日立独自の計算技術CMOSアニーリングを活用した「勤務シフト最適化ソリューション」
ニューノーマル(新常態)な働き方への注目が集まるなか、密を避けた交代制シフト勤務や非対面業務など、多様な勤務形態を取り入れる企業が増えています。そこで日立は、独自の計算技術「CMOSアニーリング」を活用し、これまで膨大な工数がかかっていた勤務シフトの作成をすばやく自動化できる「勤務シフト最適化ソリューション」を開発。複雑な勤務条件に対応した適切な人員配置で、人員コストの適正化とサービス品質の向上を実現します。
サービスセンターやコールセンターといったシフト制を導入する職場では、過去の繁忙期の傾向や、個人およびチームのスキル・希望など、細かな制約を考慮してシフトを作る必要があるため、大規模になるほどシフト作成に膨大な工数と時間を要します。
また、複雑な条件をすべて満たすシフトを人手で作成することには限界があり、勤務者の希望や状況を柔軟に反映できなかったり、対応人数に過不足が発生したりするといった問題も起こりやすくなります。さらにコロナ禍(か)では、密を避けた交代制シフト勤務を取り入れる企業が増え、さまざまな業種で適正な人員配置への必要性が高まっています。
そこで日立は、量子コンピュータの技術を応用した、大規模で複雑な「組み合わせ最適化問題」を高速に解くことができる独自技術「CMOSアニーリング」を活用し、時間ごとの必要人数や個人のスキル、休暇希望、勤務頻度、通勤時間などの複雑な条件に対応した勤務シフトをスピーディーに作成する「勤務シフト最適化ソリューション」を提供します。
本ソリューションは、日立が持つ多岐にわたる分野の業務ノウハウと、「組み合わせ最適化問題」を解く高度な技術やスキルを組み合わせて提供するもので、導入にあたってはお客さま課題の明確化と、課題に合わせた実装やカスタマイズなどにも柔軟に対応します。
本ソリューションで勤務シフトを作成することで、従来のシフトでは過剰に割り当てられていた人員が適正化され、コスト削減に貢献します。また、人員が不足していた時間帯に適正な人員が割り当てられることで各勤務者の負担が軽減。サービスレベルの向上にもつながります。導入にあたっては、職場ごとの制約・条件をもとに適正な要員配置を実現する個別のアルゴリズムを日立が作成。過去の対応実績をもとに、将来の業務量とそれに応じた必要人員を予測するサービスの追加も可能です。
Webブラウザ上で必要項目(日付・時間/必要人数/勤務者の遅番・早番・有給休暇など)を入力するだけでシフト作成が行えます。シフト作成後に休暇希望などの条件変更が発生した場合にもスピーディーに再作成が可能です。また、「指導員と研修員は同時に出勤しなければいけない」「すべての時間帯に特定のスキルを持つ勤務者が1名以上いなければいけない」「連勤は最長3日間まで」といった詳細な制約条件のカスタマイズにも対応します。
今回のソリューションの提供に先立ち、高速シフト作成の実証を社内外で進めています。日立では緊急事態宣言下の2020年5月から、東京・国分寺にある中央研究所の約360名の研究者を対象に、CMOSアニーリングによって作成したシフト出社制を導入しました。研究活動は特別な設備を使って行う必要があるため、出社時間帯を4シフト制とし、所属チームや研究内容、実験の進捗(しんちょく)、実験設備の使用状況、希望出社頻度、通勤時間など条件を細かく設定することで、数百人規模の「3密」回避のシフトを作成。感染リスクを最小限に抑えながら、円滑に研究活動を継続することに成功しました。
また、2020年7月〜10月に株式会社日立システムズの為替業務に関するBPOサービスを活用した実証実験では、勤務シフトの時間の割り振りが適正化されたことにより、人手で作成した従来の勤務シフトと比較して全体で255時間が削減できました。これにより、勤務者1人当たり1.6日増の休日取得を実現でき、勤務シフトの適正化が勤務者の負担軽減につながりました。
「勤務シフト最適化ソリューション」の画面イメージ
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今後のニューノーマルな社会では、在宅勤務と出社双方の良さを生かしたフレキシブルな働き方にシフトしていくことが予想されます。日立は勤務シフト最適化ソリューションを、デジタルイノベーションを加速する日立のLumada*ソリューションのひとつとして、多岐にわたる業種業態に展開し、企業のワークライフバランスをはじめとする柔軟な働き方への対応を支援していきます。
また、金融商品のポートフォリオ作成や、物流倉庫におけるピッキング作業の高度化など、「組み合わせ最適化問題」を利用できる、さまざまな業務での活用を推進します。さらに交通・医療・通信など多様な業種の課題解決をめざし、CMOSアニーリングを適用した各種ソリューションの開発にも取り組んでいきます。
本ソリューションの中核技術となるCMOSアニーリングは、2015年に日立の研究所が開発したもので、「組み合わせ最適化問題」と呼ばれる極めて複雑で大規模な計算課題を量子コンピュータに匹敵する性能により、短時間で解くことができる技術です。量子コンピュータで必要な冷却装置などが不要で、電力消費量の低減と大規模化への対応が容易であることが大きな特長です。
(株)日立製作所 金融システム営業統括本部
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