産婦人科領域では子宮良性手術および悪性腫瘍手術に対して、ロボット手術を施行しています。
以前の子宮良性腫瘍手術は、痛みの少ない腹腔鏡手術が広く行われてきましたが、悪性腫瘍手術に関してはそのほとんどがお腹を開いて処置をする開腹手術にて施行されてきました。とくに悪性腫瘍手術は、現在全国的に多くの症例がロボット手術へ移行してきています。
医師の習熟度が早いことが大きな利点です。腹腔鏡手術で使用される処理具の先端は開閉と旋回動作のみで自由度が低く、高い技術を要します。例えるなら、調理用の菜箸を使って手術をしているようなものです。それに対し、ロボット手術は処置具の先端部が人間の手と同じように動かすことができ、尚且つ医師の手の動きを、細かな形でトレースする縮尺機能も付いているため、繊細な処置をより正確に施行できるようになりました。
これにより、従来の腹腔鏡下手術の20分の1程度の手術経験で医師は一定水準の技術を得ることができるようになりました。
先程述べた医師習熟度の早さによって、より安全性が高く負担の少ない治療が提供できるようになったことが大きいと思います。開腹手術になりますと術後に安静状態を維持しなければならないため、血液が滞留し血栓症のリスクが上がりますが、ロボット手術は手術後翌日から動くことができるため、その心配がほとんどありません。また、癒着(臓器同士が貼りつく)による腸閉塞のリスクも開腹と比べて低いことから、術後の合併症リスクが低減されるといえます。
傷口は腹腔鏡手術と同様に8mm程度のものが4~6箇所で済む上に、開腹手術と同等もしくはより短い時間で手術が施行できるため、患者さんにとっても大きなメリットのある手術であると思います。
実際に手術をされた患者さんも、最初はどのような手術なのか分からず不安を抱かれていましたが、術後は痛みが少なくて良かったとの声をいただきその後無事退院されました。
現在保険未適応ですが、子宮頚癌に対する広汎子宮全摘術に関しては出血量が、開腹手術と比較して10分の1で済むため現在保険適応化に向けて活動をしています。輸血を必要とする症例も少なくなりました。またより進行したIB期やⅡ期の子宮体癌に対する悪性腫瘍の手術に関しては転移のリスクがあることからより広範囲のリンパ節(傍大動脈リンパ節)を隔清することが有効であるとのガイドライン勧告もあるため、正確な処置ができて痛みの少ないロボット手術の定評があります。(現在の保険適応となっている悪性腫瘍は子宮体癌のIA期まで)
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