全国のタクシー会社に先駆けて遠隔点呼システムを導入。なりすまし防止に指静脈認証を活用
バスやタクシー、トラックなど人や物を運ぶ事業者には、乗車前にドライバーの健康状態を確認する点呼が義務付けられています。しかし近年、点呼を実施する運行管理者の人手不足が深刻化したことから、2022年4月、要件を満たす機器・システムを用いた「遠隔点呼」を国土交通省が認可しました。
名鉄四日市タクシーは、この遠隔点呼をいち早く導入。点呼の主要要件の一つ、「リアルタイムでの個人識別・認証」の手段として、日立の指静脈認証装置 H-1を採用しました。
名鉄四日市タクシーは三重県の四日市市に本社を置き、周辺の5市5町を営業エリアとするタクシー会社です。本社のある四日市事業部と北部事業部の2拠点で車両146台と230名の従業員が稼働しています (2025年2月現在) 。国土交通省が、バスやタクシー、トラックなどの運輸事業者に、乗務員に対する遠隔点呼の適用認可を発表した2022年3月頃、名鉄四日市タクシーは業界に先駆けてシステム導入の検討に入りました。その背景には深刻な人手不足があったといいます。 「タクシー会社の運行管理者(以下、管理者)はドライバーを経験した後に、比較的高齢になってから就くことが通例です。近年はドライバーも常々不足しており、一人辞めても補充が難しい。そのためドライバーのキャリアがどうしても長くなります。結果、管理者の世代交代もできず、慢性的な管理者不足という課題がありました」(星野氏)
コロナ禍による売り上げ減少などの影響もあり、新たな人員の補充が容易ではない中で、安全運行のために欠かせない点呼業務をいかにきちんと遂行していくかは業界共通の課題でもありました。
「当社の管理者にとっても、毎日、全ドライバーに対して行う点呼業務の負荷は大きく、遠隔点呼はぜひ導入したいと思いました。申請は、全国のタクシー会社の中でも当社が一番早かったようです。何もないところからのシステム導入でしたが、システムベンダーさんのおかげで、わずか5カ月で運用を開始することができました」(中川氏)
国土交通省では、遠隔点呼ガイドラインを提供し、システムや実施場所、運用上の要件を詳細に定め、「対面点呼と同等の確実性」を担保するよう指導しています。名鉄四日市タクシーでは、複数のシステムベンダーの中から、タクシー会社専用の「タクコン(*1)遠隔点呼システム」を中心に提案を行った株式会社システムオリジン(以下、システムオリジンと記載)を選定しました。システムオリジンは、システム上の重要な要件である「なりすましの防止」に対し、認証精度、安全性がともに高い、「静脈」による生体識別法を用いた日立指静脈認証装置 H-1を組み込み、提案しました。
指静脈認証装置 H-1
「システムオリジンに決めた理由は、PCからカメラ、アルコール検知器、認証機器などシステムに必要な装置をトータルで提案してくれたことです。私が主にセッティングや登録業務を担当しましたが、乗務員や車両などのデータを遠隔点呼のソフトウェアにすべて入力する作業が最も大変で、それ以外は導入までおおむねスムーズに終えることができました。指静脈認証については、小さい読み取り装置をつなぐだけで簡単に使用でき、面倒なセッティングが不要でした。登録も、指を曲げずに所定の位置に乗せると一瞬で完了しました。気温などの影響もほとんど受けないので読み取り時もスムーズです(*2)」(生井氏)
遠隔点呼の様子
遠隔点呼導入の重要な狙いは、遠隔拠点間での点呼業務の効率化と管理者の負担軽減です。名鉄四日市タクシーは、2022年8月から運用を開始。全国のタクシー会社で最も早く遠隔点呼を導入した2社のうちの1社となりました。
「システムを使うことによって、法令を確実に順守できるというのが当社の一番の期待でした。対面の時は点呼簿も手書きで、時にはチェック漏れもありましたが、システムなら全項目チェックしなければ点呼完了とならないので、漏れがありません。また、指紋などの個人認証の場合、誰かが不正取得しようと思えばできるそうですが、静脈はコピーできないので、なりすまし防止効果がとても高いです。管理者本人でないと認証されないので、遠隔でもとても安心感があります」(星野氏)
現在は、四日市事業部と北部事業部の2拠点の全ドライバーの点呼を北部事業部の管理者が遠隔で行っています。 「ドライバーが体温やアルコール呼気などの計測データを入れて、それを見ながら私たち管理者が点呼を行うのですが、なぜか対面の時よりも、『今日は体調どう?』『頑張って』といった声かけが増えて、ドライバーとの関係がより親密になったような気がします」(中川氏)
2拠点分の点呼を1拠点に集約できたため、管理者の業務負担の一部を減らすことも実現しています。
「管理者の不足が解消できるところまではいきませんが、点呼の効率がとても良くなったことで、事務方は事務に専念できるようになりました。今後、在宅勤務でも遠隔点呼ができるようになれば、もっと管理者の負担が減るのではないかと思っています」(星野氏)
運輸業の従業員の時間外労働規制が強化される2024年度に先駆け、国土交通省が2023年11月、事業者間での遠隔点呼業務の先行実施の募集が始まったことから、名鉄四日市タクシーでは三重県内のタクシー会社の遠隔点呼の受託を、2024年10月から開始しました。 「当社では遠隔点呼システムを2セット導入しており、1つは自社の点呼に、もう1つは他社の点呼に使用しています。将来的には、この仕組みを活用して遠隔点呼業務の受託をさらに拡大し、同業他社の管理者不足解消に貢献するとともに、新たなビジネスチャンスの創出にもつなげていきたいと考えています」(生井氏)
名鉄四日市タクシーでは、さらにタクシー業界全体の課題解決と将来を見据え、今後も遠隔点呼の適用拡大を求めていくといいます。
「今のところ遠隔点呼は、点呼執行場所として登録した事業所でしか行えないルールになっています。今後、ライドシェアつまり自家用車活用事業が現実的になってくれば、スマートフォンなどを使った遠隔点呼が必要になってきます。すでに、ドライバーが宿泊する場合があるトラックやバスの乗務では、電話による点呼が一部、認められていますが、タクシー業界もいずれは遠隔点呼の適用拡大が必要になると思います。管理者の在宅勤務による点呼や自家用車ドライバーへの点呼ができるようになることで、多くのお客さまにタクシーをより安全に使ってもらえるようになるかもしれません」(生井氏)
同社では、タクシー業界が抱える多くの課題解決に向けて、今後もさまざまな試みを行っていく方針を掲げています。
[本社所在地] 三重県四日市市新正1丁目12番1号
[設立] 1952年7月22日
[従業員数] 230名(2025年2月現在)
[事業内容] 一般乗用旅客自動車運送事業