注目ユースケース
Lumadaのユースケースコード:UC-01942S
〜新商品の開発にかかる時間とコストをAIで削減「Chemicals Informatics®」〜
2022年11月11日
ものづくりの現場では、商品の性能向上や環境への配慮といったさまざまな課題を解決するために、材料の改良、新規開発に取り組んでいます。今回は、化合物に関する膨大な情報をデータベース化し、人手では確認できない領域まで網羅的に探索することで、目的の特性をもった未知の化合物を発見するユースケースを紹介します。
膨大なデータをもとにした網羅的かつスピーディーな化合物選定により、各企業に先駆けて自然に還る素材を開発したり、それを利用した商品を製造・販売できると、その分野でのシェアを獲得できます。環境に配慮した点を評価されるだけでなく、市場価値が認められ、売上高の増加に結びつきます。
Lumadaで協創!公開済みのデータを独自のAIで分析
現状の材料研究開発では、新たな化合物を発見し、商品化に至るまでに10年単位の歳月を要するといわれています。
ものづくりの現場では、長年にわたり商品の性能向上をめざしてよりよい材料の開発が進められています。SDGsが採択された2015年以降は、カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)の実現に向けて、環境への配慮を強く意識することが求められています。
実用に耐えつつ、自然に還りやすい商品を作るためには、既存の材料の実用性を高める化合物や新しい材料を作るための新たな化合物の組み合わせを探索する必要があります。このとき、研究者の知識や経験、勘に頼っているのが現状です。
化合物を選定したら、合成・評価を実施。これを、よい評価結果が出るまで繰り返します。よい評価結果を得られた場合は、他社権利の侵害を未然に防ぐためのチェックに進みますが、ここで権利侵害と判断されると、化合物の選定からやり直さなければなりません。手戻りを繰り返すことが多いため、材料の研究開発には長い時間とコストがかかります。
近年、材料開発の分野では、 AIやビッグデータを活用して研究開発を効率化する「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」が注目されています。
研究開発の上流工程である化合物の選定に、MIの手法を取り入れた日立のソリューション「Chemicals Informatics®(CI)」を採用すると、過去の実験や論文、特許のデータに基づく探索ができます。選定された化合物に対してだけ合成・評価を実施するため、研究開発の期間短縮およびコスト削減につながります。
たとえば、生分解性プラスチック*の場合、今は生鮮食品のトレーやインスタント食品の容器など、再利用しないものへの利用にとどまっていますが、CIによる研究開発で強度と生分解性能を両立できる材料が見つけられれば、近い将来、耐久性が必要な商品を低コストで作れるようになります。実用性と環境への配慮を兼ね備えた生分解性プラスチック商品が普及すると、プラスチックの再利用が進んでゴミを削減できたり、プラスチックの原料である石油資源の消費を抑えることができます。また、ポイ捨てなどで回収されなかったとしても、微生物の働きによって分解されるため、環境への悪影響を抑えられます。
「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」とは統計分析などを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法を用いて、材料開発を高効率化する取り組みです。
これまでの材料開発では、研究者が知識や勘に基づいて化合物を選定・設計し、合成を繰り返して特性を評価してきました。ときには、偶然が重なって産み出された材料もあります。
MIを取り入れ、研究者をデータで支えることにより、次の効果が見込めます。
コンピューター性能の向上やAI技術の発展により、材料の合成によって得られる特性を高精度に予測。実験の成功率が向上することで、実験の回数を削減できます。実験材料の廃棄量が減ることにより、資源の保護、環境に与える悪影響の抑制といった効果も期待できることから、近年、材料工学での応用が広がりつつあります。
化学分野の新製品開発サイクルを加速
化学業界では、開発競争の激化や技術の進化にともなって、企業は付加価値の高い製品をいち早く市場に投入すること、その分野で高いシェアを獲得することが求められています。
材料の研究開発に「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」を取り入れるためには、化合物を探索するためのデータを、豊富に、かつAIで解析できる形式で準備する必要があります。
日立の「Chemicals Informatics®(CI)」は、特許や論文などの公開データを利用します。独自の「NLP(自然言語処理) AI」が膨大、かつ専門的な内容の公開データを読み、「探索AI」による探索に適したデータに整形して「化合物データベース」に蓄積。これにより、ユーザーはデータを準備することなく、CI導入後すぐにMIの手法で化合物を探索、選定できます。
「化合物データベース」には、独自プログラムの「新規化合物生成AI」が生成した新規構造の化合物の情報も保存されています。「探索AI」で探索した結果に新規構造の化合物が含まれることで、有望な化合物を見つけ出す可能性が高まります。
CIは、良特性で、特許が出願されていない組み合わせを狙った戦略的な研究開発を支援。網羅的で、手戻りが少なく、さらに企画から市場投入までにかかる時間の短縮が図れます。
これまでの材料開発では、ユーザーが指定した化合物周辺の、既知の化合物を対象に探索。このため、発見できる化合物は、従来の発想の延長線上にあるものでした。
CIでは1億を超える化合物の構造や元素組成などを解析し、111次元空間*1にマッピング。膨大な候補の中から、独自の掛け合わせ探索手法で、単一化合物および複合材を網羅的かつ高速に探索します。未知の領域も含めた探索により、いままでの発想にとらわれない、新たな領域の有望化合物を発見できます。さらに61の特性*2において、発見した化合物の予測特性値とその根拠となった特許・論文情報を参照できます。
生分解性プラスチックの強度を高め、より自然環境で分解されやすくする新しい添加剤を、CIを活用して効率的かつ網羅的に探索した事例を紹介します。本事例は株式会社 日立製作所、株式会社 日立ハイテクおよび株式会社 日立ハイテクソリューションズの共同研究によるもので、次の結果が得られました。
資源の枯渇、環境破壊といった社会問題を解決するために、地球にやさしい材料が必要とされています。CIは、「化合物データベース」に蓄積している豊富なデータで、プラスチックだけでなく電子部品やバッテリー、光学系素材といったさまざまな分野の材料開発を支援。環境への配慮と商品の性能向上を両立する材料の開発に貢献します。
できるだけ新しい情報で化合物を探索できるよう、「化合物データベース」は、約半年に1回のペースでアップデートし、特許情報などの公開データを拡張しています。また、2022年8月時点で用意している特性は61種類、分野は119種類ですが、お客さまからのご要望への対応を含めて、随時追加しています。今後も、幅広い用途でのご利用をめざし、さらなる拡充を進めていきます。
ソリューションの詳細については、こちらをご覧ください。
CI活用に関する研究への評価については、こちらをご覧ください。
膨大なデータをもとにした網羅的かつスピーディーな化合物選定により、各企業に先駆けて自然に還る素材を開発したり、それを利用した商品を製造・販売できると、その分野でのシェアを獲得できます。環境に配慮した点を評価されるだけでなく、市場価値が認められ、売上高の増加に結びつきます。
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