徳永 和朗
株式会社日立製作所 システム&サービスビジネス
サービス&プラットフォームビジネスユニット
Lumada CoE AIビジネス推進部
担当部長
日立製作所が2020年4月に設立した「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)に集う一人ひとりに光をあてるインタビューシリーズ。今回登場するのはLDSLの徳永和朗です。半導体技術者から転身した徳永。現場の人々に寄り添い、課題解決のためにデータサイエンスで何ができるのかを常に模索している。そんな徳永に現在のミッションや今後の野望を語ってもらいました。
はい。学生時代は半導体物性、半導体プロセスに関する勉強をしていました。
当時は次世代ディスプレイの開発競争真っ盛りで、今では一般的な液晶、有機ELなどの他に、私が研究してたFED(Field Emission Display)というものがありました。そのディスプレイは半導体の微細加工を利用するもので、その物理、製造プロセスを研究していました。
半導体のエンジニアでしたので、プログラミングは得意な方ではありませんでした。設備を制御したり、電気特性を測定するプログラムは書いていましたが、データ分析に使う、R言語やPythonといった言語、機械学習といった知識は持ち合わせていなかったので、最初はひたすら勉強でした。研究所から出向していた方が機械学習のバイブル、PRML(Pattern Recognition and Machine Learning)という書籍の輪講を企画してくれて、定時後みんなで勉強しました。
また、私の場合は研究所に1.5年間修業する機会をもらい、実際のプロジェクトを研究者と一緒に進める事ができ、プログラミングや統計学、機械学習について手取り足取り勉強させてもらいました。
半導体は工程が多岐にわたっていて、一つ一つ積み上げていく世界なんです。何かトラブルが起こったときには、自分で仮説を立てて原因を推理し、それをデータで裏付けするということを行います。過去の傾向と合っているか、データ間の相関関係があるか、などを確認します。これらのデータを加工してアプローチするという過程は半導体のエンジニアの経験値がすごく生きているなと思います。
半導体の生産ラインでは他の製造業の現場と比較しても、データがたくさん取得され、モノづくりを把握しやすい環境にあります。20年前ぐらいからデータサイエンス、データ分析といった考え方を取り入れており、その当時、他のモノづくりの現場よりも進んでいました。こういった半導体の現場で培った考え方を、様々なモノづくりの現場に導入して、もっともっとインテリジェンスな仕事にしていきたい。データでモノづくりの現場に光をあてて、日本の競争力を高めたい、強めたいというのが私の思いです。
Lumadaをビジネスとしてスケールさせるために、ビジネスになりそうな「種」を集めて検証することです。
具体的には、実際に現場に入ってお客さまの課題をデータ分析の問題に落とし込み、それらの問題をどう解決したのか、別のビジネスの世界ではこのように適用できそうだ、というものを次々に作ってナレッジとして貯めていくことを行っています。個々のお客さまの課題を解くだけではなく、汎化してN倍化できるような事例ですね。お客さまに寄り添い、業務にあたっている日立のメンバーからの相談を受けて、それが先進的か、横展開できそうかということを確認します。「種」になりそうだと判断したら、ナレッジの方向性を決めて、ニーズヒアリングを行い、技術的なフィージビリティを確認していく、という作業を行います。
横展開・N倍化となる事例のポイントですが、例えば、環境問題のように世の中すべてが課題解決のため同じ方向に向かっていく案件があります。これは横展開しやすいですね。他には、属人化されている知識・ノウハウをひもといて、強みを見つけてソリューション化していくなど、どの現場にも起こり得る共通した問題もN倍化の対象となります。
産業分野を中心にAI、データ分析を活用した現場のDX推進に関する案件に携わっています。これまでは一つの作業、工程についてAIで機械化、効率化したいというニーズが多かったですが、最近では工程を跨いだ分析やライン全体の品質向上、市場での故障分析といったサプライチェーンを意識した分析に携わる事が多いです。
コロナ禍で物流、人、など制約がある中でも現場の創意工夫で乗り越えている様なところにデータサイエンスをドンドン適用して、お客さまのモノづくりの現場に価値を提供できる様なソリューションを創り出していきたいと考えています。一方でモノづくり、流通の無駄を省いて、産業界がサスティナブルに発展できる様な活動がしたいです。
世界的にSDGsを意識した事業形態へ移行しています。どういったエネルギー由来で作られているのか、CO2の削減にどう注力しているのかなど、モノそのものの品質だけではなく、製品が出来上がるまでのすべての過程がトータルで評価される世の中になっています。未来をよりよい方向へ導くためのソリューションを提供し、支援していくことが、日立として、私としても目指すべき方向だと考えています。