マネジメント
考え方・方針
戦略・目標
日立は、サステナビリティを事業戦略の中核に据えた「サステナビリティ経営」を実践しており、社会イノベーション事業を通じたサステナブルな社会の実現に向けて取り組んできました。
2024中期経営計画においては、「データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支える」ことをめざす姿として掲げています。プラネタリーバウンダリーの9つの領域のうち、すでにいくつかは限界点を超えている中、日立はそれぞれの限界点を意識し、地球を守り、社会を維持する経営を行います。地球を守ることと、一人一人のウェルビーイングが両立する未来を実現するための社会課題の解決を日立はめざしています。
日立は、社会課題の網羅的な把握を出発点とし、サステナビリティの観点でのリスクと機会の分析を行うとともに、ステークホルダーからのフィードバックを踏まえて、6つのマテリアリティとそれらを構成する15のサブ・マテリアリティを明確化しました。
日立は、このマテリアリティをもとに、サステナビリティ施策の管理を行い、経営会議や取締役会において各マテリアリティの進捗状況や新たな取り組みを議論しています。
マテリアリティ分析プロセス
日立は現在CSRD(EU企業サステナビリティ報告指令)やISSB(国際サステナビリティ基準審議会)などで規定されているサステナビリティ開示基準の理解・対応への準備を進めています。社会環境の変化およびステークホルダーからの要請の変化を踏まえ、マテリアリティおよびその特定プロセスについて継続的に見直していきます。
マテリアリティ | めざす姿 | サブ・マテリアリティ(目標/KPI) | FY2023 進捗 | |
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環境 脱炭素と資源循環への貢献 |
日立は、気候変動領域のイノベーターとして、優れたグリーンテクノロジーで、すべての事業セグメントのお客さまへ価値を提供し、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献していきます。また、サーキュラーエコノミーへの移行に向けて資源循環を推進します。 | 脱炭素 | バリューチェーンにおけるカーボンニュートラル 目標/KPI ● FY2030:事業所(ファクトリー・オフィス)のカーボンニュートラル ● FY2050:バリューチェーン全体のカーボンニュートラル |
ファクトリー・オフィスにおけるCO2総量削減率 74%(2010年度比) |
事業を通じたCO2 削減貢献 目標/KPI ● FY2024:CO2排出削減貢献量1億トン |
CO2 排出削減貢献量 1.53億トン/年*1 |
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資源循環 | サーキュラーエコノミーへの移行 目標/KPI ● FY2024:新規開発製品のエコデザイン全面適用 ● FY2030:製造拠点からの廃棄物埋立率*2ゼロ*3 |
エコデザイン適用率 100% (対象198製品) 埋立廃棄物ゼロ達成事業所数 146事業所(75%達成) |
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水の効率的な使用 目標/KPI ●
水使用量原単位改善率(FY2010比) |
水使用量原単位改善率30% | |||
自然共生 | 自然資本へのインパクト最小化 | 自然共生社会の実現 | ||
レジリエンス 社会インフラの維持と迅速な回復に寄与 |
日立は、自然災害、パンデミック、サイバー攻撃などのリスクに即応できるシステム・ソリューションの提供を通じて、サプライチェーンの迅速な回復や社会インフラの維持に貢献し、人々の安心な暮らしを守ります。 | サプライチェーンの強靭化 | 災害やリスクに対応できる柔軟なサプライチェーンの構築 | 日立の社会イノベーション事業 |
社会インフラの維持 | 社会インフラのDXを通じた強靭化と保守高度化 <事例> 変電所マネジメントによる安定したエネルギー供給への貢献 約19億人*4 |
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安全安心 安全安心な社会づくりに貢献 |
日立は、安全安心な暮らしを支える都市づくりを担う、ビル、モビリティ、セキュリティ分野などのソリューション提供を通じて、人々の快適で活動的な生活の実現に貢献します。 | 安全安心な都市環境 | 安全で快適な移動 <事例> 鉄道サービスの貢献人数 年間延べ約150億人*4 |
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サイバーセキュリティの確保 | 社会インフラ、業務システムのサイバーセキュリティの確保 | |||
幸せな生活 心身ともに健康で豊かな人生に貢献 |
日立は、より多くの人々が絆を育み、健康で豊かな生活を実現できるように、我々のヘルスケアおよびデジタルテクノロジーで支援します。また、従業員の幸せとウェルビーイングこそが日立の未来をより大きく花開かせる大地であるという思いから、従業員の幸せとウェルビーイングの実現を追求し続けます。 | つながりのある豊かな社会 | 健康寿命の延伸 <事例> 血液検査等の体外診断:200億検査/年*4 |
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周りとのつながりおよび信頼関係の構築 目標/KPI ● ハピネスサービス利用者数 FY2024:9万人 |
ハピネスサービス利用者数 4.9万人 | |||
従業員の幸せ | より柔軟な働き方でエンゲージメント向上 目標/KPI ●
従業員エンゲージメント(肯定的回答率) |
従業員エンゲージメント(肯定的回答率)68.6%*6 | ||
誠実な経営 企業倫理および人権尊重の徹底 |
日立は、世界各地の社会インフラを担う企業として、社会から信頼される高い倫理観をもって経営を行い、人権を尊重し、安全な職場環境を提供していきます。誠実な経営を徹底するための仕組みを事業活動および意思決定の基準に反映し、従業員のみならず、協創パートナー、コミュニティとともにサプライチェーン全体で取り組みます。 | 企業倫理とコンプライアンス | 従業員一人一人が倫理的に行動できる環境づくり 目標/KPI ● 倫理文化・倫理観に関するアセスメント結果を初年度である2023年度に基準スコア60以上(100点満点)を達成し、毎年スコアを向上 |
