「逸脱作業検知による品質向上」は、製造ライン作業者の作業を常時確認し、逸脱動作を検知し、監督者に通知するシステムだ。大手化学品メーカーであるダイセルとの協創により開発した。
多数のラインで標準作業の動作が順守されていることを確認したり、標準作業時間と実作業時間を比較・管理したりするなど現場監督の負担は大きい。また、定期検査、抜き取り検査だけでは代表点の品質管理のため、不具合発生時、異常品の影響の有無や影響範囲の絞り込みが難しく、製品を廃棄する際の損失が大きくなるケースもみられる。
同システムはカメラにより収集された画像解析を用い、作業者の骨格情報(手やひじ、肩などの関節位置また腰の位置などの情報)と標準的な作業動作をリアルタイムに比較することで、逸脱動作の解析につなげられる。本来の動作から外れた場合には、モニター画面および監督者のウェアラブル端末にアラート情報を通知する。実作業の動作と標準動作との比較は統計的に判断するが、さまざまな作業者の動作画像を読み込み、標準動作モデルと逸脱判定の閾値を設定してディープラーニングで精度を向上させることも可能だ。また、作業者の画像とMESの工程・タイムスタンプ情報を統合することで、不具合発生時の逸脱動作による影響の確認、影響範囲の絞込みができる。
荒木氏は「現在もディープラーニングの技術を使って、さまざまなユースケースに対応した画像の仕組みの作成を進めています。例えば、生産ラインへの作業員の出入りを確認したり、通常の作業時間と比較したりなどがあります」と述べる。同システムはダイセルで稼働しているが、日立では他の顧客企業に向けてこうしたディープラーニング技術を生かし、画像で生産性の解析、品質の分析ができることを提案している。
「製造ダッシュボード」は、IoTを活用し、経営情報から製造現場の状況までのKPI(重要業績評価指標)を一元的に見える化するシステムだ。成熟度モデルのレベル2で最大の課題となる製造現場の4Mデータを最大限活用するため、職務階層ごとに表現できる。また、経営改善や生産性向上を図るための意思決定を行うに当たって有用な各種KPIを時系列にグラフ表示できる。
具体的には、経営者層向けには事業・工場ごとの売上高や利益率、キャッシュフロー、可動率など、工場管理者層向けには担当工場のラインごとの生産量や可動率、他工場の情報など、ライン監督者層向けには担当ラインごとのサイクルタイムや設備稼働状況、他ラインの情報などがKPIとなる。それぞれの階層において全体最適化の観点で状況の把握から課題抽出、評価分析、改善までのサイクルの迅速化が図れる。
さらに、グローバル拠点の製造現場情報(製造実績、作業映像など)を統合し、ビッグデータ解析技術を活用して不良発生時の原因分析や改善施策提案を行い、各製造現場にフィードバックすることで、グローバルでの製品品質向上にも貢献する。現在は個別の顧客ニーズに合せた仕様を作り込んでいるが、今後はさまざまなユースケースにも対応していく計画である。将来的にはパッケージ販売やクラウドによる提供も検討している。
これらソリューションの導入によって顧客の成熟度モデルのレベルを高め、さらなるレベルアップを進めて行く上で有効なMES「FactRiSM(ファクトリズム)」を日立ではラインナップしている。
同社は、自動車業界向けの「NXAUTO(*)」、医薬業界向けの「HITPHAMS」、食品業界向けの「ProductNEO(*)」、ガス・化学業界向けの「HIDIC-AZ」など各業界向けのMESで多くの導入実績を有している。これらMESの知見を基に、組み立て製造業向けに開発されたFactRiSMは、マスカスタマイゼーションなどの多品種・変量型生産に対し、4Mデータ活用とIoTソリューション連携による高度生産最適化を支援する。同システムにより標準化されたMES用データモデルを基に、トレーサビリティーや工程管理、ISO 22400に基づくKPIなどの見える化を実現する。紙帳票しかデータがない現場からスマートな次世代ファクトリーへ飛躍する後押しが可能となり、企業のモノづくりをリズム・テンポよく加速させる機能が実装されている。
(*)「NXAUTO」および「ProductNEO」は株式会社 日立産業制御ソリューションズの登録商標です。
中村氏は「FactRiSMは、組み立て製造業向けの中核的なプラットフォームの位置付けになります。ここに4Mデータを集約することで、シミュレーションや新しい生産計画の組み方など、さまざまなデジタル活用を発展させていくための受け皿になり、さらなる広がりが期待できます」と述べている。
アイティメディア営業企画/制作:TechFactory 編集部/掲載日:2020年1月17日