UPSは一般的に停電時の電源バックアップとして使われますがそれ以外にもUPSを使用することで実現できるソリューションをご紹介いたします。このソリューションはスケジュール管理と複数台機器の電源管理機能を用いることで可能となります。まず、これらの機能を説明し、最後にこれらの機能を組み合わせたソリューションを説明します。
例えば、日中は業務処理に、夜間はサーバを使用しないという場合、夜間にサーバを起動していると電力の無駄遣いとなります。このような場合UPSとUPS管理ソフトウェアの連携で、サーバを使用していない夜間だけサーバの運転を停止することができます。より安全に停止するためには、サーバや周辺機器への電源供給タイミングを考慮する必要があります。通常、周辺機器はサーバより後に電源を切り、電源投入時にはサーバより前に周辺機器に立ち上げなければなりません。
HA8500/9000Vサーバでは、このような各系統の出力タイミングの調整をUPS管理ソフトウェアPower Monitor H for Networkを用いて実現しています。実際のシステムでは下記タイミングチャートのように動かす必要があります。下の図では24時に給電を停止し、4時に給電を再開する場合を示しています。
図1.タイミングチャート
UPSとUPS管理ソフトウェアを使用することで、人手を介することなく自動で、サーバと周辺機器の電源のON・OFFをすることができます。その他にも、施設内の計画停電があった場合など、サーバの起動にその場にいて操作することなく、自動起動が可能となり管理工数の削減、オペレーティングミスについても防止することができます。
下の図のように、UPS(1)の電源系統1にサーバ、UPS(2)の電源系統1にディスクアレイを接続した場合について説明します。
図2.複数台機器の電源管理 構成例
ディスクアレイが接続されたUPS(2)は単体では停電時の対応やスケジュール運転が出来ません。対応可能にするためにはディスクアレイ通信カード*1を用いてUPS(1)とUPS(2)を接続し、停止信号の通信を行います。このディスクアレイ通信カードとUPS管理ソフト「Power Monitor H」または「Power Monitor HN」と組み合わせて使用することにより、UPS、システム装置およびディスクアレイ等の周辺装置を含めたシステム全体の自動運転や、複数台UPSの運転 /停止を連携することができます。
停電時、安全なシャットダウン処理を行うだけでなく、UPS連携機能を組み合わせることで複数台機器の一括電源ON、OFFが可能になり、電源の一極集中管理ができるため、管理工数も削減できます。
信頼性を高める構成
サーバ本体が冗長電源を持っている場合、片方の電源を商用電源に、片方をUPSに接続します。この接続方法により、停電時はUPSから電源を供給され、UPS故障時には商用電源から電源を確保することができます。このような冗長構成を取ることによりシステムの信頼性が飛躍的に向上します。また、サーバに接続される商用電源と、UPSに接続される商用電源のブレーカーを分けることで、過電流などで、 1つのブレーカーが遮断された場合等において、更に信頼性が高まります。
図3.信頼性を高める構成例
データベース用クラスタ構成のシステムで、データ格納にディスクアレイを使用するケースはよく使用されます。この構成を例に前述の機能を組み合わせた場合のソリューションを紹介いたします。下図では2台のサーバでクラスタ構成を組み、1台のディスクアレイでデータを扱います。
図4.2つの機能を用いたソリューション構成
このクラスタ構成の場合、運転停止時にはサーバ(1)(2)をシャットダウンした後にディスクアレイの電源を切ります。運転再開時には先にディスクアレイに給電し、その後サーバ(1)(2)に給電します。UPS(2)の動作はUPS(1)(3)によって制御されます。UPS(1)(3)は制御するUPSと言う意味合いでマスタUPSと呼び、UPS(2)はサブUPSと言います。
このようなサーバや周辺機器の数が多くなるクラスタ構成でも、UPS管理ソフトウェアを利用する事でスケジュール運転管理が容易にできます。
UPSやUPS管理ソフトウェアを使用しない場合、複雑かつ大規模な構成でスケジュール運転や複数台機器の電源管理を実現するには、面倒な操作を人手で行わなければなりません。しかし、本ソリューションを利用することにより、操作の手間やミスを減らし電源管理に要する時間を削減することが出来ます。
電源管理に頭を悩ませているシステム管理者の方はこのようなUPSを使用したソリューションをご検討されてはいかがでしょうか。