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Hitachi

「LDSLは知識の集合体」
データサイエンティストと組んで成果を出す研究開発とは

2021-03-31

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武藤 和夫

株式会社日立製作所 Lumada Data Science Lab.

研究員

日立製作所が2020年4月に設立した「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)に集う一人ひとりに光をあてるインタビューシリーズ。今回話を聞いたのは、2009年に入社した武藤和夫です。武藤はCAD/CAEを用いた設計支援システムや機械学習とシミュレーションを活用した設計最適化、余寿命評価などの研究開発などに従事。データサイエンティストと共に取り組んだ今までの仕事や今後取り組みたい分野について語ってもらいました。

日立製作所を選んだ理由を教えてください。

もともとインフラを支えるような大きなハードウェアに興味を持っていて、大学では機械工学を学びました。ただ、世の中にはすでにたくさん物が存在しているので、ハードウエアだけでは面白くないだろうと思い、ソフトとハードの両方をやっている日立を選びました。大学で研究していた設計最適化に取り組めることも選んだ理由の一つです。

日立はお客さまの幅が広く、グループ企業も多いので、多岐にわたる製品に関われるところも魅力だと思います。リクルーターの人から「新幹線のシミュレーションをやっていた人が、空気の流れという共通項からドラム洗濯機のシミュレーションをやったりもする」と言われたことも魅力的に感じました。

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入社後は機械学習とシミュレーションモデルを融合した機械設備の余寿命評価や異常検知などに関わったとお聞きしています。

入社してすぐは四面体メッシュ生成処理の並列化に取り組みました。物体に力がかかったときにその物体がどれだけ変形するかをシミュレーションする技術があり、その前処理として物体の形を四面体メッシュ、まるでブロックを積んでいるかのように分割させます。その分割させる処理を並列化によって速くできるようにしたのが最初の仕事でした。

その後、油圧ショベルのエンジンルームの設計を支援するシステム開発に取り組みました。油圧ショベルのエンジンルームの設計は、形をコンピューター上で作って、必要な冷却のシミュレーションまで行います。従来はエンジンルーム形状の最適化を設計者が人手で行っていました。私が手がけたのは、その形状の変更と変更後の形状に対する冷却のシミュレーションまで自動的に行って、さらにそれを繰り返すというシステム開発です。自動化のために機械学習、最適化の技術を使いました。

2016年にはインフラ製品の稼働状態や動作環境の計測データをもとに製品の信頼性を評価するアナリティクス基盤の開発プロジェクトに参加しました。そのプロジェクトでは、ICTプラットフォームの取りまとめや、計測データとシミュレーションモデルを融合し、風車の羽、ブレードにかかる力を推定し、強度がどれぐらい保てるかという評価を行いました。

自身の専門分野以外に、プロジェクトに参加しているIT系の人と機械系の現場の人とのコミュニケーションやカルチャーのギャップを埋める役割も担いました。もともと機械系を研究してきましたが、機械学習の分野にも取り組んできたので、両方の思考や言語を理解できるということでそういった役割を果たせたと思っています。

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現在取り組んでいる研究について教えてください。

機器・設備などの保全業務を主なターゲットとして、ドメイン知識を活用した保全記録などの自動分類やデータの利活用に関する研究開発を行っています。皆さんが日々利用する機器・設備には保守員さんが必ずいます。また、機器・設備が壊れた原因や状況の情報がデータとして集まっています。保守員さんは保全記録を取っていて、とても価値のある情報なのに、これまではあまり利活用されてきませんでした。

そこで、有益な知見を抽出できるようにしました。例えば、保守員さんが検索すると目の前で起きている事例と近い事例が出てきて対応方法がわかる、設計者からはどういう使い方をされたから壊れたのかということがわかるような世界を目指しています。このシステムが保守作業のサポートとして機能すると、機器・設備の復旧が早くなって、お客さまの満足度が向上します。さらにはベテランの保守員さんの知識を若手に継承しやすくすることにもつながります。

こういった技術実証では、日立グループ内の知見や保全記録を抽出して活用しています。設計と保守両方の部隊がグループ内にあるのは日立グループの強みですね。

日立製作所の働く環境について教えてください。

裁量が大きく、任される範囲も大きいので、快適に働けます。仕事の仕方や働く場所も自由ですね。ワークライフバランスという意味でも、制度が整っていると思います。私は子どもが生まれて間もないのですが、時間もフレキシブルで休暇も取得しやすく、育児と仕事の両立支援制度も利用しやすいです。

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Lumadaについてはどのように捉えていますか?

知識の集合体のようなものでしょうか。ベストプラクティスを共有して再利用するためのプラットフォームだと考えています。日立のデータサイエンスのユースケース集、ベストプラクティス集とも言えますね。

LDSLについてはどのように捉えていますか?

LDSLには、データサイエンスの研究者と、お客さまと直接仕事をするデータサイエンティストが集まっています。そのため、最新のAIや機械学習の技術に触れる機会が多いと同時に、さまざまな業種のお客さまのニーズを聞くことのできる機会も多い場所だと感じています。

私自身はデータサイエンス分野のリサーチャー、研究者だと自分のことを捉えています。仕事では、アルゴリズムや技術に新規性を求められる立場です。お客さまのニーズを把握して、適切なデータサイエンスのツールを駆使し、短い時間で最大の価値を出すデータサイエンティストの方たちと一緒に組んで仕事をしているとも言えますね。

今後、めざしていきたいことはなんでしょうか?

入社したときは、ITだけではなくハードウェアがあってこそ人間の生活の役に立つという信念のようなものを持っていました。最近思うようになったのが、最終的に価値を届けるのは人なので、もっと人に重点を置いて考えたいということです。

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人がソフトウェアやハードウェアを使う裏にAIがあることによって、お客さまがシステムを使う経験価値を最大化していくところが重要だと思っています。一方で、人間が当たり前だと思っていることをAIが学習するためには、たくさんのデータが必要になります。人間に関するデータをAIが学習して、反対にAI側から出たデータから人間も新しく学習するといいのではないかと考えています。そのようにAIと人間の間でデータを循環させていくと、製品の使い勝手がよくなったり、作った製品が使われることを支援できます。そういう世界をめざして、今後も研究開発に取り組みたいですね。