日立の指静脈認証やIC免許証と連携しさらなる高速・高精度な飲酒検知を実現した「デュアル認証式アルコール測定システム」
被害者はもとよりドライバーの家族までもが突然の悲劇に見舞われる飲酒運転事故の多発が大きな社会問題となっています。
このため国土交通省は事業用自動車の飲酒運転ゼロ目標を達成するため、2011年4月1日より、点呼時のアルコール検知器の使用と記録保存を義務づける省令改正を行う予定です。
この動きに対応し、業務用アルコール検知器のトップメーカーである東海電子株式会社(以下、東海電子)は、日立の指静脈認証システムと連携し、確実な本人認証を可能とする新システムを開発。
なりすましを回避する迅速・正確な測定により、飲酒運転リスクの解消を効果的に実現します。
1979(昭和54)年、静岡県富士市においてデジタル時計や小型電子機器の実装・組立企業として誕生した東海電子。同社はコンパクトでスピーディな開発・製造技術とノウハウの蓄積をベースに、2003年自社開発製品の第1号となる業務用アルコール測定器「ALC-PRO」を開発しました。この製品は当時から多発していた飲酒運転による交通事故を極小化し、企業として必要な事故防止策を講じるための切り札として、バス会社、タクシー会社、運送会社といった交通事業者を中心に販売台数を拡大。後継機となる「ALC-PROII」も、業界最高水準のアルコール濃度測定技術や、測定から管理・記録までを一貫したシステムとして提供するトータルソリューションが評価され、日本トップシェアのメーカーへと発展しました。
「いま市場には簡易型のアルコール検知器が多数出回っていますが、当社はあくまでもプロのドライバーさんが日々の点呼の際に使っていただく高精度な業務用システムを提供することをポリシー としています。具体的には、誤反応を起こさない、何らかの形で記録を残す、不正が行えない仕組みを提供する、以上の3点を重視した製品づくりで、信頼性を求める全国のお客さまから高い評価 をいただいています」と語るのは、営業推進部 部長の津田 敏男氏です。
以前に比べて飲酒運転に関する刑罰が厳格化されてきたとはいえ、近年も酒酔いや酒気帯び運転による交通事故が繰り返されています。なかでも事業用自動車は事故件数・死者数ともに、自家用自動車に比べて減少の歩みが鈍いことから、国土交通省は2009年3月、「事業用自動車総合安全プラン2009」を策定。今後10年間で死者数・事故件数を半減させるとともに、飲酒運転ゼロの目標に向け、2011年4月より緑ナンバー事業者に対し、乗務員の点呼時にアルコール検知器の使用と記録保存を義務づける省令改正が行われる予定です。
このアルコールチェック義務化による、さらなる高速・高信頼なシステム需要の拡大に対し、東海電子がALC-PROIIをベースに開発したのが、日立の指静脈認証システム*1やIC免許証と連携する「デュアル認証式アルコール測定システム」です。
「新システムでは、免許証の確実な携行と有効期限の確認、なりすましを許さない高精度な本人認証を同時に証明することを大きなコンセプトとしました。そこで注目したのが、変造がきわめて困難なIC免許証と、本人確認の確実性を高める指静脈認証を組み合わせることだったのです」と語るのは、システム営業G 主任の 井上 敦士氏です。
測定・管理・記録をトータルに実現する同システムは、カードリーダーにIC免許証を置いた後、交付時に決められた8けたのパスワードを打ち込み、専用マウスピースに呼気を吹き込むだけで高精度なアルコール測定と免許確認を実行。測定記録はPC内に1年分保存でき、必要な時に乗務員別、日時別など目的に応じて取り出すことができます。
しかし、IC免許証の貸し借りなどによる不正利用を防ぐには、「どうしても生体内部の情報を使った指静脈認証が不可欠だと考えました」と井上氏は強調します。さらに、指静脈認証と組み合わせることで、面倒なパスワード入力も代替できるため、業務処理のスピードアップやユーザーの利便性向上にもつながるものと期待されています。
数ある生体認証の中から指静脈認証が選ばれた理由につい て、「認証スピードの速さとモジュールのコンパクトさ、認証に必要なデータサイズの小ささなど、すべての面において最も優れていると判断したからです」と語るのは、システム営業G 上席研究員の 本田 稔光氏です。「当社では自動車搭載型で、アルコールチェックでOKが出た場合のみエンジンが始動できるインターロック装置“ALC-LOCK”という製品を出しています。以前からこの製品にも生体認証を適用するための検討作業を行っており、使い勝手や組み込みやすさから、指静脈認証がベストだという結論が出ていました。そこで今回は、先行してALC-PROIIと組み合わせたシステムを提供することにしたのです」と本田氏は続けます。
日立の指静脈認証システムは、PCベースのALC-PROIIアプリケーションに組み込む際にも、「非常に扱いやすかった」と本田氏は評価します。
「他の生体認証システムでは、扱うデータ量が多いため、どうしても認証スピードが遅くなってしまいます。これに対し指静脈認証は、やりとりするデータ量が少ないため、PCやUSBインタフェースのリソー
スをあまり消費しません。周辺機器としてアドオンするシステムとしては、これも非常に重要なポイントとなりました」と本田氏は言います。
独自にDLL*2を開発し、指静脈認証と既存アプリケーションとの親和性を高めたことで、スピーディな処理性能が実現できたと語るのは、システム営業Gの長谷川望氏です。「人数が多くても円滑に測定できるよう、スピードと精度のバランスを図るチューニングに力を注ぎました。1人あたり左右の指1本ずつを登録することで、システム1台でMAX1,000人の情報が登録できます」と長谷川氏は続けます。このシステムの適用により、アルコール検知の義務化に際しても、なりすましのリスクを解消しながら、飲酒や免許証の確認漏れを防げるだけでなく、点呼の標準化と効率化、さらには監督官庁の監査にもスピーディに対応することが可能となります。
さらに津田氏は、「デュアル認証式アルコール測定システムは、緑ナンバー事業者以外のお客さまにも、ぜひお勧めしたいソリューションです。運送事業に限らず、一般企業においても、多くの営業車両を所有しているお客さまがいらっしゃいます。そうした車両で万一、飲酒運転などの危険運転行為で事故が起きれば、組織のイメージダウンばかりか、経営などにも大きな影響を与えてしまいます。当社としては、飲酒運転の撲滅に加え、企業のコンプライアンス強化という観点からも、幅広いお客さまに今回のシステムを提案していきたいと考えているのです」と力を込めます。
東海電子では今後も市場からの反応を見ながら、インターロック装置ALC-LOCKやIT点呼システム「Tenko-PRO」などのラインアップに指静脈認証の適用を積極的に進めていく予定です。また、全国15,000事業所以上への導入実績を持つ同社では、アルコール検知システムと事業所の勤怠管理、入退室管理などを連携させた、より付加価値の高いソリューション提案にも期待を寄せています。
「指静脈認証のデータベースを複数のシステムで共有すれば、お客さまに対してさらに利便性やセキュリティの高いソリューションが提案できます。その意味でも今後は日立さんに、新たなビジネス展開での協業もお願いしたいと思います」と井上氏は語ります。
その期待に応えるため、これからも日立は指静脈認証システムをはじめとする幅広い製品群とソリューションにより、東海電子のビジネスを強力にサポートしていきたいと考えています。
[本社] 静岡県富士市厚原247-15
[設立] 1979年11月19日
[資本金] 9億9,200万円
[従業員数] 127名(2010年10月現在)
[事業内容] 業務用アルコール測定器の製造、販売、サポート、電子機器の製品設計、製造など