Harmonious Greenプラン、CoolCenter50 ――日立グループが総力を挙げて取り組む省電力化プロジェクト。2007年秋の立ち上げから1年半が経過した今、そこからどのような成果が生まれているのか、キーマン二人に話を聞いた。
エンタープライズサーバ事業部
第二サーバ本部 ビジネス統括部
部長(兼)第一部 部長 大黒浩
2008年度からの5年間で主要IT製品の省電力化により、累計約33万トンのCO2削減を目指すHarmonious Greenプラン、2012年度までに2007年度比でデータセンターの消費電力を最大50%削減することを目標にしたデータセンター省電力化プロジェクトCoolCenter50。低炭素社会の実現に向け、日夜、日立グループの総力を挙げた研究・開発が行われている。
こうした中で、BladeSymphonyには、省電力化技術開発の成果がいくつも投入されていった。設計を取りまとめる大黒は、「ブレードサーバーの消費電力を設定上限値を超えないように最適に制御する技術を開発するのは初めての試みでした。一番の課題は発熱量のもっとも大きいCPUの消費電力をいかに制御するかでした」と当時を振り返る。「ソフトウェア主体の制御方式では、消費電力を抑えるために性能を著しく低下させてしまう。求められたのは、性能を極力落とさずに消費電力を抑える究極のバランスです」。こうして開発されたのが、ハードウェア主体でCPUの消費電力を制御するパワーキャッピング機能だ。CPUの消費電力をリアルタイムにセンサーから読み取り、指定した電力値を超えようとした時のみ、パフォーマンスを抑える。これにより、性能低下を最小限に抑えられるのだ。ハードウェアの作りこみで省電力と高性能の両立を追求する“モノづくりの日立”らしい答えだった。
さらに新ハイエンドモデルBS2000には、世界最高80PLUS® GOLD認証を取得した高効率電源モジュールが搭載されている。AC/DC変換効率を92%超まで高め、電源だけで約6%*のCO2削減に貢献している。「日立は昔からスーパーコンピュータを開発・製造してきました。この分野は、最高性能を実現するために、消費電力の大きなCPUを数多く並列動作させることが必要な世界。そこは、電源効率を最大限に高める技術の宝庫です。後はいかにコストを抑えて、BladeSymphonyに応用していくかでした」と大黒。1年以上の歳月をかけ、日立の長年にわたる省電力のノウハウを結集したBS2000は、無事GOLD認証を取得し、4月1日の発売当日を迎えたのである。
エンタープライズサーバ事業部
サービスビジネス本部
省電力設備システム部
主任技師 古谷野宏一
IT機器の高密度化に伴う電力の増加に合わせて、IT機器を冷やす「空調機」の電力も増大している。設備ソリューションを開発する古谷野は「今までの空調機は、壁際に置いて床下から空気を送るのが一般的ですが、空気を動かす距離が長いため、ロスも大きく、大きな送風動力が必要です。そんな中、ラック型空調機や水冷リアドアといった局所冷却装置が日立のグループ会社で開発されることになりました。これなら、IT機器のすぐそばで冷却できるため、送風動力が非常に小さくて済み、空調機の小型化・省電力化を図れます」と語る。この局所冷却装置を用いて開発されたのが、「モジュール型データセンタ」だ。IT機器のラックと局所冷却装置を交互に組み合わせたモジュールを、小さな単位から必要に応じて増設していける省電力・コンパクトなデータセンターだ。 「以前、ブレードサーバーの開発に携わっていましたが、サーバーが高密度になると、サーバーをいかに冷却するかが問題になってきます。さらに高密度化を進めるには、部屋の冷却設備とサーバーを一体化させて最適化、高効率化することが必要になると発想しました。その答えが、新しい局所冷却装置とサーバーをコンパクトに組み合わせるモジュール型データセンタです」と古谷野。イニシャルコストが安く、工事期間も短縮できると、お客さまから多大な評価を集めている。
「これまでデータセンターの冷却能力や発熱の問題から、サーバーを間引いてラックに積まなければならないという課題がありました。その時、『モジュール型データセンタ』なら、局所的に冷却できるため、ラック一杯にサーバーを積み込み、ラック本数をどんどん集約していけます。小型高集積モデル『BS320』と組み合わせれば、業界最高水準の高密度・軽量設計のメリットを活かした、ベストマッチなソリューションを提供できます」。IT機器と設備が連動したトータルソリューションを提供できるのは、総合電機メーカーである日立だけだと大黒は続ける。
「厳しい経営環境の中、省電力化はお客さまのランニングコストを低減できるというメリットも重要。これからも日立グループの総力を挙げて技術開発に取り組んでいきます」。