スコア 76.5 |
人権の尊重 | 人権デュー・ディリジェンス推進、人権を含む責任ある調達に向けた調達パートナーのモニタリング強化 目標/KPI ● FY2023:全BU(10BU)および主要グループ会社の人権リスク評価の実施 ● FY2024:人権リスクへの対応 |
全BU(10BU)および主要グループ会社の人権リスク評価実施 | ||
労働安全 | 事故のない安全な職場の構築 目標/KPI ● 死亡災害ゼロ |
死亡災害件数4件 | ||
製品・サービスの安全性 | お客さま第一で製品・サービスの安全性徹底 | 品質・製品安全 | ||
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI) すべての人が生き生きと活躍できる社会への貢献 |
日立には、バックグラウンド、年齢、性別、セクシャリティ、家族構成、障がい、人種、国籍、民族、宗教を問わずすべての人のための居場所があります。日立は、従業員を公平に扱い、それぞれの「違い」を認めることにより、すべての人が能力を最大限発揮できるように引き出します。お互いを尊重し、あらゆる違いに価値を置くことを通じて、市場を深く理解し、より良いアイデアを生み、イノベーションを起こしていきます。 | イノベーションを生む多様な組織 | 経営のダイバーシティ強化 目標/KPI ● 役員層の女性および外国人比率 FY2030: |
女性役員比率11.8%、 外国人役員比率25.0%*7 |
デジタル人財の獲得・育成 目標/KPI ● デジタル人財 FY2024:97,000人*8 |
デジタル人財 95,000人 | |||
多様で公平な社会への貢献 | 社会のDEIへの貢献 目標/KPI ● 次世代人財の育成とエンパワーメント |
Hitachi Young Leaders Initiative 参加人数 32人 累計437人*9 日立ハイテクの理科教育支援活動参加人数 59,911人 累計427,273人*10 |
*1 : 2024中期経営計画期間3年平均 *2 : 各地域の規制や条件に適合している場合 *3 : 0.5%未満 *4 : FY2022実績値 *5 : 当初の目標/KPIを2022年度に前倒しで達成したため、2023年度目標を引き上げています *6 : 日立Astemoを除く *7 : 2024年6月時点 *8 : 日立Astemoを除いた数値へ変更しました *9 : 1996年からの累計値 *10 : 1990年からの累計値
日立は、15に分類したサブ・マテリアリティを、日立とステークホルダーにとっての重要度の観点からマッピングを行いました。「日立にとっての重要度」に関しては、めざす姿と現状の日立の取り組みとのギャップが大きいものをより重要度が高いと判断しています。
2021年度、日本および欧州でマテリアリティをテーマとしたステークホルダー・ダイアログを開催しました。情報開示の専門家やサステナビリティ先進企業、欧州委員会、NGO、国際団体、機関投資家から、日立のマテリアリティ案やそれぞれのマテリアリティに対する施策についてフィードバックを受けました。欧州においては、プラネットセッションとピープルセッションに分け、環境施策、人財や人権尊重に向けた施策について日立から説明を行い、出席者から新たな視点や改善点などの示唆を得ました。
ステークホルダーからの主なコメント
今後も、日立の事業に関わる多様なステークホルダーの皆さまの意見を反映し、サステナビリティ経営を推進していきます。
活動・実績
2023年度に、グローバル企業としてのさらなる成長加速に向けて、企業価値との連動を強化した役員報酬制度へ改定しました。改定後の役員報酬制度は、2024中期経営計画との連動およびサステナビリティ目標の反映を強化しています。
具体的には、短期インセンティブ報酬(STI)へのサステナビリティ目標の反映について、これまでは個人評価の指標の一つとしていましたが、サステナビリティ評価として独立させてSTI報酬に占める割合を20%に設定しました。
また、中長期インセンティブ報酬(LTI)においても、サステナビリティ目標を達成した場合、基準額の10%相当の株式を追加で付与することとしました。
STIにおけるサステナビリティ評価は、「環境」「誠実な経営」「幸せな生活」などのマテリアリティに基づく評価としており、以下をはじめとするサブ・マテリアリティ目標と連動しています。
今後も日立は、企業価値の向上と報酬を連動させて成長へのマインドを醸成し、One Hitachiでグローバルな成長を実現していきます。
STIにおけるサステナビリティ評価項目
マテリアリティ | サブ・マテリアリティ目標 | |
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環境 | 脱炭素 |
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資源循環 |
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誠実な経営 | 労働安全 |
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幸せな生活 | 従業員の幸せ |
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LTIにおけるサステナビリティ評価指標
マテリアリティ | 指標 |
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幸せな生活 | 従業員エンゲージメントにおける肯定的回答率:グループ全体で 68%以上 |
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI) |
DEI達成率: (1) 役員層女性比率:15%以上 (2) 役員層外国人比率:15%以上 |
デジタル人財の獲得・育成:グループ全体で 98,000 名以上 |