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2002年12月11日

半導体デバイス特性に及ぼす銅の影響を解明

低温配線工程での銅の拡散挙動を系統的に解析


 日立製作所 中央研究所(所長:西野壽一)は、このたび、最先端LSIの配線材料に用いられている銅が、半導体デバイス特性に与える影響をはじめて系統的に評価しました。配線工程を想定して、低温での半導体基板裏面からの銅拡散を調べた結果、裏面に存在する銅の濃度と、基板の構造に依って、銅の拡散挙動には大きな違いがあることが判明しました。また、銅がデバイス特性に与える影響は、上記拡散挙動を解析することにより予見可能であることが分かりました。今回得られた知見は、銅配線を用いた半導体の信頼性向上に大きく寄与すると考えられます。

 近年急速に市場が拡大しているシステムLSIの高性能化には、銅配線の適用が不可欠となっています。これは、銅が、従来、配線に用いられていたアルミニウム合金に比べて、抵抗率が小さく、高密度の電流を流すことが出来るという特長を有しているためです。
 他方、銅はSiやSiO2中の熱拡散速度が非常に速い金属です。このため、半導体基板裏面に付着した銅が基板表面のデバイス領域に拡散し、MOSFET1)の性能劣化や信頼性低下を招くという問題が懸念されていました。しかし、銅の拡散挙動が複雑なため、従来、その影響について明確な回答は得られておりませんでした。銅配線の適用範囲が拡大するとともに、銅拡散が半導体デバイスに与える影響を明確にすることは、ますます重要になっています。

 このような背景から、当社中央研究所では、配線工程における低温での銅の拡散挙動に着目して、銅が半導体デバイス特性に与える影響を系統的に評価致しました。
 その結果、
(1)裏面に存在する銅の濃度と、基板の構造によって、銅の拡散挙動には大きな違いがあること、
(2)銅は、ゲート酸化膜に浸透しないため、酸化膜の絶縁性に影響を与えないこと、
(3)銅は、P型、N型不純物の特性を低下させるため、MOSFETの短チャネル効果2)を増大させること、
が判明しました。
 今回の結果は、銅の拡散挙動を系統的に評価することにより、銅汚染によるデバイス劣化機構をはじめて明確にしたものです。この結果から、制御技術の指針を得ることによって、銅を使用した半導体プロセスの最適化を可能とするものです。

 なお、本成果は、12月9日から米国サンフランシスコで開催された電子デバイスに関する国際会議「2002 International Electron Devices Meeting」にて発表されました。

■注釈
(1)
MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistorの略。MOS型の電界効果トランジスタ。高集積化が可能で、消費電力が少ないという特徴があります。
(2)
短チャネル効果:ゲート長(およびチャネル長)を短くしていくと、オフ状態においても電流が流れやすくなる現象。



以上



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