環境
考え方・方針
大量生産・大量消費・大量廃棄といった直線型経済(リニア・エコノミー)に基づく社会活動の拡大は、水を含む資源の不足やエネルギーの需給逼迫、廃棄物増加による環境汚染、地球温暖化、生物多様性の喪失などの環境問題を深刻化させています。
こうした課題を解決し、持続可能な社会の実現をめざすため、直線型経済から循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行が求められています。日立は、お客さまや社会とともに事業活動を通じて、資源・水循環型社会の構築に貢献していきます。
日立は、バリューチェーン全体での資源のサーキュラリティや、サプライチェーン各ステージにおける地域ごとの水リスクを考慮した水使用量削減が重要だと考えています。そのため、循環型経済の実現に向けたサーキュラー・デザインの取り組みやサーキュラーエコノミーを実現するツール、アプリケーション、サービスの開発を推進しながら、サプライチェーンの水使用および排水処理の最適化、水利用効率の高い製品・サービスの提供を進めていきます。
日立は、使用する資源・水の利用効率を2050年度までに2010年度比で50%改善する目標を「環境長期目標」に定め、より少ない資源・水を用いてより高い経済価値を創出するとともに、環境負荷の低い生産活動を推進していきます。
考え方・方針
日立は、持続可能な資源循環型社会の構築をめざして、従来の直線型経済から循環型経済への移行を推進しています。そのため、事業活動において資源や資産をいかに使い続けて廃棄物を削減できるか、もしくは廃棄物そのものを出さないようにできるかという点に着目し、製品の上流設計における変革、製品の製造過程における変革、ビジネスモデルによる変革という3つのアプローチで取り組んでいきます。
設計行為を伴う新規開発製品に対して環境配慮設計アセスメントとライフサイクルアセスメントの同時実施を推進することで、部品の標準化や長寿命化、再生材活用、リサイクル容易化設計を図り廃棄物を削減していきます。そのため、日立グループ共通のエコデザインマネジメント指針、エコデザイン活動指針を最新の国際動向を反映したものに改定するとともに、設計行為を伴う新規開発製品での当該アセスメント適用率100%(2024年度)という明確な目標を掲げ、取り組みを推進しています。
需給の把握による製品・部品の製造量の最適化や、設計ペーパーレス化、梱包材使用量削減、品質向上による不良品削減、化学物質削減などの施策事例を部門間で共有しながら取り組みを推進しています。さらに、埋立廃棄物ゼロ達成事業所数とプラスチック廃棄物有効利用率については具体的な目標を設定し、特に埋立廃棄物ゼロ達成に向けては、2022年度よりすべての製造事業所を対象に活動を進めています。*1
*1各国・地域の規制や条件に適合している場合の取り組み
「モノからコト」へ、あるいは「所有から利用」へと変化する社会に対応するために、リース、従量課金制、サブスクリプション、サービスとしての製品(アズ・ア・サービス)、リユース、シェアリングモデルなど、資源や資産の有効活用を推進します。
同時に使用済み製品を回収し、再販やリペアパーツ、リサイクルへの活用を検討することで、可能な限り資源や資産を有効に活用できるよう工夫を重ねていきます。そのためには、バリューチェーン上のさまざまなステークホルダーと目標を共有し、協創を推進していきます。
また、原材料、製品、ツール、アプリケーション、サービスなどの研究開発を強力に推し進めるとともに、日立のIT×OT(Operational Technology)×プロダクトの強みを活かし、日立のバリューチェーンだけでなくお客さまの活動におけるサーキュラーエコノミーの実現も支援していきます。
循環型経済(サーキュラーエコノミー)移行の考え方
Note:日立では、調達先(いわゆるサプライヤー、ベンダー、プロバイダー等)を
「対等な立場で一緒にビジネスをつくり上げるパートナー」に位置づけており、「調達パートナー」と表現しています。
活動・実績
事業所で発生した廃棄物有価物*1は、種別ごとの発生量や輸出量を一元で管理し、特に有害廃棄物は、関連する法令・規制の遵守およびグループ内での適正処理を徹底しています。
2023年度には、データの収集業務の効率化を図るために「環境データ集計システム(Eco-DS)」から「ESGマネジメントサポートサービス(ESG-MSS)」に移行を開始しました。2024年度中にはESG-MSSへの移行を完了させる予定となっています。
「2024環境行動計画」(2022-2024年度)の中間年度である2023年度は、廃棄物有価物発生量原単位改善率において基準年度の2010年度比17%改善の目標を掲げました。当該年度は目標を達成することはできませんでしたが、15%改善することができました。
目標未達の理由は、海外案件の受注増加に伴い輸送時に使用する梱包材等の廃棄物が増えたことや、非連結化により自動車部品系会社の廃棄物有価物発生量原単位分を除外したなどの要因によります。
廃棄物有価物発生量は基準年度と比較して21kt、13%削減しました。発生量削減にあたっては、事業所内にリサイクル設備を設置して廃棄物を再生したり、グループ内の他事業所で原材料として再利用したりするクローズドループリサイクルや輸送時に使用する梱包材や緩衝材を繰り返し使用するなどの施策を継続的に実施しています。
