高齢者の増加にともない、大病院を中心に長い待ち時間や病床不足が問題になっています。また、それが国の医療財政にも影響をおよぼしています。このような現状から、地域の医療機関、自治体、NPOなどが連携し、地域全体で包括的なケアをしようとする動きも始まっています。その一環として、より多くの方が在宅医療を選択する将来に向けて、どのようにしたら医療サービスの質を高めていくことができるでしょうか?
複雑な運転計画に対し正確かつ柔軟に対応できる、医療機器などを配送する自動運転カートがあったらどうでしょう。病院では、患者、医療スタッフ、医療機器が頻繁に院内を移動しています。また、医師の診察に必要な時間と、医療機器を利用する時間は必ずしも一致はしません。在宅医療においても、診察のスケジュールに合わせて必要なものを必要な家へ運ぶことができれば、医療スタッフや機器などの医療リソースを有効に活かした、高水準の医療サービスを提供することができるかもしれません。
オーダーされた医療機器は自動運転カートにより、診療時間に合わせて患者宅まで運ばれます。診察が終わると医師は次の患者宅に向かい、医療機器も別の必要とされる場所にそれぞれ向かいます。そのために、自動運転カートは複雑な運転計画に対して正確かつ柔軟に対応できることが重要になってきます。さらに、薬や食事なども配送することで、より病院に近いサービスにしていきます。
時間を問わずに高頻度に運行できる自動運転カートの特徴を利用して、汚れたシーツやオムツ、その他の医療廃棄物など、毎日処分したいものもしっかりと回収します。使用済みのものを早めに家の外に出すことができれば、自宅を清潔に保ち、友人や知人を招き入れやすくなるなど、暮らしやすさはもっと向上するでしょう。
本件は、経済産業省の平成28年度スマートモビリティシステム研究開発・実証事業(自動運転による新たな社会的価値及びその導入シナリオの研究)の研究成果である。