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日立が東邦ガスと、環境省の公募事業「令和6年度既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・FS事業」に採択され、フィジビリティスタディを開始
水素供給のクリーン化・低コスト化による地域水素サプライチェーンモデルの構築をめざす
フィジビリティスタディに関する概念図*1
株式会社日立製作所(以下、日立)は、このたび、東邦ガス株式会社(以下、東邦ガス)と、環境省の公募事業である「令和6年度既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・FS事業」に採択され、地域再生可能エネルギー(以下、再エネ)を活用したクリーン水素製造に関するフィジビリティスタディ(実現の可能性を探る調査/以下、FS)を開始しました。
本FSは、東邦ガスと日立との共同提案である「地域資源を活用した原料調達(CO2、水素)によるe-メタン製造および既存導管NWによる供給」として環境省に採択されたものです。地域資源であるLNG冷熱や、太陽光、風力発電などの再エネを融合して水素を低コストで製造し、運搬や貯蔵、使用までの一貫した地域水素サプライチェーンモデルの構築をめざします。
また、本FSでは、東邦ガスが既に取り組む知多e-メタン製造実証の施設を拡張し、活用する構想であり、地域製造業の工場より回収・運搬されたCO2をもとにe-メタンの製造に加え、日立が再エネ由来のクリーン水素製造プロセスの検討を担当します。クリーンエネルギー由来の水素と地域の事業活動で発生するCO2を用いてe-メタンを製造し、これを既存のインフラを活用し供給する実証コンセプトのもと、水素製造におけるシミュレーションを行います。
FS開始の背景
カーボンニュートラル実現に向け重要なエネルギーとなる水素は、その製造にあたってCO2発生を抑制し、かつ低コスト化を実現することが課題です。あわせて、安定的な水素インフラの運用には、地域におけるさまざまなプレーヤーと連携し、地産地消型の水素製造・供給や、地域間での水素の需給体制を構築することが不可欠です。
日立は、脱炭素支援ネットワークである「大みかグリーンネットワーク*2」活動を推進しており、大みか事業所(茨城県 日立市)を実証フィールドに、さまざまな脱炭素実証を行い、そこで得た技術やノウハウを、地域やサプライチェーンへ還元しています。「大みかグリーンネットワーク」活動における実証プログラムの一つとして、水素エネルギーマネジメントシステムの構築を進めており、水素の製造や利活用に関わるさまざまな観点での実証を推進中です。
一方、東邦ガスでは、e-メタンの社会実装に向け、知多LNG共同基地にて知多市と連携し「バイオガス由来のCO2を活用したe-メタン製造実証」を進めています。
こうしたことから、日立は東邦ガスとともに、日立のインフラ制御技術を活かした再エネ由来の水素を最適活用するシミュレーションと連携させ、e-メタン製造に必要な水素を地域由来のクリーンなエネルギーを含めて運用する検討を始めました。そして、地域水素サプライチェーンモデルの実現可能性を検証すべく、環境省の公募事業である「令和6年度既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・FS事業」に両社が採択されたことで、本FSの開始に至りました。
FSの詳細
本FSは、既存のインフラなどを活用して水素供給のコスト低減を図りつつ、地域資源である再エネなどによる水素の製造から利用までの、一貫した地域水素サプライチェーンモデルの構築をめざし、将来的な社会実装を見据えたシミュレーションを行うものとなります。
日立は、大みか事業所にて培ってきた、制御技術を活かした水素エネルギーマネジメントシステムの実証成果を活用し、太陽光や風力発電といった、地域の再エネや安価な電力を選択的に用いた水素を製造する検証を行います。具体的には、BTB*3 (Back to Back自励式変換器)を用いて安定的に電力を融通する技術や、最適なシステム構築を可能とする系統解析、水電解装置などの周辺機器とシステム連携を統合的に制御する技術を、本FSに適用します。
一方、東邦ガスでは、知多LNG共同基地におけるe-メタン製造実証施設をベースに、基地内の冷熱発電および地域再エネのクリーン電力から製造する水素と、地域の工場などで排出されるCO2を回収・運搬して活用するCO2循環モデルについて、各要素の詳細検討およびシステム全体としての有効性などを評価します。
これらを組み合わせ、トータルにシステムを構築することで、低コストでクリーンなエネルギーに由来した水素とCO2を循環する、サプライチェーンの構築をめざします。
また、本FSには協力自治体として愛知県が参画しており、低炭素水素製造に必要な再エネ電力供給に係る情報提供など、連携体制を構築しています。
日立の大みか事業所における実証に用いられている、太陽光発電機(左)とBTB(右)
今後の予定
日立は、本FSにおいて東邦ガスならびに愛知県と連携し、地域で発生したCO2や再エネ電力を有効活用するモデルを構築し、スケールメリットを創出することで、低コストかつ脱炭素の観点でシステム運用が最適化された水素サプライチェーンの社会実装をめざします。
また、本FSを通じて得られたノウハウをもとに、水素エネルギーマネジメントシステムとメタネーション設備とのシステム連携によって、他の地域にも横展開し、各地域での脱炭素に貢献してまいります。
- *1
- 冷熱発電設備はLNG基地構内の自営線上の設備であり、その電力は基地構内の所内電力にて消費するもので、その余剰電力を、電力制御を介して水電解装置に受電させる方式となる。一方で、電力ネットワーク経由の再エネ電力については再エネ事業者と相対で電力融通するものでその融通電力量は、冷熱発電設備の余剰電力量と最適量を調整するものとする。
- *2
- 大みかグリーンネットワーク
- *3
- BTB: Back to Back(自励式変換器) : 自身の回路内に蓄えたエネルギーにより、直流と交流の電力変換を行う変換器。 他励式とは異なり交流系統の電源が無くても、直流と交流の電力変換を行うことができる。
日立製作所について
日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」という3セクターの事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。デジタル、グリーン、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。3セクターの2023年度(2024年3月期)売上収益は8兆5,643億円、2024年3月末時点で連結子会社は573社、全世界で約27万人の従業員を擁しています。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 エネルギー事業統括本部 エネルギーソリューション事業本部 水素事業推進室