ニューノーマルの課題を多様な領域で解決するインダストリーセクターのソリューション
日立のインダストリーセクターでは、お客さまの現場と経営をつなぎ、バリューチェーン全体を最適化する「トータルシームレスソリューション」を提供しています。その具体的な内容を、マニュファクチャリング、ロジスティクス、リテール、ロボティクスといった分野別に紹介します。
ニューノーマル(新常態)における製造業には、従業員の安全確保、生産効率や品質の維持、サプライチェーンの分断におけるリソース確保など、さまざまな課題の解決が求められます。
その課題解決に向けて、日立はお客さまの「スマート製造」を推進しています。日立グループが培ったノウハウ、顧客協創で得られた知見を蓄積したLumadaをベースにOT(制御系)とIT(情報系)をシームレスにつなぎ、現場データを仮想空間に吸い上げ、評価検証後、現実空間にフィードバックするCPS*1を基盤とすることで「スマート製造」を実現します。
具体的には、まず現場把握に必要な4M*2データをデジタル化し、サイバー空間で生産ラインや工程を再現、課題を可視化します。そして計画最適化技術によりラインや工程計画を見直し、適切なサプライチェーン計画といった施策を導き出します。これらをERPなどのITシステムにすばやく反映し、リアル空間の現場へ適用することで、モノづくりの業務革新のサイクルを実現していきます。
また、製造現場だけではなくお客さまの業務やバリューチェーンをとらえ、よりスピーディーかつ効率的に事業価値に結び付くサービスも提供しています。
そのひとつがIoTプラットフォームです。これは工場の小さな部門の業務データ収集からスタートし、業務拡大に合わせてカバーする範囲を全社へ広げていくことができるプラットフォームです。なかでも「IoTコンパス」は、生産現場に点在するデータをひもづけ、日立独自の業務モデルで管理することで、縦割りのデータ分析では解決できなかった多くの問題をスピーディーに解決します。その適用範囲を広げることで、サプライチェーン全体の最適化も可能になります。
このような社内外で活用実績のあるアプリケーションの中から、お客さまの業務課題にマッチしたものを活用し、経営効果へとすばやく結び付けるサービスを提供していきます(図1)。
図1 マニュファクチャリングソリューションの概要
画像を拡大する(新規ウィンドウを表示)
新型コロナウイルスの世界的流行は、物流業界が以前から抱えていた課題をさらに顕在化させました。例えば、品質・安全へのニーズの高まり。ネット通販の利用などで急速に増加する物流需要。密を回避するため省人化が求められる庫内業務。これらの課題解決に向け、日立はデジタルソリューションによって、物流センターから配送、個配までロジスティクスをトータルで最適化する取り組みを行っています。
まず物流センターでは、運搬や荷役作業を支援するマテリアルハンドリング設備(マテハン)や倉庫管理システム(WMS)、設備の自動制御システム(WCS)を、業務運用に合わせてマルチベンダーで組み合わせ、計画から設計・構築、保守まで一貫したトータルエンジニアリングを提供。自ら棚を運んでくる小型無人搬送ロボット「Racrew(ラックル)」なども組み合わせ、密を回避するための自動化・省人化、物量の変化に柔軟に対応できる設備ラインの構築、シミュレーションを使った物流センター計画の高度化などに取り組んでいます。
また、輸配送業務の高度化に向けては、これまで熟練者がさまざまな要件を考慮し、膨大な時間をかけて行っていた車両単位の配送先や配送日時の割り付け、配送ルート策定といった配送計画を、日立独自のアルゴリズムを活用したデータ分析で高速に自動立案。実際にトラックが配送した際のGPSデータを活用し、配送計画と実績の比較、改善を実現します。
さらに、テレマティクス技術を活用して車両や配送員の位置情報などの現場データを収集・分析することで、各ドライバーの現在位置を把握した、顧客からの問い合わせへの迅速な対応をはじめ、ドライバーが急ブレーキをかけたポイント、ヒヤリハット(事故が起きそうな状況)が発生した地点なども地図上に可視化するといった、配送現場の安全運行と業務改善をサポートするソリューションも提供しています。
こうした倉庫業務から輸配送の高度化まで含めたデジタルデータをシームレスにつなぐことで、日立はサプライチェーン全体の効率化と品質・安全の向上に貢献していきます。
消費行動の多様化や慢性的な人手不足、環境問題への関心の高まりなどを背景に、リテール(小売り)業界はかつてない激動の時代を迎えています。今回のコロナ禍(か)によって消費者の行動は大きく変わり、急速な需要変化への対応も大きな課題となってきました。
そこで日立は、デジタルイノベーションによるバリューチェーンの最適化で、小売業のお客さまが抱える課題をトータルに支援。生活者と生産者それぞれの想いを実現し、社会価値、環境価値、経済価値の向上も含め、持続可能な社会づくりに貢献しています。
その具体的な事例として最初に紹介するのは、西友との協創による弁当・総菜売り場における「AI需要予測型自動発注」です。従来は過去の販売実績などの経験則に基づいて従業員が発注していた商品を、AIが店舗・商品ごとに需要予測を行い、自動発注。季節やトレンドの変化なども組み込んだ需要予測も行うことで、従業員のコア業務への集中と在庫の最適化や、社会的な課題となっている食品ロスの削減にも成功しています。
また、スーパーマーケットチェーンを展開するカスミとは、日立が空調設備の運用管理業務を請け負うエネルギー最適化に取り組んでおり、複数店舗の空調設備更新とエネルギー設備へのEMS*3導入支援により、単月比較で13.2%の電力削減を実現しています。
さらに日立は、ECを含めた店舗間の配送や個人宅への配送といった物量の変化や人手不足に対応するバリューチェーン全体の最適化も行い、物流の高度化を進めています。
これからのニューノーマル時代では、非接触、短時間、キャッシュレス決済など大きなトレンドの変化が進み、バリューチェーンの課題も複雑化・高度化していきます。ここでも日立はデジタル技術を活用したトータルシームレスソリューションによって、小売業のお客さまの経営課題を解決し、持続的成長を支えていきます(図2)。
図2 リテールソリューションの概要
画像を拡大する(新規ウィンドウを表示)
製造やロジスティクスの現場では、3密回避や就業人数の制限など、新たな制約を守りつつ事業を継続させなければならない経営課題に直面しています。レジリエントな経営のためには、労働力に依存せざるを得ない現場業務を自動化・省力化し、リモートオペレーションを推進する変革が必要です。
その解決に向けた取り組みの一例が、ロボティクス・オートメーションによる自動化の推進。日立グループの一員であるJR Automation社では、産業用ロボットを活用した生産ラインや物流ラインを短期間で構築する技術力を持ち、自動車や航空機、eコマース、医療機器など、欧米を中心とした世界の多岐にわたる分野で自動化ラインの実績を重ねています。
また製造現場では、設備や作業者、モノの情報の把握や、保全作業を行うために監督者が直接現場に行かなければならないという課題があります。そこで日立は、4MデータのリモートモニタリングやCPSで、その解決を支援。現場全体の進捗(しんちょく)から各設備のアラームまでを遠隔で把握できるようにすることで、集中監視による少人数での設備管理や異常箇所の特定による保全業務の効率化を可能にします。
(株)日立製作所 インダストリー事業統括本部
記事の内容についてのお問い合わせは、それぞれの記事中に記載されている「お問い合わせ先」にお願いします。
「はいたっく」全般に対するお問い合わせと購読お申し込み/送付先情報変更/送付停止は、下記リンク先からお願いします。