株式会社日立製作所
ITビジネスサービス本部
経営情報システム部
部長
小林 俊介
株式会社日立製作所
産業・流通ビジネスユニット
エンタープライズソリューション本部
SAPビジネスソリューション部
主任技師
米家 信行
財務会計システムをグローバルに統合するにあたり、日立グループが定めた開発方針は、システムアーキテクチャをグローバル共通領域と地域固有領域とに大別し開発資源を適切に配分することでした。具体的には、グローバルに共通するSAP ERPの標準機能と各国共通のアドオンは、プロジェクトチームが主体となって統制および開発を行いました。一方、地域固有の要件については、地域統括本社が主導で管理し、各国の法制改定を速やかにキャッチし、開発につなげ対応しています。
プロジェクトチームが担った共通部分の開発では、勘定科目、財務業務プロセス、権限管理、企業コードを統一しました。その中で最も苦労したのが勘定科目コードの統一だったといいます。
「各社に勘定科目の調査を依頼し、その情報を精査していきましたが、従来は地域ごとのシステムであったため、科目の粒度、コードの体系などについて一部使用ルールが異なっていました。また今回IFRS基準と各国ローカル基準の要件を満たす勘定科目が必要だったため、統一するのに約2年を要する大変な作業となりました。さらに、勘定科目は単体決算以外にも連結決算用に使用する勘定科目とコードルールを一致させました。従って、連結決算で必要な科目を意識しながら整備を進めました」(渡邉氏)
共通アドオンについては、入力データのチェック項目、帳票類、内部統制支援、さらには各社の上流システムや連結決算システムとのインタフェースの統一を行いました。
「インタフェースを統一した意義は大きく、会計データの起点となる販売管理や購買管理といった上流システムから、後方の連結決算システムやデータ利活用システムまで、地域ロケーションや事業セグメントに依存することなくシームレスに連携できることによって、セグメント管理強化と連結経営の両立、IT投資の集約につながりました」(小林)
一方、各国の会計制度や税制など、地域固有部分の開発については、プロジェクトチームを中心に、地域統括本社の財務部門とIT部門、さらにはSAPシステムをお客さまに導入している事業部門であるエンタープライズソリューション事業部が加わり対応しました。日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズパッケージソリューション本部 SAPビジネスソリューション部 主任技師の米家 信行(プロジェクト当時:アジア/欧米地域への展開を主導したプロジェクトリーダー)は、「2010年から2013年にかけて、当時、現地法人からは固有要件に対応して欲しいという要望も多数あがってきましたが、コミュニケーションを密にしながら理解を求め、プロジェクトにて一元的に策定した開発ポリシーに基づき、アドオン数は必要最小限に抑制しました」と語ります。