末吉 史弥
株式会社日立製作所 Lumada Data Science Lab.
技師
日立製作所が2020年4月に設立した「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)に集う一人ひとりに光をあてるインタビューシリーズ。今回登場するのは初のデータサイエンティスト採用枠入社である末吉史弥です。2016年入社の若手ながらプロジェクトリーダーとしてデータサイエンス分野に取り組んでいる末吉に日立を選んだ理由や仕事環境、成長の原動力について聞きました。
「データを扱う部署に入社したい」。面接で希望の部署を聞かれたときにそう答えました。生意気なことを言っていた私の話を聞いてくれて、配属先まで叶えてくれそうな日立を選びました。話をした方々の人柄に惹かれたことも理由の一つです。
実際に入社してみて、データサイエンティストとして仕事をする環境としては申し分ないと感じています。幅広い業種のお客さまがいらっしゃるので、学生の時に想像していた以上にさまざまな種類のデータに触れることができています。
日立では入社して2年目に研修員論文を書きます。研修員論文は大学の卒論のような制度で、書き終えると日立社員として一人前だと認められます。最初の2年でデータ分析を学び、最後に2年間のまとめとして論文を書きました。
私はMLCP(Machine Learning Constraint Programming)と呼ばれるお客さまの計画を最適化するソリューションについて書きました。計画最適化にはいくつものソリューションがあり、工場における属人化の解消などに役立たせることができます。
データ分析の初心者であっても、最初の1年でデータ分析の基礎から教えてもらえます。さらに、お客さまへの報告の仕方やそもそも分析をすることによってどのような価値をお客さまに提供できるのかというところまで学んでいきます。
データ分析の研修を全新入社員が受けられるので、それぞれの部署で仕事をするようになっても、分野ごとの専門性を持ったSEと横串を刺す役割を持ったデータサイエンティストの話が噛み合いやすくなります。
また、LDSLではOJTも重視されています。軌道に乗ったプロジェクトに加えてもらえ、お客さまのところにもどんどん行けるので、成長の機会は多いです。私も1年目ですぐに金融分野でお客さま先への常駐を経験しました。理論に関する研修とOJTで、若手が成長する環境が整えられています。
入社3年目に食品の生産計画最適化に関するプロジェクトに参加しました。アメリカに行き、データの整理を中心に担当させてもらいました。4年目にも研修の一環でアメリカに行きました。こちらはデータサイエンスとは全く違う内容で、異文化の体験や英語でのビジネス経験を積む目的です。そこで体験したのは“忍者シューズ”を売ることです(笑)。現地のベンチャー企業が販売していた足袋のような商品で、ショップの人に話を聞きに行くなどマーケティングに近い経験をさせてもらいました。外反母趾の防止やフィット感などさまざまな観点から訴求しましたが、1〜2万円ほどする高額な商品だったこともあり販売には苦戦しました。普段の仕事とは異なる経験をさせてもらえる懐の深さも若手には魅力だと思います。
ある製造会社さんとのAIを使ったプロジェクトが印象的でした。機械学習と数理最適化技術を組み合わせて、生産の効率化を実現しました。工場の熟練者の方のノウハウをLumadaのソリューションである計画最適化サービスに組み込んだ事例です。
生産計画や要員計画は、経験を有する熟練者が各工場別・ライン別・生産品目別に、ノウハウや経験則に基づく勘、設備や納期、コストなどの複雑な制約条件、過去の膨大な計画履歴などを基に長時間かけて立案していたため、計画作成にあたる熟練作業者や一部の作業員の負担が大きく、その改善が課題となっていました。1工場で10兆を超える組み合わせがある中から、日別のラインごとの生産商品・生産量などの生産計画、作業者のシフトスケジュールなどの要員計画の最適解を立案しなければなりません。そこに、日立独自のAI技術を用いて自動立案することで「生産性が向上した。働く場の制約なしに作業者が労働時間を短縮でき、その分の時間を、別の業務に充てられるようになり、効率的に働くことができるようになった」とのお声をいただけました。
私は主にデータ分析を担当しました。予測した値に対する実際の生産量のデータを集めて分析し、可視化しました。数理最適化、計画最適化の話につながる前段階の部分ですね。現状と目標を比較し、さらに最適化するとどうなるかを提案。まさにデータサイエンティストの仕事です。
他に印象的だったのは部品メーカーさんとの計画最適化のプロジェクトです。工場側と営業側の希望が相反する場合がありますが、AIを使って調整の最適解を作りました。人と人が調整すると非効率になりがちですが、AIが答えを出すことによって折り合いがつきます。AIが潤滑油の役割を果たせた事例の一つです。
謎が解けたときですね。まるで呪文が書かれているようなデータが解けたとき。予測を立てて分析していき、全部がつながって、ここまで分かったぞということを説明しているときにはドヤ顔をしているかもしれません(笑)。予測が一発でバチッとはまることはほとんどありませんが、さまざまなタイプのデータを触る仕事は苦労も多いですがやりがいを感じます。
LDSLでは若手もプロジェクトリーダーを任せてもらえます。私自身の現在の課題は、お客さまへの提案や分析結果の見せ方です。目先のデータ分析だけではなく、お客さまの本質的な課題を解決するために必要なことをもっと勉強したいですね。
データサイエンティストの仕事の領域は今後、さらに広がっていくと期待しています。個人的な関心分野としては自動車の自動運転や電車も含めた混雑緩和に興味があります。スマートシティのような、効率化していく社会の実現に貢献したいという気持ちがあります。
LDSLには最先端の事例や技術、人財が集まっています。そのため、未知の課題に遭遇しても、問い合わせをすれば手を貸してくれる人が必ずいるという安心感があります。自分の夢を実現するためにも、まずは目の前のお客さまの課題にデータサイエンティストとして取り組んでいきたいですね。