ページの本文へ

Hitachi

意思決定デザインと最適化のパワーが導くビジネス変革(第5回)

平井 伸幸

株式会社 日立コンサルティング マネージャー

みなさんこんにちは、日立コンサルティングの平井です。

以前のコラムでは羊飼いのアナロジーを用い、意思決定デザインと意思決定デザインフレームワーク(FW)で可視化したイシューを数理モデルに変換する方法について、ビジュアルイメージを交えて解説しました。

今回はシフト計画を例に、現実のイシューを数理モデルに変換する方法について解説したいと思います。

シフト計画の意思決定デザインFW

コンビニのアルバイトなど、シフト制の業務に従事した経験のある方ならばシフト計画のイメージは想像しやすいと思います。ここでは1か月(30日間)の基本的なシフト計画を基に解説を進めたいと思います。シフト計画のイシューについては図5-1をご参照ください。

シフト計画の意思決定デザインFW
図5-1

シフト計画に関する要件を意思決定デザインFWで整理した結果は図5-2のようになります。実際には職場ごとに固有の要件が存在しますが、今回はシフト計画の基本的な要件に絞って記載しています。

アクション(決定変数):

「Who:誰を」「When:どの日に」配置するか

価値(目的関数):

従業員の希望休暇取得率↑

など

ルール・前提条件(制約):

  • 各日に必要な人数を配置する
  • X連勤禁止

など

参照情報・データ(インプットデータ):

  • 従業員のリスト
  • 従業員ごとの休暇希望日
  • 1日あたりの必要人数

など

シフト計画の意思決定デザインFW
図5-2

また、イシューのアクションに注目したモデルのイメージは図5-3のようになります。シフト計画は「Who:誰を」「When:どのシフトに」配置するかの2軸のアクションなので、方眼紙状のモデルイメージになります。

シフト計画の意思決定デザインFW
図5-3

次からはモデルイメージを基に、シフト計画をモデル化していきたいと思います。

参照情報をキーとバリューで表現する

参照情報は先述の「従業員のリスト」「従業員ごとの休暇希望日」「1日あたりの必要人数」になりますが、今回は5人の従業員に対し6月のシフト計画を組むと仮定します。参照情報を前回のコラムと同様にキーとバリューで表現すると、図5-4のようになります。

参照情報をキーとバリューで表現する
図5-4

3つのうち従業員リストだけはキーのみのデータとなり、このリストを使って各従業員の休暇希望日を呼び出すことになります。

ルールと価値の定式化

参照情報を定義できたところでルールと価値の定式化に移りたいと思います。

今回決定すべきアクション(決定変数)は「Who:誰を」「When:どのシフト(日)に」配置するか、なので、
配置する/しない従業員, 6月XX日
となります。

この決定変数を基にルール・前提条件(制約)を定式化します。

ルール1:各日に必要な人数を配置する

このルールの定式のイメージは図5-5aのようになります。

ルールと価値の定式化
図5-5a

6月1日(1日目)を例にとると、必要人数(右辺)は4人なので右辺には4が入ります。一方左辺はAさんからEさんまでの5人について配置する/しないの決定変数が配置されています。決定変数はする場合を1、しない場合を0として表現することは前回のコラムで説明済みですので、5人のうち4人を配置すれば定式が成り立つことが分かると思います。6月3日の場合は右辺の値が3になるので、5人の内3人を配置しなければなりません。

ルール2:X連勤禁止

このルールの定式のイメージは図5-5bのようになります。

ルールと価値の定式化
図5-5b

各従業員に対し7日以上の連勤を禁止する場合、7日目となる6月7日は、左辺に6日前から当日までの7日間に配置する/しないの合計を、右辺に連勤上限日数となる6の値を置きます。例えばAさんが7連勤すると左辺の値が7となり不等号が成立せず、制約を破ることになります。定式を成立させようとすると、7日間連続で見たときに左辺の値を6以下に抑えることで必ず1日以上配置しない日(休日)を設定しなければならず、それによって7連勤を防止することができるのです。

価値:従業員の希望休暇取得数↑

休暇希望日は従業員によって異なるので、希望休暇取得数をカウントするためには各従業員の休暇希望日を見たときに勤務があるかどうかを確認することになります。それを表したのが図5-6になります。

ルールと価値の定式化
図5-6

ここで希望休暇取得数を最大化したいにもかかわらず決定変数の合計値を最小化しているのは、「休暇希望日に休暇を取れている」という状態を「休暇希望日に勤務がない(配置されていない)」という形で表現しているためです。このような表現を行うことで、合計値が0に近づくほど休暇希望日に休暇を取れているということになり、決定変数の合計値を最小化することで希望休暇取得数を最大化できるのです。

結び

今回はシフト計画を例に、意思決定デザインFWを使ったビジネスイシューの可視化から数理モデルに変換する方法について解説しました。

次回はまた別のイシューを題材にイシューの可視化、数理モデルへ変換する方法について解説したいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました、またお会いしましょう。

計画最適化ソリューションに関するお問い合わせ