肝炎ウイルス検査を行った場合の陰性結果の説明と陽性の場合の紹介のお願いです。
肝炎対策基本法が施行された2010年には、我が国のC型肝炎ウイルス感染者数は合計101~151万人と推定されており国内最大級の感染症でありました。 感染を放置すると自覚症状のないまま肝硬変、肝がんといった重篤な病態に進行する可能性があり、肝がんによる死亡者数の7割近くがC型肝炎ウイルスに起因していました。
しかし、近年のC型肝炎治療の進歩は目覚ましく、普段の生活を送りながら経口薬のみでウイルス治療を行い、ほぼすべての方がC型肝炎ウイルスを排除できるようになりました。また、非代償性肝硬変であっても治療できるお薬も登場しています。
B型肝炎においても治療薬剤の進歩により、肝炎の活動性と肝線維化進展の抑制による慢性肝不全の回避ならびに肝細胞癌発生の抑止、およびそれによる生命予後ならびにQOL改善につながっております。
この様なC型/B型肝炎治療を取り巻く環境変化の中、2016年6月には肝炎対策基本法の『肝炎対策の推進に関する基本的な指針』が改定され「医療機関は、肝炎ウイルス検査の結果について確実に説明を行い、受診につなげるよう取り組む。」との文言が明記されています。肝炎ウイルス検査が陰性結果であっても説明をすることで肝炎検診を受けたことと同等(非認識受検)になります。
国際的に見ると、WHOでは2030年までに全世界でC型肝炎のeliminationを目標とし、具体的には新規感染発生率を90%減じ、また感染による肝臓関連死亡を65%減少させるという指標を掲げています。この目標に到達するための行動目標として、90%の患者が感染を診断され、治療必要者の80%が治療を受けることを設定しています。我が国では、これに沿った取り組みの結果、目標達成に向けてon trackにあると評価を受けていますが、コロナ禍の中での受診や治療の減少が危惧されるところです。
当地域での、肝炎や肝がんを撲滅するために活動してまいりました。今後も活動を継続し、当地域がいち早くeliminationを達成できることを願っております。ご協力のほどお願い申し上げます。
肝炎ウイルス検査で陽性の患者さまがおりましたら別紙の紹介状を記載しご紹介をお願い致します。肝炎検査の結果がわかる簡易的な内容の記載あれば貴院さまの用式の紹介状でも結構です。
茨城県肝疾患診療連携拠点病院
(株)日立製作所日立総合病院 肝疾患相談支援センター 鴨志田敏郎