機械製造業A社(テーマ2) 役職:設計部門 部長
「設計者一人ひとりに有能なアシスタントを配置」を仕組み化
設計業務を常に情報でサポートし、品質の向上だけでなく納期も短縮
T氏は、設計環境統合基盤を手掛けた日立に相談する。そして数日後、日立から提案があったのが、「設計業務ナビゲーション」と「気付き支援CADシステム」から構成されるミスの発生をITで未然に防ぐシステムだ。
日立においても設計不良の根絶は永遠の課題であり、長年にわたり日立の設計部門はミスを防ぐ仕組みを磨き続けてきた。その結晶が、このシステムなのだ。一言で表現すると「設計者一人ひとりに有能なアシスタントを配置」するシステムだという。T氏はこのシステムの導入を決定した。
設計者一人ひとりに有能なアシスタントを配置するとはどういうことか。
設計者はまず「設計業務ナビゲーション」で、正しい設計手順に従い今から行う業務を選択する。するとその業務に関する参考文献や過去の設計情報など、社内に蓄積された情報から適切なものが自動で画面に表示されるのだ。この有益情報の提供によって、まず設計不良を出さない土壌を作る。
さらに設計作業を進めていくと「気付き支援CADシステム」が部位ごとに設計ルールをガイダンス。もし設計不良を検知したら、ハイライト表示してくれる。リアルタイムの指示により設計不良の芽を摘み取るのだ。
このように、あたかも設計者一人ひとりに有能なアシスタントが寄り添っているかのように、適切な情報をタイムリーに提供することによって設計不良が製造工程に流れることを食い止める。
この「設計業務ナビゲーション」と「気付き支援CADシステム」は、設計環境統合基盤 に集約され、本社、拠点、サプライヤー、すべての設計者が共有する。
「経験が浅い設計者とベテランとの設計品質の差が縮まり、設計不良を大きく低減できました。またこの仕組みによって、設計リードタイムも短縮できたんです」とT氏は語る。
これまで経験の少ない設計者ほど、多くの時間を参考資料の検索や、不明点を熟練者に聞いたりすることに費やしてきたが、その時間をギュッと圧縮できたのだ。
また、設計業務の中でルール違反を摘み取れるので、その後の検査業務を圧縮でき、これもリードタイム短縮につながった。
「これからは『考える』という本質的に価値がある行為にもっと多くの時間を割くことができます。弊社の設計の品質はこれからさらに上がるでしょう」とT氏は語った。