジと勤怠管理システムは順次、指静脈認証装置付きの新システムへと切り替わっていく予定です。
「利用者個人を特定できる指静脈認証は、業務効率やセキュリティ、お客さまサービスの向上に役立つばかりでなく、従業員教育や内部統制の強化をはじめとする今後の経営改革にも欠かせないツールになっていくと考えています。日立さんの協力も得ながら、さらに付加価値の高い活用法を追求していきたいと思います」と力強く語る土屋氏。
これからも日立は、日本の食文化を担い、お客さま満足の最大化を追求する大庄の取り組みを、指静脈認証装置をはじめとする幅広い製品群とソリューションで積極的に支援してまいります。