プロジェクト開始前の2017年、経営トップと主要プロジェクトメンバーがSAP社のグローバルイベント「SAPPHIRE NOW」へ参加し、SAP S/4HANAをはじめとしたソリューションの最新動向を入手しました。そしてECC6.0からの移行にあたってはSAP S/4HANAを新規に構築することを選択しました。
「ブラックボックス化していたECC6.0をそのままコンバージョンすると、それを引き継いでしまい改革につながらないと考えました」(幸村氏)
またSAP S/4HANAでは新たな機能も増えており、それらを取り入れるためにも0から作り上げた方が効率的であると判断しました。
システム構築には化学業界向けテンプレート「SAP Best Practices for Chemicals」を適用し、一部アジャイル開発手法も取り入れて行われました。業界標準のシステムにしたのは可能な限りシンプルな構成にすることで再レガシー化を防ぎ、システムの維持を容易にするため。アジャイル開発を用いたのは、定期的にレビューを繰り返すことによって、開発当初と考え方や業務に合わない部分が生じたとき、すぐに立ちもどることができるためです。ただアジャイル開発によってギャップを埋めることができるようになったが、開発期間が想定よりも長くかかったのは反省点だといいます。
体制面では、日立の提案を取り入れ「Site Readiness Leaders」というプロジェクトから独立した組織を作り、現場に近い声を反映してプロジェクト全体にフィードバックしていく仕組みを活用。プロジェクトを外の立場から定期的に評価しながら進められました。
導入にあたって苦労したのはユーザーのトレーニングでした。プロジェクトメンバー側と社内ユーザー側とのシステム導入による効果についての温度差を埋めるため、日立も専門のコンサルタントを用意し、システム開発と並行して初期段階から啓もう活動を行いました。また、グローバルプロジェクトということで各国拠点からメンバーが参加したため、会議の時間管理というグローバルならではの苦労点もありました。