日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 伊藤 達)は、このたび、携帯電話用W-CDMA-USIM(注1)カードやマルチアプリケーションカードなどの多機能・大容量メモリICカード向けに、ICカード用マイコンとしては最先端の0.18μm CMOSプロセスを採用して、大容量メモリの搭載と当社従来品に比較して約1/2の低消費電力化を実現した16ビットICカード用マイコン「AE46C1」を製品化しました。2003年4月よりサンプル出荷を開始します。
近年、マイコンを搭載したICカードは、欧州の携帯電話用GSM-SIM(注2)カード向けを中心に急速に普及し、クレジットカードや銀行キャッシュカード、ETC(注3)カードや電子乗車券、IDカードなど多様な用途に採用され、普及が進んでいます。さらに、最近では、1枚のICカードで複数の機能を実現するマルチアプリケーションカードのニーズが高まっており、マルチアプリケーションを実行可能なJava CardTM(注4)やMULTOSTM(注5)などの汎用OSの採用拡大や、アプリケーションプログラムの全体容量の増加が予想されます。これに伴い、ICカード用マイコンへのニーズとして、汎用OSでの高速な処理、また、これらのOSやアプリケーションプログラムおよびデータを格納できる大容量メモリの搭載、携帯機器で使用する上での低消費電力化、更にカードの偽造・情報の改竄を防ぐための高セキュリティ機能が求められています。
当社は、これまで8ビットCPUの「AE-3シリーズ」や16ビットCPUの「AE-4シリーズ」を製品化し、これらのニーズに対応してきましたが、今回、最上位機種の「AE46C」をベースに、今後更なる高性能化・高機能化が必要となる第3世代携帯電話用W-CDMA-USIMカードやマルチアプリケーションカード等向けに、16ビットICカード用マイコン「AE46C1」を製品化しました。
本製品は、当社として初めて、ICカード用マイコンとしては最先端の0.18μm CMOSプロセスを採用した製品であり、従来から培ってきた当社独自の高信頼性メモリ技術やセキュリティ技術により、本製品は以下の特長があります。
<特長> |
1. プロセス微細化による、高信頼性EEPROMの高速化と大容量メモリの搭載
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当社独自の高信頼性MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型EEPROMを68Kバイト搭載。プロセスの微細化により、書き換え速度(消去および書き込み)を、従来品「AE46C」に比較して約1.3倍に高速化し、3ms以下/1〜128バイトを実現。更に書換え頻度の少ない初期データや基本アプリケーション等の書込み用に、書き換え速度が2ms以下/1〜128バイトのFastモードを搭載しており、ICカード発行処理時間の短縮によるコスト削減、及びICカード内でのデータ処理時間短縮に貢献します。
さらに、マスクROMの容量を拡大して368Kバイトの大容量マスクROMを搭載したため、汎用OSの他に、これまでEEPROMに搭載していたアプリケーションやデータを搭載することができ、大規模容量のアプリケーションプログラムを複数搭載したマルチアプリケーションのICカードを実現可能。また、マスクROMにOSやアプリケーションを搭載することで、カード発行時のEEPROMの書き込み時間の短縮を図れるだけでなく、カード発行後の他のアプリケーションやデータ格納用として68KバイトのEEPROM全領域を使用することが可能となります。
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2.低消費電力のICカードを実現する低消費電力化と低電圧動作
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0.18μm CMOSプロセスの採用とともに、内部回路の動作電圧の低電圧化を図り、1.8Vの低電圧動作を実現。3Vの外部電圧動作時で従来品「AE46C」の約1/2と低消費電力化を実現しており、ICカードを使用する携帯機器のバッテリー使用時間延長に貢献します。さらに、外部電圧1.8Vの動作もサポートしているため、より低消費電力のICカードを実現可能です。
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3.ICカードの高度なセキュリティ機能を実現するコプロセッサや各種機能の搭載
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暗号処理用として、DES(Data Encryption Standard)暗号対応コプロセッサや、「べき乗剰余演算コプロセッサ」を搭載し、高度な暗号処理に対応するとともに、電圧や周波数の異常検出器など外部からのハッキングを防ぐ高度なセキュリティ機能を搭載しており、高度なセキュリティ機能をもつICカードを実現可能。
さらに、セキュリティレベルの保証として、セキュリティに関する国際標準規格「ISO 15408」(注6)の認証も取得予定です。
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(注1) |
W-CDMA-USIM:(Wide band-Code Division Multiple Access - Universal Subscriber
Identity Module)
W-CDMAは第3世代携帯電話に使用される通信方式の一つ。USIMカードは利用者情報を記憶するカードで、カードを携帯電話機に組み込むことで、カード所有者の情報により電話することができる。
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(注2) |
GSM-SIM:(Global System for Mobile Communications - Subscriber Identity Module)
GSMは携帯電話などの移動体通信の方式。SIMカードはW-CDMAに使用するUSIMカードと同様に利用者情報を記憶するカード。
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(注3) |
ETC:(Electronic Toll Collection system)
ノンストップ自動料金収受システム。車両が有料道路の料金所を通過する際に、路側無線装置と車両に搭載された車載器との無線通信によって、自動的に料金収受を行うシステム。
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(注4) |
JavaおよびJava関連の商標及びロゴは、米国Sun Microsystems, Incの商標です。
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(注5) |
MULTOS:Multi Application OSの略です。MULTOSは、MAOSCOの商標です。 MAOSCOは、MULTOS仕様の制定、維持管理を行なうコンソーシアムであり、MAOSCO Limitedが事務局を務めています。
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(注6) |
ISO 15408:1999年にISO(国際標準化機構)により策定された情報技術セキュリティ
評価基準の国際規格で、ソフトウェアやハードウェア製品、システムのセキュリティ強度すなわち安全性を評価する国際基準。
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