田中 聡一朗
株式会社日立製作所 Lumada Data Science Lab.
技師
株式会社日立製作所が2020年4月に設立した「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)に集う一人ひとりに光をあてるインタビューシリーズ。今回話を聞いたのは、LDSLの技師、田中聡一朗です。新卒でシステムエンジニアをしていた田中は、データサイエンスの可能性を感じ、データサイエンティストに転身。データサイエンティストとしての成長や、これからの野望を聞きました。
前職は、AIエンジンの開発を行うベンチャー企業に勤めていました。転職のきっかけは大きく2つあり、1つ目はデータサイエンティストとして、スキルアップしたいと考えたからです。実践的で学びはあったものの、自分一人で試行錯誤しながら案件を進めることが多く、「本当にこの分析設計でいいのだろうか?」と不安を感じていました。今後スキルアップしていくためには、チェック・相談できる体制が整った環境の中で、他のデータサイエンティストたちと切磋琢磨し、自分の知らない技術や考え方を取り入れたいと思うようになりました。
2つ目は、大規模な案件にじっくりと向き合っていきたいと思い始めたからです。前職では比較的小規模な案件を複数並列して取り組んでおり、さまざまなデータに触れられる面白さもありましたが、物足りなさも感じていました。国内有数の大企業である日立であれば社会的影響力の大きい案件に取り組めるだろうと考え、転職を決めました。
転職活動をしているときに、たまたまLDSLが編成されたことを知りました。日立がこれからデータサイエンスに注力する本気度を感じ、ここで経験を積んでいきたいと思いました。また、2021年にGlobalLogic社が日立グループに加わり、海外のデータサイエンティストと協創できる環境があります。将来的にはグローバルに活躍したいという気持ちもあったため、その土壌ができている日立に決めました。
今ではさまざまなバックグラウンドを持つスペシャリストの方々の豊富な知見やノウハウに触れ、日々刺激を受けています。
日立に入社したことで、データサイエンティストの仕事を合理的に進めるスキルが鍛えられました。これは、入社後初めての案件をともに担当した先輩社員から、綿密に指導いただいたおかげです。
データサイエンティストの仕事は、基本的には課題のヒアリング、分析設計、結果の評価、という流れで行います。まずは課題のヒアリングから入りますが、その中で「クライアントが認識している課題設定は妥当か?」というところから、多角的に判断しなければならないと教わりました。例えば、お客さまから「この課題を解決したら、工数が減る」と言われたとき、「本当にその課題を解決することで、工数を減らすことができるのか?」と、第三者視点で冷静に疑うことから始める必要があります。紐解いていくといろいろな要因が絡み合っているケースもあるため、最初に本質的な課題を見つけ出すことで、その後の合理的な分析設計が可能になります。
また、お客さまに分析結果の評価をお伝えするときは、結果に対するデータの前提条件や分析手法の数理を、お客さまに理解してもらえるように丁寧な説明を心がけています。期待しない結果が出たときは、なぜ期待通りにならなかったのか原因を徹底的に追求します。このような姿勢はお客さまの納得感や信頼感に繋がります。日立で学んだ合理的に分析案件を進めるスキルは今、私自身の強みでもあります。
営業活動のレコメンドAIの開発に携わっています。クライアントは、多種多様な商材を扱っている企業で、ゆえに営業マンはどの商材を誰にどのタイミングで売り込めばいいのか判断が難しいという課題を抱えていました。そこで過去の膨大な営業実績の中から「いい売り方」をAIに学習させ、推奨される活動をレコメンドする仕組みの開発に取り組んでいます。先進的で難易度の高い課題ですが、日立独自のAI技術を活用すれば、解決できそうだという期待があり、ご依頼いただきました。この案件のように日立独自の技術に興味を持ち、依頼してくださるクライアントもいらっしゃいますね。
また別の案件ではGPSデータを活用した人流分析を行っていますが、この分析は街づくりの課題をデータから明らかにし、街の活性化をめざす中でご活用いただいています。
企業から行政まで多岐にわたる業界・分野に対応できるのは、多様な事業領域を持つ日立ならではだと思います。また、お客さまからは「日立ならコンサルティングからシステム化まで一気通貫してプロジェクトを推進してくれる」という懐の深さに期待を持って案件を任せて頂けることも多いです。
これまで日立が取り組んできたデータ分析案件のノウハウも豊富に蓄積されており、さまざまなリスクを加味した信頼性の高い開発はお客さまにとっても安心だと思いますし、私も勉強になることばかりです。
LDSLのデータサイエンティストは、まだ誰も解決したことのない課題に挑戦していく、開拓者のような役割です。だからこそ、まずは自身のデータサイエンス技術を高め、できることを増やしていきたいと思っています。データサイエンスは一生かけても極められないほどのビッグテーマのため、さまざまな分野のスペシャリストが集うLDSLで効率的にスキルアップしながら、一流をめざしていきたいと思っています。
将来的には世界規模の案件にも挑んでいきたいですね。日立にはGlobalLogic社との連携で、海外の高いスキルを持ったエンジニアたちと協創できる環境があります。ただ、協創のためには言語の壁があります。私は英語が苦手なのですが、そのことを上司に伝えたら「GlobalLogic社のデータサイエンティストとの交流の中心人物になってもらうために」とのことで英会話のプライベートレッスンに推薦していただき、今まさに英会話を勉強中です。
やりたいことに挑戦できる環境もありますし、やりたいことへのサポートも手厚く、日々自身のスキルアップを実感しています。