日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 伊藤 達)は、このたび、自動車のダッシュボード(メータパネル)システムや車体制御向けに、メータのゲージを駆動するステッピングモータの制御用タイマ、液晶表示用LCD(注1)コントローラ、および車載用ネットワーク規格のCAN(注2)インタフェースを内蔵し、かつ少ピン・コンパクト外形を実現した、フラッシュメモリ内蔵16ビットシングルチップマイコン「H8S/2282F」を製品化しました。
2002年10月21日よりサンプル出荷を、2003年1月から量産を開始します。
本製品は、ローエンド版のダッシュボードシステムに対応するため、20MHzの高性能とシステムに必要な諸機能を内蔵しながら、100ピンのコンパクト外形を実現しています。ピンピッチが0.65mmと広めなため、低コストの片面実装基板への搭載が可能であり、システムの小型化、低コスト化が図れます。
また、CANバスウェークアップ機能や32kHzのサブクロック分周器も内蔵しており、システムの小型化、開発期間の短縮が可能です。
なお、本製品のマスクROM版も開発しており、2003年3月より量産の予定です。
近年、車載機器やFA等の産業機器の制御分野において、通信方式は従来のシリアル通信から高速でかつ信頼性の高いCANバス通信への移行が進んでいます。また、自動車のダッシュボードシステムは、スピードメータやタコメータ等を表示する4つのゲージが標準であり、これらをリアルタイムに制御するためには高性能なシングルチップマイコンが必要になってきています。
当社はこうしたニーズに対応するため、これまでにダッシュボードシステム向けCAN対応製品として、ミドル・ハイエンド版をターゲットとした「H8S/2646シリーズ(144ピン)」と「H8S/2636シリーズ(128ピン)」計12品種をラインアップしています。しかし、ローエンド版ではシステムの搭載位置によりスペースが限られていることから、シングルチップによるシステムの小型化、そして低コスト化への強いニーズがあります。さらにシステムが低消費電力モードのときにCANバス動作で通常動作に復帰する機能やメインクロックから32kHzを分周する機能の内蔵という要求もあります。
そこで当社では、今回、ローエンド版での市場ニーズに対応するため、ステッピングモータ制御タイマ、LCDコントローラ、CANインタフェース内蔵等によりシステムを1チップ化すると共に、100ピンの少ピン・コンパクト外形を実現したフラッシュメモリ内蔵16ビットシングルチップマイコン「H8S/2282F」を製品化しました。本製品は、0.35μmプロセスを採用、当社16ビットマイコンの最上位である「H8Sシリーズ」の「H8S/2000」CPUコアを搭載しており、最小命令実行時間50ns(動作周波数20MHz)を実現しています。また、128Kバイトのフラッシュメモリを内蔵したF-ZTATTM(注3)品で、単一電源でのデータの書き込み/消去が行えます。主な特長は以下のとおりです。
<特長>
1. ダッシュボードシステムを100ピンの少ピン・コンパクト外形で実現
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- ダッシュボードシステムのメータ4ゲージとLCDの直接駆動を実現
スピードメータ、タコメータ、燃料計、水温計の4ゲージを駆動するステッピングモータを直接駆動可能なドライバ内蔵モータコントロールPWM(注4)タイマを搭載。さらに、走行距離を表示するための液晶表示も28セグメント×4コモンまで直接駆動できるため、従来外付けていた各ドライバが不要となります。
- CANに対応すると共に、CANバス動作によるウェークアップ機能を内蔵
Bosch CAN Ver.2.0B active規格に準拠したHCAN(注5)を内蔵。CANインタフェースのデータバッファは16メッセージが格納可能で、最大通信速度1Mbps(bit per second)を実現しています。さらに、自動車システムでは必須になってきている低消費電流モード(スタンバイモード)からの復帰用に、CANのバス動作でマイコンを起動するウェークアップ機能を内蔵しており、システムの小型化が図れます。
- システムの低コスト化に対応した少ピン・コンパクト外形
各機能を内蔵しながらも100ピンQFPの少ピン・コンパクトパッケージを実現。基板面積が限られるダッシュボードシステムの小型化が図れます。また、0.65mmのピンピッチにより、低コストの一層基板の採用が可能となり、システムの低コスト化が可能です。
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2. メインクロック(1個の水晶発振子)から32kHz発振を実現 |
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リアルタイムクロック用に従来は外付けで32kHz発振に対応していましたが、発振子の特性で温度による誤差が発生するため、今回、誤差の少ないメインクロックから32kHzを分周する機能を内蔵。これにより、精度向上と共に水晶発振子が1個であるため部品点数が削減でき、システムの小型化、低コスト化が図れます。 |
なお、マスクROM版として128KバイトのROMを内蔵した「H8S/2282M」と64Kバイトの「H8S/2281M」も製品化し、2003年3月に量産を開始する予定です。
開発環境としては、ソフトウェア開発環境として、既存の「H8Sシリーズ」用のCコンパイラ、アセンブラ、リンケージエディタ、ライブラリアン、シミュレータ、デバッガ等を準備しています。ハードウェア開発環境としては、リアルタイムエミュレータ「E6000」を準備しており、エミュレータ本体は「H8S/2646シリーズ」と共通です。
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(注1) |
LCD(Liquid Crystal Display):液晶表示。 |
(注2) |
CAN(Controller Area Network):独 Robert Bosch GmbHが提唱している車載用のネットワーク仕様。
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(注3) |
F-ZTATTM(Flexible Zero Turn Around Time)は、(株)日立製作所の商標です。 |
(注4) |
PWM(Pulse Width Modulation):パルス変調方式。 |
(注5) |
HCAN(Hitachi Controller Area Network):Bosch CAN Ver. 2.0B activeに準拠したFULL CAN対応/16メッセージバッファ。
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■応用機器例
●車載機器:ダッシュボード制御、シャーシ制御、カーオーディオ等
●産業機器:FA機器等
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製品名 |
フラッシュ容量(バイト) |
パッケージ |
サンプル価格(円) |
H8S/2282F |
HD64F2282 |
128K |
QFP-100(14mm×20mm) |
1,700 |
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■仕 様 |
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*:開発中 |