IoTやAIなどデジタル技術の波によって世の中がさまざまに変化する中で、製造業も大きな変革の時を迎えている。経営と工場の全体最適を実現するスマートな次世代ファクトリーをめざす動きも本格化しているが、そこで必要なのは自社がどのような状態にあるかを知る羅針盤と、そこからステップアップするための適切なソリューションだ。
日立製作所の成熟度モデルでは、工場管理システムの高度化に向けたステップとなる成熟度を1〜6のレベルに分けている。
レベル1の「見える」は、製造現場のリソースや生産実績などのデータをデジタル化して見える化し、それらの収集を自動化、高度化する段階になる。レベル2の「繋げる」は、それらの収集したデータを使いこなした上で、製造現場のデータを管理部門や前後の工程など他の部門につなげる段階だ。そして、レベル3の「流れを制御する」は、レベル2まで収集可能となった4M(Man(人)、Machine(設備)、Material(材料)、Method(方法))データを分析、活用し、より良い運用に向けた制御まで展開する段階となる。レベル4の「問題を把握・対策する」は精度の高いデータを活用して現場での根本原因を素早く把握できる。その対策を実行できる管理モデルを実現することで、生産管理の適正化を図り、短サイクルで高度な生産管理を実現できる段階となる。この段階で多くの企業が求めるIoT化の成果はある程度達成できると考えている。また、現場データを活用したPDCAも実現可能というわけだ。レベル5の「将来を予見する」は、精度の高いデータを活用する事で生産計画を高度化し、レベル6の「連携と協調」でSCM(サプライチェーンマネジメント)の最適化につなげていく。
日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 スマートインダストリー開発部 部長の中村和也氏
このような成熟度レベルを基にして、モノづくり現場の状態(レベル)を把握しておかなければスマートな次世代ファクトリーの実現は困難だ。日立製作所 社会イノベーション事業推進本部スマートインダストリー開発部 部長の中村和也氏は「われわれがめざしているのは、顧客の適正な生産管理の運用や工場そのものの効率化ですが、そのためにはまず現場の状況を把握することが必要です。現場を見える化し、そのデータを基に情報分析が行え、生産管理を適正化し、それを実行できる運用ができて、はじめて高度化が可能になります。製造現場と管理が合わない運用は、どんなシステムを入れても問題を拡大させているだけの可能性があります」と説明する。
日立は、こうした各企業の現状を判断するために、IoTの活用レベルやモノの仕掛り状況、人・設備の生産性などについて、今あるデータだけで簡易に分析・診断するサービスを用意している。一般的に約1カ月で完了するこの診断結果を基に、成熟度モデルのマイルストーンを作り上げていき、適切な施策を提案できるようにしているのだ。
製造業の多くがスマート化に取り組んではいるものの、現時点ではまだ成熟度モデルのレベル1〜2の段階にある場合がほとんどだ。そこで日立では、簡易分析で顧客の現状を把握した後で、目的に合わせてより導入しやすいシステムをソリューションとして用意している。代表的なものとしては、「オンデマンド構内物流ソリューション」「作業・品質管理支援ソリューション」「逸脱作業検知による品質向上」「製造ダッシュボード」などがある。