新たに導入したBIRTHは、東京電力EPの小売電気事業の中核を担う基幹システムとして位置付けられる。電気の送配電を行う送配電事業者の託送業務システムなどとは、広域的運営推進機関のスイッチングシステムを介して接続。その他にもお客さま専用のWebサイト、東京電力ホールディングスの経理システム等ともシームレスに連携し、小売に関する業務がすべて完結する仕組みだ。導入プロジェクトのキックオフは2014年7月。要件定義、ビジネス設計、開発の工程を経て、翌年12月にはシステムを立ち上げ、総合受け入れテストや事前リハーサルを実施。2016年1月から新料金メニューの先行受付を開始し、4月のサービスインに合わせて本稼動に移行。構築期間は実質1年5カ月と、CISプロジェクトとしてはかなりの短期間だ。
プロジェクトマネージャーを務めた草野氏が「BIRTHの導入は業務改革(BPR)の一環として捉えていたので、業務部門とシステム部門が縦割りで進めるのではなく、業務部門を中心に体制を作りました」と語るように、約20名のプロジェクトチームの7割を業務担当者で構成する形で進めた。SAPパッケージの標準機能を優先する方針を徹底し、アドオン開発は最小限に抑えたという。「海外とは業務要件が異なる部分もあり、どうしても必要な部分のみアドオン対応しました。日立のSEにも、お客さまの申し込みを受けるカスタマーセンターの業務を直接見せて、アドオンの必要性について納得してもらいました。結果的にはパッケージに対して約70%のフィット率を維持しました」(草野氏)
本プロジェクト中には、法制度の整備が並行して行われていたため、新システムへの要件変更もたびたび発生した。しかし、日立が業務要件や工数などを吟味し、対応できること/できないことを明確に示したことで、プロジェクトマネージャーとして変更管理やスコープ管理も柔軟に対応できたという。