株式会社日立製作所
エンタープライズパッケージソリューション本部
ERPソリューション部
部長
北嶋 哲哉
このプロジェクトは基幹システム更改と、分かれていたシステムの統合、業務標準化など、広範囲かつ複雑なプロジェクトです。さらに影響範囲は広大で、グループ会社を含む150社/ユーザー3万人という規模です。一方でプロジェクト期間は2年3か月、準備を含めても約3年という大変短いものであったといいます。にもかかわらず、本プロジェクトはオンスケジュールで完了できたというから驚きです。
これにはどのような成功の秘訣があったのでしょうか。渡邉は、「過去の経験を生かし、標準機能を前提としプロセスを簡素化したこと、システムを統合したこと、新技術を活用したこと、そして部門横断でプロジェクトを推進したことだ」と語りました。たしかにプロジェクトは、進行するに従って要件が増えたり、当初の方針からずれたりすることで、プロジェクト期間の延長や中途半端なシステムが出来上がるという話もしばしば耳にします。そのような事態を招かないためにプロジェクトの取り組みがありました。八森は、「プロジェクトの財務メンバーがSAP S/4HANA標準プロセスをよく理解しており、既存プロセスからの改善方式を適切に提示し、業務面を強くリード頂いた事が大きかった」と語ります。またプロジェクトは、準備段階から、リーダー・メンバー・子会社を含むユーザーに対して方針の共有、説明会を重ねたのです。これは方針の共有以外にも利点があります。DXは実際に利用するユーザーの協力無くして、成功はありえないからです。北嶋は「SAP S/4HANAを活用して『能動的にデータを使う』という意識改革につながった」と語ります。
さらに本番稼働までの1年を掛け、ユーザートレーニングやリハーサルも入念に実施。これも当初からスケジュールに組み込んで予定していたといいます。
こうした入念な準備は、ECC6.0を導入・展開した際のノウハウが生かせたといいます。説明会が新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりオンラインに切り替わった際にも、資料にすべての説明文を加えるなど、理解しやすいようにする工夫を行い乗り切りました。