温室効果ガスの排出量削減に向けて、再生可能エネルギーに注目が集まっています。
しかし、火力発電などの大きな発電所から広く効率よく電力を届けるように作られた現在の電力網に、不安定な再生可能エネルギーが入ることは制御コストの上昇につながります。
そのため、大きな発電所に頼らずに地域で生み出した電力を地域の中で使用するマイクログリッドへのシフトに注目が集まっています。
しかし、人が住む街をマイクログリッドへ変えることは簡単なことではありません。どうしたら、街を少しずつマイクログリッドへシフトさせることができるか?この問いが、私たちが人の視点で考える、再生可能エネルギー比率向上にむけたチャレンジです。
マイクログリッド・・・特定地域内の複数の需要家, 分散電源, 比較的小規模な電力ネットワークで構成された電力供給システム。
ここで提案するのは、クラウドエネルギーソーシングというコンセプトです。
まず、地域住民と地域事業者の1対1のペアを作ります。そして、家庭で生まれた余剰電力を、電力コストを下げたい事業者に提供すると、地域の事業者が物品やサービスでお返しをするという関係を築きます。このような関係ができることによって、電気が欲しい地域の事業者は良い商品・サービスを提供する努力をし、住民は投資家のように地域の事業を応援するようになります。
この、互いの顔が見えるペアが少しずつ増えていくと、やがて地域全体がマイクログリッドになっていくという考え方です。
住民の家には自家発電と蓄電池が普及していて、必要な電力を使った上でなお電気があまっています。
電力料金を下げたいと思う地域事業者は、1日の中で電力使用量が大きくなる時間帯に地域住民から余剰電力を融通してもらうことを考えます。そこで、電力を融通してくれる住民を募るために、お返しとしての自社商品をアピールします。
例えば、地元の名産品になるチーズの開発に力を入れるという食品加工会社のアピールに対して、「地元のチーズってなんかいい」と住民が融通先に選んでくれるかもしれません。
自分が融通した電力で、お返しのチーズと、地域の産業へ貢献できることの2つのうれしさが同時に得られるのです。
折々にスポーツゲームやコンサートなどが行われるスタジアムのように、不定期に大きな電力を必要とする場所でも、住民からの余剰電力の融通が行われます。
地域の電力需給のバランスを突然変えてしまうことになるスタジアムは、余剰電力をもらう代わりにイベントを盛り上げることを約束し、チケットを販売します。
スタジアムが地域住民から融通された電力をちょっと贅沢に使用して、客席を盛り上げる仕掛けをたくさん用意することで、そのイベントは地域と一体となって楽しめるのです。