システムインテグレーション事業などを手がける日立ソリューションズは、2010年10月に、日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスの合併により新たに設立されました。日立ソリューションズは、合併を機に、常駐する産業医や保健師の事務工数削減などを目的としたシステム化に着手。「従業員健康管理クラウドサービス」により、業務の効率化と、個人情報のより安全な管理を実現しました。
健康管理統括センタでは、各事業所に常駐する産業医や保健師が従業員の健康管理をサポートしています。長時間残業者に対する問診や面接指導、定期検診などの管理、メンタル不調者に対する面談やフォロー、その他、就業制限などの産業医の権限で行うさまざまな業務を行っています。
株式会社日立ソリューションズ
健康管理統括センタ
事務長 升井 均
産業医や保健師は、紙ベースでカルテを管理・運用することに加え、社員との面談のスケジュールをエクセルのファイルで管理するなど、事務作業に費やす時間が多くなっていました。例えば、産業医、保健師1人あたり、約1,000名の従業員を担当していますが、システム導入前は、エクセルを使って面談予約の管理を行っていました。面談には、相談内容に応じて何種類かあり、それぞれにかかる時間も異なります。新規の予約や時間変更などで、1日20人から30人くらいスケジュール調整が発生していました。結果、本来の業務である、従業員に対する面談などにリソースが集中できないという課題がありました。「合併して1万人規模の会社になるということもあり、従来のアナログなやり方では運用が難しくなるという懸念があり、システム化を検討し始めました」(升井)
株式会社日立ソリューションズ
人事総務統括本部 人事サポート部
主任 手塚 昌之
産業保健分野は、会社によって制度や運用が異なり、パッケージでは当社の業務に対応しきれません。しかし、オーダーメイドのシステムではコストがかかりすぎるため、今回、システム開発とクラウドサービスを組み合わせた「従業員健康管理クラウドサービス」を導入することになりました。「産業保健分野というのは、コスト面から大規模なシステム投資が難しい面があったのですが、従業員健康管理クラウドサービスは、クラウドを利用することによりコスト面で非常に優位性を感じられた点も導入の決め手になったポイントです」(手塚)
また、業務の性質上、従業員の健康に関するプライバシー情報を扱うため、データの秘匿性保持も課題としてありました。今回のサービスでは、従業員の健康に関する情報(身長や体重、血圧など、個人を特定できない情報)を切り出してクラウド上で管理し、人事情報は自社内で管理します。健康に関する情報と人事情報を切り離して管理するため、セキュリティ面の課題も解決できると考えました。
システム開発は約8ヵ月でした。開発時に一番力を入れてもらったのは要件定義の部分です。導入にあたり、業務をヒアリングする要件定義に時間をかけ、画面設計やシステムを構築していくアプローチをとった点が特徴です。「例えば、産業医や保健師が参照する健康情報の数値は、標準設定される基準値だけでなく、人によっては設定外の情報を参照したいというようなケースもあります。定期健診を開催する場合も、事業所によっては年に2、3回のところもあるし、毎週行うところもある。このように、外から見ただけではわかりづらい業務プロセスが多いため、開発部門と一緒に、業務プロセスを一から確認しながら導入を進めました」(升井)。
従業員健康管理クラウドサービス 構成イメージ
株式会社日立ソリューションズ
健康管理統括センタ
主任 千葉 佳子
導入後の効果として一番大きいのは、スケジュール調整のシステム化による業務の効率化です。今までエクセルで管理していたため、多大な事務作業が発生していましたが、システム化されたことにより、年間数千万円単位のコスト削減効果がありました。「今までは、誰がいつ、何時に予約が入っているか、エクセルで管理していたので、電話を受けたときにリアルタイムに参照することができませんでした。システム化されて、社員番号からすぐに検索、参照が可能になったので、予約の変更もすぐに行えて便利です」(千葉)。また、面談日が近づくと、予約した従業員宛にリマインダメールが自動で届く機能がついているため、面談への出席率も向上しました。
もう一つ効果としてあげられるのは、健康に関する情報を、クラウド上で管理することにより、従業員の個人情報の安全性が高まったことです。健康に関する情報は非常にセンシティブで、社内で管理すると、他部門の従業員が目にする可能性がありました。しかし、クラウド上で健康に関する情報、自社内で人事情報、と別々に管理することで、その懸念は解消できました。2つの情報を分けることで、社内のみで管理するよりも堅牢性、安全性はむしろ高いと認識しています。その2つの情報は、システムの画面を立ち上げると、2つの情報が呼び出され、画面上で組み合わされて表示されるという仕組みです。Webシステムであるため、ソフトのインストールなどの必要はなく、ブラウザを使ってシステムを利用できます。自分のPCが壊れたとしても、他の端末を使って業務を続けることができるので安心です。
「今回のシステムの開発にあたって、特にシステム化の要件定義の部分で開発部門には頑張っていただいたと思います。開発当初からヒアリングを重ね、業務を理解してくれました。今後は、蓄積したノウハウを活かして、例えば、女性が使って楽しいような色使いや、アニメーションなどを用いたインターフェースなど、システムの使い勝手をさらに向上させる提案を期待したいですね」(升井)
「産業医や保健師の事務負荷の軽減やコスト削減、個人情報に配慮した健康情報の安全な管理といった、システム導入時の課題は概ね達成できたと評価しています。運用を開始してまだ半年程度ではありますが、使い勝手の向上という部分での細かい改修などに加え、今後は、組織として統計的な健康の傾向を把握するといった組織マネジメントにこのシステムを活用していけたらと考えています」(手塚)
日立ソリューションズは、2010年10月、日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスが合併し、新たに誕生しました。IT業界を取り巻く環境は、過去にないスピードで変化しています。こうした変化に対応するため、お客さまの業務ライフサイクル全般に亘り、社内システムとクラウド連携を始めとする豊富なソリューションを全体最適の視点で組み合わせ、ワンストップでご提供する「ハイブリッドインテグレーション」を実現します。
[会名] 株式会社日立ソリューションズ
[本社] 東京都品川区東品川四丁目12番7号
[創立] 1970年 9月
[従業員数] 13,409名(連結: 2011年9月30日現在)
[事業内容] ソフトウェア・サービス事業、情報処理機器販売事業
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