消化器領域では現在、大腸癌と胃癌(図1)に対してロボット支援手術を行っています。
大腸癌手術の内訳は直腸に対する低位前方(下部直腸で吻合)・高位前方(上部直腸で吻合)、結腸癌に対する回盲部切除・右半結腸切除を施行しています。以前は(現在でも施行していますが)腹腔鏡手術で施行、その前は開腹手術で当該手術を行っていました。
胃癌手術での内訳は幽門側胃切除と胃全摘術を施行しており、現在でもロボット手術に加え、開腹・腹腔鏡手術で同手術を施行しています。
どの手術でも共通しているのは、(当院での)腹腔鏡手術だと視野が片目の状態なので、距離感が掴みづらい点がありましたが、ロボット手術では、両目で観察できるため距離感が掴めて繊細な操作に適しています。
直腸の手術は、骨盤の一番低い(奥に細長い)所にあり、腹腔鏡手術では助手が視野展開や組織を持ち上げる時に不安定であったり、術者が処置する際にも、動作に制限のある鉗子で施行するには高い技術が要されます。ロボットでは、術者自身が視野を処置器具をアームで操作・固定するので安定していますし(図2)、映像の拡大・縮小が意のままにできるのでとても便利です。
また、胃癌に対する腹腔鏡手術では、組織を縫う処置が多いので、難易度が高いですが、ロボット手術は縫う作業が得意な鉗子を持っているため、難易度的には腹腔鏡手術より易しいかと思います。
個人的には、外科領域では直腸癌に対するロボット手術が最も適していると思います。骨盤の中は奥深く、腹腔鏡でやるには難しいので。
ロボット手術でも腹腔鏡手術でも合併症や出血量に大きな差はなく、どちらでも良好な手術成績を残しています。
数値としては現れてはいませんが、両目で組織を視認することにより、正確な手技を直感的に施行できるのがロボット手術だと思うので、患者さんには毎回そのように説明し、同手術を勧めています。ひとつ前の質問にあった「医師が手術を施行する上でのメリット」がとても豊富なので、そういう意味では「より安全な手術」と言えるのかもしれません。
対象症例拡大の計画はなく、胃と大腸の手術に関して引き続き経験を重ねていく予定です。
消化器のロボット手術枠が限られており、現状若手の医師が経験できない状況ですが、解剖を把握する教育ツールとしても優れています。ロボットは腹腔鏡よりも習熟度が速い手術だと思うので、若い医師が早くから当手術を施行できる環境になると、患者さんにとってもより良い医療の提供に繋がると思います。
診療科の詳細な内容については、「外科」ページをご覧ください。