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2002年8月20日

永久磁石同期モータの「レス&レス」ベクトル制御技術を開発  

−磁極位置センサとモータ電流センサを省略し、コストアップを抑えた高効率・低騒音モータを実現−


 日立製作所 日立研究所(所長:児玉英世)は、このたび磁極位置センサとモータ電流センサを使用せずに、永久磁石同期モータを正弦波電流で駆動できる「レス&レス」ベクトル制御技術を開発しました。永久磁石同期モータを正弦波電流で駆動することで、モータ効率の改善や騒音の低減が可能となります。今回開発した技術を利用することで、高価なセンサ類が不要となるため、コストアップを抑えながら、高性能な永久磁石同期モータ駆動装置を作ることが可能となります。

 永久磁石同期モータは、少ない電流で大きなトルクが得られる省エネ型の高効率モータです。省エネが求められる今日の環境において、永久磁石同期モータの市場は拡大し、その利用方法もエアコンだけではなく、冷蔵庫や洗濯機といった家電品や、一般産業用(ポンプ、ファン等)にも適用されるようになりました。

 これまで永久磁石同期モータの駆動方式として、電流の通電する相を60度毎(電気角360度に対して60度毎)に切替える矩形波駆動方式が採用されてきました。この方式は、簡便にモータの可変速駆動が実現できるため、標準的な永久磁石同期モータの駆動方式として広く用いられています。しかし、60度単位で通電相を切替える際に発生するトルクリプルが騒音発生の原因となっているため、モータ電流を トルクリプルが発生せず、かつ回転効率が向上する連続的な正弦波にすることが求められていました。

 永久磁石同期モータを駆動するには、モータの回転子の位置情報を検出する必要があります。矩形波駆動方式では、モータ電流が断続して切り替わるため、電流が通電していない期間を利用してモータの誘起電圧*1を検出し、回転子の位置情報を得ています。しかし、正弦波電流で駆動する場合、モータには連続した電流が流れるため、モータの誘起電圧を直接観測することができません。その解決策として、モータ電流をセンサによって検出し、さらに制御装置内部で誘起電圧を推定演算*2して回転子の位置情報を得る位置センサレス方式が提案され、すでに一部では製品化されています。しかし、モータ電流センサは高価であることから、本格的な普及にはモータ電流センサを必要としないモータ制御技術の開発が急務となっていました。

 当社では、広く高効率モータを普及させるため、これまで上記課題を解決できる新しい制御技術の開発を進めてきました。そして、今回開発したソフトウエア処理、位置推定技術およびスマートベクトル制御技術によって位置センサもモータ電流センサも使用しない(「レス&レス」)新しい永久磁石同期モータの駆動方式の開発に成功しました。

 今回の開発技術は、大きく分けて次の3つの要素技術から成り立っています。
(1)

インバータの入力直流電流から、三相のモータ電流を再現するモータ電流センサレス技術 
 インバータ装置には、一般に過電流保護を目的として、インバータの入力直流電流を検出しています。この直流電流には、三相のモータへの印加電圧のうち、中間相のインバータスイッチングタイミングの前後にて、最大相と最小相の電流が時分割で流れています。このタイミングに合わせてA/D変換器を短い間隔で連続して2回起動し、直流電流をマイクロコンピュータもしくはDSP*3に取り込みます。得られた直流電流情報から、ソフトウエア処理にて三相分のモータ電流情報を抽出し、モータ電流センサレスを実現します。
 最大相と中間相もしくは中間相と最小相の2つ電圧差が小さいと,直流電流に流れている間隔も短くなるため、検出できない位相が存在します。これを過去に検出した電流情報を利用して再生する手法を開発し解決しました。

(2)

上記のモータ電流情報とモータ定数から、回転子位置を推定する位置センサレス技術  

 回転子の実位置と、制御系で作った任意の仮想位置との誤差を、永久磁石同期モータの数学モデルに基づき、モータへの印加電圧とモータ電流から、演算で直接求める位置推定技術です。
 上記の位置誤差が0となるようにインバータ出力周波数を調整して、制御系の仮想位置を回転子の実位置と一致させて、位置センサレスを実現します。

(3)

ベクトル制御技術*4を、家電・産業用途向けに大幅にアレンジしたスマートベクトル制御技術 
 サーボモータ向けに使用されてきたベクトル制御技術は、速度を指令速度に一致させるための速度制御系と、電流を指令電流に一致させるため電流制御系を備えており、6箇所以上の調整箇所があり、汎用性に問題がありました。
 今回開発したスマートベクトル制御は、例えば、負荷が増えると速度が低下して電流が増加するといったモータそのものの特性を利用した制御方法です。永久磁石同期モータの数学モデルに、指令速度と、モータ電流から演算したトルク比例成分の電流を代入することにより、モータへの印加電圧を決定します。これにより、速度制御系や電流制御系を省略して制御構成を簡素化し、調整箇所を2箇所にして汎用性を改善しました。
 この結果、直流電流からの再現したモータ電流情報を用いても、簡単にベクトル制御が実現でき、更に5万回転以上の高速駆動が可能になりました。

 

 今回開発したこれらの技術により、位置センサとモータ電流センサが不要となり、コストアップを抑えながら、高効率・低騒音な永久磁石同期モータが実現できるようになります。当社では、今後も更なる改良を重ね、白物家電をはじめとした各種製品への適用を目指していきます。

 なお、本技術は8月21日から鹿児島大学で開催される、電気学会産業応用部門大会で発表する予定です。


■用語説明

*1

誘起電圧は、回転子(永久磁石)が回転することで固定子巻線に発生する誘導電圧であり、この電圧の位相情報から、回転子位置を間接的に捕えることができます。

*2

誘起電圧の推定演算には、永久磁石同期モータの数学モデルを用いた高度な制御技術が使われています。近年のマイクロコンピュータやDSPの高性能化・低価格化に伴い、このような複雑な制御処理も実現できるレベルになっています。

*3

DSP:ディジタル・シグナル・プロセッサー。携帯電話などに使用されている高速信号処理器です。モータ制御用DSPも各社から発売されています。

*4

ベクトル制御:永久磁石同期モータ等の交流モータを、理想的に駆動する制御技術であり、応答性や効率の面で優れています。モータトルクは、電流と磁束の積で出力されます。モータ電流には、トルクに比例するトルク電流と、磁束を作る励磁電流の2つの要素があります。これらの各要素の電流を個々に調整して独立に制御する方法です。



以上



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