*1廃棄物有価物:事業活動に伴って発生した廃棄物と有価物。廃棄物とは各国の法律で「廃棄物」と定義された物で、日本の廃棄物処理法では「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形状または液状のもの」をいう。有価物は、廃棄物以外の不要物で、有価として売却した物および無償で譲渡したもの
2024 環境行動計画 管理値 廃棄物有価物発生量*1原単位(日立グループ)
*1発生量:製造工程で発生した廃棄物有価物の量
*2活動量:事業所ごとに定める廃棄物有価物発生量と密接な関係をもつ値(例:生産高、売上高、生産重量など)
廃棄物有価物発生量*1の推移(日立グループ)
*1発生量:2021年度までは主要事業所、2022年度からは全事業所の製造工程で発生した廃棄物有価物の量と製造工程以外のオフィスなどで発生した廃棄物有価物の量の合計
*22022年度分は、2020年度から連結対象となったエネルギー系会社および自動車部品系会社の廃棄物有価物発生量を含んでいます。素材系および建設機械系会社の非連結化に伴い大幅に減少しました
*32023年度は、自動車部品系会社の非連結化に伴い減少しました
マテリアリティ
使用した資源を継続活用するために埋め立て処分量を限りなくゼロに近づける埋立廃棄物ゼロ*1達成に向けた活動も進めておりすべての製造事業所を対象に、埋立廃棄物ゼロ達成事業所数の具体目標数値を掲げて推進を加速しています。2023年度は活動対象のうち146事業所が廃棄物の埋立ゼロ事業所となりました。
2023年度目標:124事業所(約34%)
Note:全製造事業所が対象
*1埋立廃棄物ゼロ:日立では、当該年度最終処分率(埋め立て処分量/廃棄物有価物発生量)0.5%未満と定義。
規制や条件に適合している場合の取り組み
日立グループ全体では、2030年度までにプラスチック廃棄物の有効利用*1率を100%にする目標を立て、2022年度から活動を強化しています。2023年度は有効利用率81%の目標を掲げ、96%達成となりました。有効利用率向上にあたっては、廃棄物が出ない設備や製品への設計変更、歩留まり改善による減量化、社内再利用、分別や集積による有価化、分別徹底によるリサイクルなどの施策を実施しています。
特に日立グループにおけるプラスチック材使用量の約7割を占める日立グローバルライフソリューションズでは、材料メーカーから購入する再生プラスチック材のほかに、使用済み家電製品のプラスチック部品や、プラスチック容器などを原料としてグループ内で加工した再生プラスチック材を利用しています(洗濯機や冷蔵庫の部品、シーリングライトの梱包材など)。
また、洗濯機の大型部品(本体下部の外枠ベースなど)では、これまで新材と再生材を混合して使用していましたが、技術的な問題や調達の課題に対応したことにより、再生プラスチック材の使用量がほぼ100%になりました。
なお、日本では家電品をリサイクルするために、2001年に施行された家電リサイクル法への対応として、同業5社*2で連携をとりながら全国19カ所のリサイクルプラントで家電4製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)をリサイクルしています。2023年度は、回収した製品の再商品化*3処理重量約67.0ktに対して約59.4ktを再商品化しました。製品別では「冷蔵庫・冷凍庫」は80%で法定基準70%を10ポイント上回り、「洗濯機・衣類乾燥機」が94%と、法定基準82%を12ポイント上回る実績となっています。
*1有効利用:マテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクル、サーマルリカバリを指す。各国・地域の規制や条件に適合している場合の取り組み
*2日立グローバルライフソリューションズ、シャープ株式会社、ソニー株式会社、株式会社富士通ゼネラル、三菱電機株式会社
*3再商品化:使用済み家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)から部品および材料を分離し、自ら利用あるいは利用する者に有償または無償で譲渡すること。数値は、日立グローバルライフソリューションズと日立ジョンソンコントロールズ空調との合算
2023年度目標:81%
活動・実績
マテリアリティ
「2024環境行動計画」(2022-2024年度)の中間年度である2023年度は、製造事業所の製造工程および生活用途の水使用量原単位において基準年度の2010年度比23%改善の目標を掲げ、改善率30%と目標を達成しました。また、水使用量は基準年度の47%に相当する9百万m3を削減しました。使用量削減にあたっては、流量計設置による取水管理の強化、配水管地上化による漏水対策、冷却用水の循環利用、廃水を浄化しての再利用といった施策を実施しています。
2024 環境行動計画 管理値 水使用量*1原単位(日立グループ)
*1水使用量:製造事業所の製造工程および生活用途で使用した水の量の合計
*2活動量:事業所ごとに定める水使用量と密接な関係をもつ値(例:生産高、売上高、生産重量など)
