日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 伊藤 達)は、このたび、自動車のエンジン制御などのパワートレイン制御やFAなどの産業機器制御等の分野向けに、業界最高速の80MHz動作を実現し、さらに業界最大クラスの1Mバイトの大容量フラッシュメモリを内蔵した32ビットシングルチップRISCマイコン「SH7058F」を製品化し、2002年12月からサンプル出荷を開始します。
本製品は、高性能RISCマイコンであるSuperHTM(注1)ファミリのCPUコア「SH-2」を搭載し、フラッシュメモリを内蔵したF-ZTATTM(注2)マイコン「SH7055F」の後継製品です。0.18μmプロセスを採用して、従来品「SH7055F」に比較して最高動作周波数を80MHzと2倍に高速化したうえ、1サイクルアクセスが可能なフラッシュメモリを内蔵し、容量も1Mバイトと2倍に大容量化しています。これにより、高速な動作と複雑な制御のための大容量プログラムを格納できることで、エンジン制御などの分野において、より精度良く、木目細かな制御を必要とする高性能で高度な制御システムを実現可能です。
自動車のエンジン制御などの分野においては、単なる燃料噴射などの制御から、燃費向上のための制御など、その制御内容は年々複雑化しています。そして近年、環境保全に対応した制御など、制御内容は益々複雑化する傾向にあります。このため、より高速な動作での高度で高精度な制御の実現と制御プログラムの大容量化に対応できることが求められるとともに、制御用プログラムや機器制御データの変更をオンボードで行なってシステムの開発期間短縮を図れるマイコンへの強いニーズがあります。
当社は、これまで、エンジン制御などの分野向けに、SuperHファミリの機器制御向けCPUコアである「SH-2」を搭載した、40MHz動作で512Kバイトのフラッシュメモリ内蔵の「SH7055F」を量産しています。そして今回、さらなる高速動作と大容量プログラム対応の市場ニーズに対応するため、業界最高速の80MHz動作を実現し、業界最大クラスの容量である1Mバイトのフラッシュメモリを内蔵した「SH7058F」を製品化しました。
本製品は、0.18μmのCMOSプロセスを採用し、従来品と同様に「SH-2」CPUコアを搭載しています。主な特長は以下のとおりです。
<特長> |
1. 80MHzの高速動作による104MIPSの高処理性能と、1サイクルでアクセス可能な1Mバイトの大容量フラッシュメモリの内蔵により、高精度で高度な制御システムを実現可能
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最高動作周波数は、従来品「SH7055F」の2倍である業界最高速の80MHzで、104MIPSの高処理性能を実現。また、内蔵している業界最大クラスの1Mバイト大容量フラッシュメモリは、80MHzでの1サイクルアクセス動作が可能であり、処理の高速化に貢献。-40℃から125℃の広い温度範囲において動作し、エンジン近傍への制御機器の設置等、LSIの厳しい使用環境に対応可能。
さらに、フラッシュメモリへの書き込み/消去プログラムを内蔵しているため、従来ユーザが用意していた書き込み/消去プログラムが不要。そのうえ、フラッシュメモリのモードとして、従来の書き込み/消去モードに加え、ユーザブートモードを追加。本モードは、ユーザが、機器の電源投入後のブート動作プログラムを書き込むことができるもので、ユーザ独自のブート動作を実現する事が可能。高速動作、大容量のフラッシュメモリと新規モードにより、高性能で高度な機器を実現可能。
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2. 新規の「発振停止検出機能」により、システムの信頼性向上が可能 |
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従来製品に対し、本製品では新たに「発振停止検出機能」を追加。本機能は、システムでの必要性に応じてイネーブル/ディスエーブルを設定でき、イネーブル時には、LSIの発振停止や異常を検出時に自動的に自己発振を開始。例えば、外付けの発振子が外れるなどで発振停止や異常が発生した際に、異常を検知した後、システムを正規の手順で停止する等の処理を実行でき、システムの信頼性向上を図る事が可能。
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3. 多彩な周辺機能により高機能機器を実現可能 |
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本製品は、豊富な周辺機能を搭載。10本のフリーランニングカウンタ、16本のダウンカウンタと8本のPWM(Pulse Width Modulation)カウンタ等から構成されるアドバンストタイマユニット-II(ATU-II)、インターバルタイマにも使用可能なウォッチドッグタイマを1チャネル、コンペアマッチタイマを2チャネル内蔵。また、A/D変換器は、分解能10ビットで変換精度±2LSBを実現しており、入力数として32チャネルを実装しているため、センサ情報など多数のアナログ信号処理が可能。さらに、コンペアマッチをトリガとして、任意のタイミングで変換を開始するマルチトリガA/D機能を追加。これにより、より精密なタイミングで、効率よくセンサ情報を取得可能。
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4. 車載LANのCANに対応していることで、高速、高信頼性の通信が可能 |
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車載LANでは標準といえるCAN(注3)に対応したHCAN-II(注4)を2チャネル内蔵。各チャネルは、32メッセージバッファ(受信専用1本、送信/受信設定可能31本)が使用可能であり、さらに、独立した16ビットタイマを使用することで、タイムトリガ送信機能を利用でき、高速で信頼性の高い通信が可能。 |
パッケージは、256ピンQFPを採用しています。また、従来品の「SH7055F」と上位互換であり、プログラムの流用が容易です。さらに、本製品はオンチップデバッグ機能を塔載しており、開発環境は「SH7055F」と同様、オンチップデバッガ対応の小型エミュレータ「E10A」や高機能な「E6000」エミュレータを使用できます。
今後、エンジン制御を始めとする車載機器や産業機器向けに、さらなる高性能製品のラインアップを拡大していきます。
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(注1) |
SuperHTMは、(株)日立製作所の商標です。 |
(注2) |
F-ZTATTM(Flexible Zero Turn Around Time)は、(株)日立製作所の商標です。 |
(注3) |
CAN:Controller Area Networkの略で、独 Robert Bosch GmbHが提唱している車載用のネットワーク仕様。
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(注4) |
HCAN-II:Hitachi Controller Area Networkの略で、Bosch CAN Ver.2.0B activeに準拠
したFULL CAN対応/32メッセージバッファ。
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■応用機器例
●自動車の制御機器:エンジン制御、AT制御、サスペンション制御
●産業機器:FA、シーケンサ、NC
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製 品 名 |
パッケージ |
1,000個ロット時の価格(円/個) |
SH7058F (HD64F7058F80) |
QFP 256ピン |
6,000 |
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■仕 様
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