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feat. Consumerサービス提供の一端を担う消費者

私も手を貸すよ、このお店を利用し続けたいから

労働人口の減少からくる省人化に伴い、日本の伝統的なおもてなし文化が店舗経営の大きな負担となる。そんな中、各店舗が担当していた接客業務を利用客同士で補ったり、裏側で行われていた陳列や配送といった役割までを分担したりと、利用者の手を借りて運営する新しいサービス提供の型が広がる。仕事を押し付けられているとネガティブに感じる利用者がいる一方で、お店と協力して良いものを作り上げる「自己効力感」を楽しむユーザーも増える。

変化のはじまり働き手不足によるサービスの省人化

少子化や都市部の人口集中により人手不足が深刻化し、日本のサービスが長年重視してきた手厚い「おもてなし」が難しくなってきている。働き手が少なくなる状況に対応して、利用者が商品の選択から決済までを完了させるセルフ購買が人々の日常に。また、お店のサービスを維持するために、利用客が運営の一部を分担する範囲と機会が増えていく。

企業のプロモーションに代わる顔の見える人々の存在

現在の価値観広告やパッケージデザインなどの企業の宣伝が購買意欲につながる

将来の価値観顔の見える友人や地域住民のオススメが購買意欲につながる

対人サービスが減ることで、店舗は通信販売で購入した商品の受け取りをする倉庫のように活用される。店員とのやり取りがなくなるに連れて、ユーザーは「失敗しない買い物」や「手間のかからない買い物」のため、オンライン情報に頼るようになるが、いわゆる「ステマ」への反発も大きく、同じオンラインでも、友人など身近な人の投稿を重視するようになる。

友人や地域住民など、顔が見える人々の投稿は信頼感があり、かつて店員が行っていた接客の役割を補うようになる。身近な人々からのオススメ情報が購買のカギになる一方で、企業からの広告宣伝の影響は以前より薄くなっていく。

店舗側はコスト削減をめざして、倉庫型店舗の促進、パッケージデザインの簡素化を進める。従来の店側からの販促物の役割は利用者・購入者のコミュニティに移っていく。無人の「ノーオペ店」の中では、POP広告の代わりに、顧客ごとにカスタマイズされた知り合いのオススメ投稿がデジタルサイネージで表示されるようになる。

こうした新しい形態のお店は、知り合いの「お気に入り」を共有できる場所として地域住民に受け入れられていく。店舗は、利用客がおすすめの商品についての情報交換ができるコミュニティの拠点として成長。ユーザーの意見によって品揃えが変化するなど、みんなと一緒に運営に参加しているような感覚が促進され、人々はさらに他の利用客のために有益な投稿を残し、みんなにとって必要な商品について考えるようになる。

利用客による店舗の魅力づくり

現在の価値観モノ・サービスの質の担保は企業の役目

将来の価値観「良いモノ・サービス」の質の担保は私たち消費者の役目

人件費を削減するため、店舗利用者が掃除などの業務を手伝う「半セルフサービス」や、その対価として商品の割引を受けられる「お助け会員制度」など、お店と利用客の互助的な仕組みが飲食店などで普及する。

当初は金銭的なメリットを期待して参加していた利用客も、店舗をキレイにする経験などを経て、自分の行動がお店のサービス向上に貢献しているという自己効力感を持つようになり、貢献意欲が自発的に高まる。店主の手に余る業務内容や営業スケジュールが、常連客に共有されるようになり、助け合いながらお店のピークタイムや繁忙期を乗り切るなど、利用者が運営面でも不可欠な存在へと変わっていく。

労働人口減少の対策で、AIやロボットによる効率化が至るところで行われるようになるが、その副産物として、サービスの均質化が各店舗の特徴を少なくしてしまい、顧客が「ユニークだ」「面白い」「また同じお店を利用したい」と感じる機会が減ってしまう。効率化は進めつつも、失われた個性やオリジナリティを取り戻すことが重要になっていく。

すでに店舗運営に参加することに慣れている顧客は、さらにお店のサービスを向上させるためにどんな貢献ができるか模索する。例えば音楽演奏が得意な客が集まる喫茶店では生演奏が行われ、学生が多い店ではシニアの常連客が塾を開催するなど、元々は規格化されたチェーン店舗のひとつであっても、それぞれの店で考えるようになる。行き過ぎた「顧客主導」が店舗経営の足を引っ張るケースも見られるが、常連客が「第二の経営者」の役割を果たす流れが広がっていく。