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Hitachi
  • デザイナープロフィール画像:佐藤 知彦

    佐藤 知彦

    デザインセンタ
    UXデザイン部
    ユニットリーダー主任デザイナー

きざしとらえる

日立の小型冷蔵庫「Chiiil(チール)」は、キッチン以外のさまざまな空間に置かれることを想定した、家具のようなたたずまいをもつ新しい発想の冷蔵庫です。縦にも横にも並べて設置できるモジュール型で、10色のカラーバリエーションをそろえるなど、インテリアや使い方に合わせて好みのスタイルを選ぶことができます。

この今までありそうでなかった冷蔵庫の企画は、通常の商品開発とは異なる考え方から生まれました。デザイナーの佐藤知彦は次のように説明します。「日立では、一部の製品にビジョン駆動型ソリューション開発という手法を導入しています。10年後のお客さまの暮らしやニーズを思い描いて、そこから生まれる仮説から次の商品のコンセプトを導き出すというバックキャスト型の開発プロセスです」。

このプロジェクトでは、ビジョン駆動型ソリューション開発のプロセスをとおして「勤務スタイルの多様化が進み在宅勤務者が増え、結果在宅時間も増加するのでは?」というきざしを、新型コロナウイルス感染症(COVID 19)の流行前からすでにとらえていました。その後、奇しくもコロナ禍となり、実際に在宅時間が増え、自宅で調理・食事する“内食”に対するニーズが高まるなど、人々のライフスタイルが劇的に変化。図らずも「新しい発想の冷蔵庫」のリアリティが増したことで、開発はスピーディに進んでいったのです。


ハンドルは扉の上面に移し、正面からは見えないようにした。


キッチン以外の場所にも置ける新発想の冷蔵庫。

このプロジェクトでは、ビジョン駆動型ソリューション開発のプロセスをとおして「勤務スタイルの多様化が進み在宅勤務者が増え、結果在宅時間も増加するのでは?」というきざしを、新型コロナウイルス感染症(COVID 19)の流行前からすでにとらえていました。その後、奇しくもコロナ禍となり、実際に在宅時間が増え、自宅で調理・食事する“内食”に対するニーズが高まるなど、人々のライフスタイルが劇的に変化。図らずも「新しい発想の冷蔵庫」のリアリティが増したことで、開発はスピーディに進んでいったのです。

ロケーションフリーを表現したChiiilのコンセプトイメージ。

Chiiilが生みだす新しい体験

今回の取り組みのポイントは冷蔵庫の役割を再考し、ユーザーと冷蔵庫の新しい付き合い方を模索したことです。当然ながら冷蔵庫はキッチンに設置されることが多いのですが、Chiiilはリビングやダイニング、ワークスペースなど、キッチン以外の場所に置かれることで生まれる新しい“体験”の価値に焦点を当ててデザインしています。

わざわざキッチンに行かなくても、リビングで歓談しているときに冷えたデザートを楽しんだり、書斎でオンラインミーティングをしながらドリンクを取り出せる。そうしたシーンを想定していくと、冷蔵庫の形やスタイリングも一般的な冷蔵庫とは異なるものになるので、Chiiilは家電ではなく、家具に近い存在としてデザインされています。置かれる空間との調和性を考慮しながら、さまざまな形状を検討した結果、どんなインテリアにもなじむような、垂直水平を基調としたシンプルな意匠にたどり着きました」と佐藤は語ります。

特に苦労したのは最適なサイズを割り出すことでした。やはり冷蔵庫なので、収納性にあたる容量の確保も大事なポイント。必要とされる容量を確保しながら、インテリアの中で邪魔にならないサイズ感を割り出すことが難しく、そのため多数のモックアップを作成し、サイズ感を細かく検証しました。空間のさまざまなところにモックアップを置き、庫内にペットボトルや容器を出し入れしながら、さまざまな使用シーンでの使い勝手や収納性を確かめていったのです。

また、テーブルやキャビネットなど家具との調和も考え、本体奥行は薄型を追求。通常は冷蔵庫の背面にある放熱機構を本体下部に配置することで、壁面につくように配置が可能になりました。こうして、高さ750mm、幅559mm、奥行き420mmという、冷蔵庫としてユニークな寸法を導き出したのです。

もうひとつの新しい体験価値は「選択」です。ユーザーがさまざまな設置スタイルを実践できるモジュール型であることが特徴のChiiil。豊富なカラーバリエーションを揃えることで、どんなインテリアにもマッチする色を選べるようにしました。「インテリア提案のプロフェッショナルであるアクタスと一緒に検討して10色をセレクトしました。ポイントは室内に使われる床材の素材と色。Chiiilは本体の高さが低いため、壁面だけではなく床面との相性も意識し、デザインしています」と佐藤。北欧インテリアのトレンドを踏まえたグレイッシュな「ノルディック」をはじめ、「ブリック」(レンガ色)や「モス」(モスグリーン)といった、通常の冷蔵庫にはない色を多数採用しています。

ハンドルの位置やブランドロゴマークの加飾についても、「Chiiilを複数台並べて設置したときの見え方を意識した」と佐藤。当初は扉の前面に取り付ける予定だったハンドルは、複数台が並ぶと煩雑に見えるため、扉の上面に移して正面からは見えないようにしました。同様に、通常は金属調に加飾される日立のロゴも、やはり扉上面でエンボス加工するに留めて、極力目立たないようにしています。

家電ではなく、家具に近い存在としてデザイン。

ユーザーに委ねる家電

Chiiilは新しい試みの商品として、日立の家電製品としては初めてクラウドファウンディングを実施。目標額の7倍の支援を受けて、10色の色展開と共に話題のデビューとなりました。2022年4月の発売後もユーザーから好評を博し、リフォームしたお気に入りのリビングに設置したり、オフィスのコミュニケーションスペースに据えたり、化粧品を冷やすために洗面所に置くなど、ユーザーがそれぞれの用途を見出して、使いこなしている事例が多くあります。

多様な選択肢を提示し、ユーザーに委ねる。そうした新しい切り口やコンセプトが評価され、Chiiilは日本デザイン振興会主催の2022年度グッドデザイン賞で金賞(経済産業大臣賞)を受賞しました。「グッドデザイン賞では、近年サービスやソリューションに注力したデザインが評価される傾向にあり、ある種成熟製品ともいえる冷蔵庫で、新たな商品像を打ち出したとはいえ、評価していただくことに難しさはあったと思います。このプロジェクトを通じ、着眼点を変えることによって、新しいストーリーやニーズを掘り起こせることを学びました」と佐藤は語ります。ビジョン駆動型による開発プロセスの成功事例として、今後も引き続き、モジュール型冷蔵庫の特徴を活かしながら、さらにChiiilの商品像を膨らませ、広げていきたいと考えています。

ギャラリー

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  • リビングで使う
  • ベッドルームで使う
  • キャビネットのように
  • 壁際にもスッキリ収まる
  • 縦に積み重ねたレイアウト
  • さまざまな床面との相性を検討
  • 収納性を検討するモックアップ
  • アクタスとともに10色をセレクト
  • 選ばれた10色
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