ページの本文へ

Hitachi

LDSLが実現する、
社会課題への取り組み

2023-03-31

写真 写真

写真 写真

四ッ谷 雅輝

株式会社日立製作所 Lumada Data Science Lab.

担当部長

株式会社日立製作所が2020年4月に設立した「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)に集う一人ひとりに光をあてるインタビューシリーズ。今回話を聞いたのはLDSLの四ッ谷雅輝です。お客さまの経営課題の解決に取り組み続けている四ッ谷に、LDSLがめざす社会課題の解決について話を聞きました。

これまでのご経歴を教えてください。

2003年に日立製作所へ入社し、最初の5年間ほどはR&D部門でデータベースや検索エンジンといったミドルウェアの開発を担当していました。その後ソリューションやサービスの検討業務を経て、2012年にデータ利活用のコンサルティングサービス「データ・アナリティクス・マイスターサービス」に立ち上げから参加しました。データ・アナリティクス・マイスターサービスは、お客さまの経営課題や業務課題に対する解決策を、データサイエンスを通じて見出すサービスです。当時の日立はお客さまのIT部門とつながりが強い傾向がありましたが、データ・アナリティクス・マイスターサービスは経営層や業務部門へアプローチし、上流からビジネスを仕掛ける狙いがありました。

サービス立ち上げ当初はビッグデータが重要なキーワードでしたが、その後は新たに台頭してきたAIやDXといったキーワードにお客さまの関心事も遷移してきたと感じています。お客さまは公共機関や金融、小売業など多岐にわたり、この10年ほどの間で100社前後にご提案をしています。一度ご契約いただいたお客さまからは、繰り返しご契約をいただく傾向が強いということも、このサービスの特徴の一つと思っています。

写真 写真

データ・アナリティクス・マイスターサービスで取り組んだビジネスの事例を教えてください。

保険会社様と日立で手掛けた「がんデータマネージドサービス」に構想段階から参画しました。サービス利用者のがん発症リスクを可視化し、がん予防や早期発見に向けた積極的な行動への変容を促進・サポートするためのシナリオ作り、がんの予測モデルの共同研究、プロトタイプを用いたフィールド検証、そしてサービス内容の全体設計からリリースまで、一気通貫で対応しました。

予測モデルの共同研究は、がん研究を専門にされている研究機関との取り組みです。その研究機関ではがん克服をもって人類の福祉に貢献するというミッションをお持ちですが、健診データを活用しきれていないという課題がありました。そこでデータ・アナリティクス・マイスターサービスでは健診データや医療試験の結果を統計モデル化して活用し、さらにUX(ユーザエクスペリエンス)デザインを加味した「がんのリスクマネジメントサービス」としてご提供することで、お客さまの健康寿命の延伸とQOL(Quality of Life)向上、そして社会のがんリスク低減につなげています。

この取り組みは金融分野とヘルスケア分野の双方の事業領域をLDSLがつないだ事例で、日立だからこそ実現できたサービスの好例であると考えています。また、一般的に公的な研究機関から営利企業への情報提供は難しいといわれていますし、健診データや医療試験の結果はデータの権利や取扱いに注意を要します。日立ではその課題を克服し、研究機関でのがんの検診・診療に関する知見や匿名化されたデータと、日立のAI技術とを組み合わせて、がん発症リスクに関する研究を行ってきました。このように、さまざまな領域と強いコネクションを持ち、導出した共通のビジョンの上でビジネスモデルを具体化できるのは日立だからこそ、LDSLならではの強みです。

なぜLDSLは共通のビジョンの導出とビジネスモデルの具体化に強みを持つのでしょうか。

LDSLはデータサイエンティストの集団であるのは間違いありませんが、一方で、前例のない課題に対する思考法であるデザイン思考のスキルや経験を持つ人財もいます。ステークホルダーそれぞれのビジョンが根元でつながっているとしても、ビジョンに至るまでのプロセスにおける考え方や商習慣が異なると共通したイメージを持つのは困難です。そこで、データサイエンティストであっても、上流からの議論に積極的に関わりながら、両社の共通項からイメージのすり合わせや解くべきビジネス課題の定義を行うケースもあります。

イメージのすり合わせの過程や課題解決の施策検討では、データによる実証が求められることもあります。データサイエンスによる定量分析とデザイン思考による定性的なアプローチの両方を使いこなせる専門家が多数在籍することがLDSLの強みの理由の一つです。

写真 写真

さまざまなジャンルでご活躍の四ッ谷さんですが、日立でデータサイエンティストとしてどのようなやりがいを感じていますか?

データサイエンスの領域に限定されない経験ができるところだと思います。私は常々、理想のデータサイエンティストの条件を「一流のビジネスマンであり、一流の科学者であり、一流のエンジニアであること」と考えています。真にデータサイエンスの力を事業に活用するためには、データサイエンスの力だけでは成り立たないからです。

これは必ずしも個人が全てを完璧に兼ね備えている必要はなく、データサイエンスに特化した人財も会社には必要です。会社としてバランス良く3つの要素が備わっていれば良いとされ、日立ではそれが実現されています。一流のデータサイエンティスト、エンジニア、コンサルタント、デザインシンカーが身近にいて、データサイエンスの前後にある仕事に触れて深さを知る機会が多くあります。日々受け続けている刺激が、データサイエンティストとしての深みになっていると実感していますね。

写真 写真

今後LDSLで挑戦したい取り組みを教えてください。

身近な目標は、日立内のビジネスユニットをスムーズに横断させる役割の強化です。今もLDSLはさまざまなビジネスユニットからデータサイエンスに関わるご相談を多くいただいています。そうして蓄積した知見を生かし、ビジネスユニット単体では解決できないテーマやビジネスチャンスに、いろいろなビジネスユニットの力を足し合わせて挑む橋渡し役であり続けたいと思っています。

その先にあるのが、日立がリードする社会課題の解決です。現代におけるさまざまな社会課題は、大企業であっても単独で解決するのは非常に難しいでしょう。LDSLが得意とするのは、各ステークホルダーのビジネスモデルをつないで、データサイエンスの技術を活用して実現するアプローチです。これからもそれぞれのメリットを成立させた上で社会課題に取り組めるビジネスの協創をめざしていきたいと思っています。

写真 写真