水使用量*1の推移(日立グループ)
*1水使用量:製造事業所の製造工程と生活用途、および製造事業所以外での生活用途で使用した水の量の合計
*2 2022年度分は、2020年度から連結対象となったエネルギー系会社および自動車部品系会社の水使用量を上記報告値に含んでいます。素材系および建設機械系会社の非連結化に伴い大幅に減少しました
*3 2023年度は、自動車部品系会社の非連結化に伴い減少しました
活動・実績
日立は、長年、水総合サービスプロバイダーとして水事業におけるOT(Operational Technology)および製品・サービスの実績・ノウハウを培ってきました。
世界的に水資源の不足や自然環境の悪化が問題視される中、日立は、社会イノベーション事業で世界の水・環境をはじめとした社会課題解決に貢献してきました。近年、世界の国や地域ではそれぞれ違った水・環境問題を抱えており、日立はそのニーズに合ったソリューションを提供しています。
具体例としては、フィリピン共和国(以下、フィリピン)における下水処理場の高度処理化および再生水プロジェクトです。
本プロジェクトは、日立が水インフラ設備を整備・供給するFDC Water Utilities, Inc.から受注しました。フィリピンのマニラ首都圏モンテンルパ市にあるAlabang(アラバン)下水処理場(処理水量:8,000m3/日)を、活性汚泥処理と膜処理を組み合わせた「膜分離活性汚泥処理システム*1」により窒素やリンの除去を可能とする高度処理設備に改造するものです。また、処理能力を15,000 m3/日まで増強するとともに、その処理水を「ROシステム*2」と「紫外線殺菌システム」により、フィリピンの飲料水規準に準拠する水質レベルの再生水の製造(造水量:10,500 m3/日)も実現します。このプロジェクトにおいて日立は、機械・電気設備の設計・納入に加え、プラント遠隔監視・運転最適化システムなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションを提供しました。日立は、本プロジェクトを通してマニラ首都圏の水質改善や水需要増加への対応に貢献していきます。
*1膜分離活性汚泥処理システム: 活性汚泥処理と浸漬膜を組み合わせることにより高濃度活性汚泥処理が可能となり、維持管理が容易、省スペース・低コストで、高度な処理水質確保を図る下水処理システム。
*2RO(Reverse Osmosis)システム:浸透圧以上に加圧した水を逆浸透膜に供給して透過水を得る造水システム。
日立、フィリピンで下水処理場の高度処理化および再生水プロジェクトを受注
近年日本では、気候変動などの影響から水害が激甚化・頻発化する傾向にあり、自治体はハード面だけでなく、データなどを活用するソフト面(中小河川にまで拡大した水害に関するハザードマップの作成など)の対策強化が求められています。
日立は、青森県向けに「流域治水 浸水被害予測システム」(以下、本システム)を納入し、2023年4月から同県において本格運用が開始されました。
本システムは、国土地理院の地図データに加え、都道府県の保有する河川データやLPデータ*1を取り込み、高精度かつ高速に浸水のシミュレーションが可能です。さらに、シミュレーション結果を活用した避難・緊急活動支援などの機能の拡張性も有しており、国・自治体におけるハード・ソフト両面の流域治水対策に有効です。
具体的には、より高精度な水害リスクマップ(浸水頻度図)、および内水ハザードマップ*2を新たに作成することで、内水・外水*3の両方に対応した水害リスク情報の整備を図ります。
今後、日立は、流域治水対策に取り組む自治体へ本システムを広く展開することで、大規模水害による被害軽減への貢献をめざします。
*1LP(Laser Profiler)データ: 航空レーザー測量で得られた三次元地形データ
*2内水ハザードマップ: 大雨などにより、下水道や水路などを流れる水(内水)が氾濫した際の浸水区域や浸水の深さなどの想定情報をまとめた地図
*3外水: 河川を流れる水
青森県向けに「流域治水 浸水被害予測システム」を初納入、本格運用開始今後も日立は、デジタル技術を活用した官民連携での国際協力の取り組みなどを通じ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成や、気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化に対する適応力強化など社会インフラの強靭化を支援していきます。
水・環境ソリューション日立の水にかかわる主な製品・サービス
分野 | 製品・サービス(納入実績) |
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水資源の創出 | 排水再生利用システム |
海水淡水化システム | |
水インフラの整備 | 上下水道など(約40カ国・地域で200サイト以上) |
浄水場(日本:約700カ所) | |
下水処理場(日本:約900カ所) | |
上下水道事業向け総合デジタルソリューション | |
総合治水対策 | 洪水予測と避難・緊急活動シミュレーション技術 |