東京電力[当時]はBIRTHの構築にあたり、導入スピードを重視してパッケージシステムの導入を決定。最終的に日立製作所が提案した「SAP for Utilities」をベースとするシステムを採用した。SAP for Utilitiesは、お客さま管理、申込み受付、契約管理、検針値管理、料金計算、請求・支払管理など、電力の小売業務に必要な機能を網羅しており、世界各国の電力事業会社で採用されている。日本でも一部の機能が使われている実績はあったが、ERPとCRMの機能を連携するSAP for Utilitiesの大規模導入は同社が国内初のケースとなる。
「欧米で広く使われていても、日本の電力事業の業務にフィットするかには不安もありました。そのため決定前には、業務担当者と一緒にSAPジャパンを訪問して詳細なデモンストレーションを受けるとともに、欧州のSAP採用企業を複数訪問するなど、CISの機能が充実していることを確認しました」(草野氏)
日立製作所を導入パートナーに選んだ理由は、既存CIS 構築の実績に加え、短期開発、要求仕様の変化に対する柔軟な対応が可能と考えたことにある。
「電気事業者の法的分離とともに、東京電力内での分社化やシステム分離の方針が2014 年春に正式に決定し、2 年弱というわずかな期間でのシステム構築が必要でした。プロジェクトの遂行には、法制度の変更に追従しながら短期間の開発に対応できるベンダーの存在が不可欠です。日立は、東京電力が1987年から利用してきた既存CISの開発も手掛けており、膨大な契約者数を有する当社の電力ビジネスへの理解があります。さらにSAP 製品の豊富な導入実績に裏付けられた対応力に期待しました」(草野氏)