EverFlex from Hitachi
ハードウェア基盤 / 仮想化基盤
連載コラム1
ITインフラの構築と運用においては、オンプレミス(以下、オンプレ)とクラウドの2つの選択肢があります。本コラムでは、全5回にわたり、ITインフラの構築と運用におけるオンプレとクラウドの課題と、その課題を解決する理想的な方法、そして具体的な解決策について解説します。第1回となる今回は「ITインフラをクラウドやオンプレで構築・運用するときのメリット・デメリット」について整理します。
2023年1月、日立製作所にて、ITインフラのクラウドやオンプレによる構築・運用の課題調査を独自に実施しました。調査概要については下記表の通りです。
調査期間 | 2023年1月 |
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調査方法 | クローズドアンケート調査(インターネット) |
調査対象者 | 年商100億円以上の会社に勤務しているITインフラの構築や運用担当者 |
有効回答者数 | 210名 |
主な設問内容 |
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本コラムでは、上記の実態調査の結果をひも解いて、ITインフラの構築・運用に必要な視点を解説します。本コラムを読んで、ITインフラに関して貴社でもまだ気付いていない課題や、近い将来に発生するかもしれない問題に気付くことがあるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。
まず最初に、「オンプレによるITインフラの構築・運用のメリット・デメリット」の調査結果を見てみましょう。
オンプレのメリットを確認したところ、下記のような結果となりました。
オンプレのメリットとしては、「自社内でカスタマイズしやすい」「既存システムと連携しやすい」「コストを固定化できる」という項目に回答が多く集まっています。このことから、自社独自のシステム環境に対する親和性がオンプレのメリットであると考えられます。また、オンプレならではの堅ろうなセキュリティを期待した項目にも回答が多く集まっていることから、総じて「自社独自のシステム環境に対する親和性と堅ろうなセキュリティ」がオンプレの代表的なメリットであると言えます。
オンプレのデメリットについては、下記のような結果となりました。
「管理・運用する人材の不足」「管理・運用コストの負担」などの管理運用面の負担にオンプレのデメリットを感じているという結果になりました。人材と管理・運用コストこそがオンプレ最大のデメリットであると言えるでしょう。
次に、クラウドで構築・運用したときのメリット・デメリットはどうでしょうか?
クラウドでの構築・運用のメリットは下記のような結果となりました。
クラウドのメリットとしては、「会社以外の場所でもアクセスできる」、「運用管理における人材の負担が少ない」「運用管理のコストを抑えられる」に多く回答が集まっています。このことから、運用管理に関する負担が軽減できることをクラウドのメリットだと考えている担当者が多いようです。
次にクラウドのデメリットについては、下記のような結果となりました。
クラウドの課題としては「セキュリティリスクの対策」「オンプレミスでカスタマイズしていた要件をクラウドで実現させるための対応強化」「増大するコストの対応」「クラウドサーバーに詳しい技術者の不足」に回答が集まっています。この結果から、クラウドはITインフラの運用担当者や責任者から見て、さまざまな課題があることがわかります。
以上の内容をまとめると下記表のようになります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
オンプレ | 自社内でカスタマイズしやすい 既存システムと連携しやすい コストを固定化できる セキュリティ担保 |
管理・運用する人材の不足 管理・運用コストの負担 |
クラウド | 会社以外の場所でもアクセスできる 運用管理における人材の負担が少ない 運用管理のコストを抑えられる |
セキュリティリスクの対策 オンプレでカスタマイズしていた要件をクラウドで実現させるための対応強化 増大するコストの対応 クラウドサーバーに精通した技術者の不足 |
このようにオンプレとクラウドにはメリットとデメリットが存在し、表裏一体の関係があります。
ここで、「オンプレのメリット」と「クラウドのデメリット」は「オンプレをクラウドに全面移行できないという悩みの発生」、つまり「クラウドリフトができない」という課題につながってきます。一方で、「オンプレのデメリット」と「クラウドのメリット」は「一度移行すると、クラウドからオンプレに容易に戻せないという悩みの発生」、つまり「オンプレに回帰ができない」という課題につながってくるのです。
次回のコラムでは、このクラウドリフトとオンプレ回帰の課題について詳しく解説します。