日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 伊藤 達)は、このたび、次世代のテレマティクス(注1)機器などの車載情報機器やPOS端末などの産業機器向けに、SuperHTM(注2)ファミリの最上位RISC CPUコア「SH-4」と、音声やサウンド、車載LAN、メモリカードなどの多様なインタフェースを1チップに集積した高性能プロセッサ「SH7760」を製品化しました。2003年1月からサンプル出荷を開始します。
本製品は、従来の「SH-4」CPUコアを、キャッシュメモリ容量を2倍にするなど強化し、より高性能化した「SH-4」コアを搭載していることに加え、音声や車載LANなどに対応した多様なインタフェースや周辺機能を内蔵しています。これにより、1チップで、次世代の高機能で高性能なテレマティクスなどの車載機器を実現可能なだけでなく、LCDコントローラやUSBインタフェース等も内蔵しているため、POS端末などの産業機器や民生機器にも適しています。さらに、従来の「SH-4」製品と互換であるため、既存のプログラムやミドルウェアの流用が容易であり、準備している開発用プラットフォームを使用することで、ユーザでのシステム開発を短期間に行なうことが可能です。
従来の車載情報機器は、主として道路情報表示を行なうカーナビゲーション機器が主流でした。しかし近年、安全確保のため、車内からエアバッグ動作などの車両情報を無線等で車外に発信し、トラブル等を知らせる「緊急通報システム(注3)」として始められたサービスに加え、簡単なルートガイドやガソリンスタンド、レストラン等の情報をリアルタイムで提供するサービスなどが登場しています。このように、車内と車外を携帯電話などの無線端末でインターネットなどに接続し、車外から交通や安全、娯楽などの様々な情報を受信、また車体状況などの車両情報やサービスセンタへの問い合せなどを車外へ発信する等、車内においても、家庭などと同様な情報サービスの提供を図るテレマティクス分野が拡まると予想されています。
テレマティクス機器には、多様な機能が必要です。例えば、車外から受信した簡易ルートガイド等の各種サービス情報の表示や、走行速度やエアバッグ動作などの各種車両情報を車内LAN経由での取り込みと処理、さらに車外へ発信するための無線端末との接続や制御などです。さらに、今後は、機器を操作する際の安全性を配慮し、音声による操作などのハンズ・フリー機能が備わり、拡大していくと見込まれており、この機能を実現する上では、ノイズやエコーのキャンセル技術、音声認識や音声合成等の技術が重要です。このように、次世代のテレマティクス機器を開発するうえでのニーズとして、多様な機能や技術を実現でき、さらに限られた車内スペースに設置するため、機器の小型化を図れる高性能で高機能なデバイスへの強い要望があります。
そこで当社は、この市場ニーズに対応するため、カーナビゲーション機器において実績のあるSuperHファミリの最上位CPUコア「SH-4」とテレマティクス機器に必要な多様なインタフェースと周辺機能を1チップに集積した高性能プロセッサ「SH7760」を製品化しました。
本製品の特長は以下のとおりです。
<特長> |
(1)
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360MIPS, 1.4GFLOPSの高処理性能と、キャッシュメモリ容量を2倍に拡大した強化版の「SH-4」CPUコアの搭載により、高性能な機器を実現可能
動作周波数200MHzで、360MIPSおよび1.4GFLOPSの高処理性能を実現するSuperHファミリの最上位CPUコア「SH-4」を搭載。本CPUコアは従来の「SH-4」の強化版であり、キャッシュメモリについて、容量を2倍 (命令:16Kバイト、データ:32Kバイト)に増やし、且つ2ウェイセットアソシアティブ方式を採用することなどにより、プログラム処理の更なる高速化が図れ、高性能な機器を実現可能。また、従来と命令互換であるため、既存のプログラムや音声やサウンド処理などの各種ミドルウェアを流用可能。
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(2)
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多様なインタフェースを搭載していることで、小型で高機能な機器を実現でき、各種外付け部品が削減できることから、機器の低価格化が可能
ハンズフリー機能に不可欠な音声データ、またオーディオデータのインタフェースとして、オーディオLSI接続用のオーディオ・コーデック・インタフェースおよびオーディオ機器接続用のシリアル・サウンド・インタフェースを内蔵。また、業界標準の車載LANであるCAN(注4)に対応したHCAN2(注5)インタフェースや携帯電話等との接続を実現するUSBホストインタフェース、さらに、地図データ取り込み等の為のメモリカードとのインタフェースなど、音声、サウンドから制御情報まで各種情報対応の多様なインタフェースを搭載。これにより、1チップでテレマティクス機器や産業機器での各種アプリケーションに対応でき、これまで各機能を実現するうえで必要であった種々の外付け部品を削減可能なことから、機器の小型化や低価格化を実現可能。
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(3)
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最大640×480ドットの表示が可能なLCDコントローラの搭載により、表示システムを容易に構成できるうえ、簡易カーナビゲーション機能を1チップで実現可能
256色表示時で、最大640×480ドットの液晶表示画面を可能にするLCDコントローラを搭載。液晶ディスプレイを接続することにより、容易に表示システムを構成可能であり、「SH-4」の高性能な処理性能により、ターン・バイ・ターン方式(注6)の簡易ルートガイドや情報表示など、簡易カーナビゲーション機能を1チップで実現可能。
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(4)
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データ転送用バッファとFIFOブリッジの内蔵により、途切れのないスムーズな転送処理を実現
I2Cバスインタフェースなどの一部のモジュールには、データ転送用バッファを内蔵。内部バスで、各種データの送受信が同時に発生しても、それぞれのデータ処理を並列に実行可能。さらに、特に円滑なデータ転送が必要なLCDコントローラやUSBインタフェース、オーディオ・コーデック・インタフェース、シリアル・サウンド・インタフェース用に、それぞれ専用のFIFO(First In First Out)を付加したブリッジをDMACに内蔵。これにより、スムーズなデータ転送と処理が可能となり、データ転送が途切れることで発生する音跳びなどの問題に対応可能。
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