では、これからの時代に最適な勘定系システムとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
日立では「つながる」「組み合わせる」「連携させる」の3つを重視して、これまでの“作る”から“使う”勘定系システムへの転換を図るべきだと考えています。この新しい思想に基づく勘定系システムの概念図は以下の通りです。
「バンキングハブシステム」を中核に据えることで、業務処理の汎化が可能となり、チャネルの入出力を意識しない処理形態を実現しています。たとえば営業店システムやインターネットバンキングなどのチャネルサービスに特化した取引要求がきた際に、バンキングハブシステムがディスパッチャーの役割を果たすことで、勘定系システムの汎化されたコンポーネントから結果をスムーズに返すことができるのです。これにより、システム改修の抑制や影響範囲の局所化ができるほか、新商品やサービスを追加する場合にも、柔軟な対応が可能となります。また、「バンキングハブシステム」によって通信制御専用装置やチャネルごとのゲートウェイという多段接続構成が解消され、ゲートウェイを集約することができるため、コスト削減にもつながります。
業務コンポーネント内の処理を共通化してパラメータ化することで、アプリケーション構造とデータベース構造を再利用性の高いものへと刷新しました。これにより、修正・影響調査範囲が限定され、エンハンス保守効率の向上を図りやすくなるだけでなく、本部の非技術者が、金利や期間などのパラメータの組み合わせによって商品管理を行えるようになります。
データを活用して顧客サービスを充実させるには、営業活動支援・マーケティング支援システムや、家計簿アプリやクラウド会計ソフト、投資のロボアドバイザーといったさまざまなFintechとの連携が欠かせません。「バンキングハブシステム」があれば、勘定系システムを肥大化・複雑化を招くことなく、新しい金融サービスやデータ利活用サービスとも柔軟に連携できるようになります。
この新しい勘定系システムを日立では「次世代オープン勘定系システム」と名付けました。この次世代オープン勘定系システムをいち早く導入されたお客さまからは、第3次オンラインシステムに比べ、「開発生産性の25%以上の向上が期待できる」との声もいただいております。
これまで第3次オンラインシステムが稼働してきた約35年という長い月日を考えると、時の流れとともに不都合が生じてくるのは自然なことです。加えて、当時開発に携わった技術者の方々は、あと数年以内に定年を迎えてしまいます。
“モノ”づくりは“ヒト”づくり。勘定系システムという銀行ビジネスの根幹を司る“モノ”を理想的な状態で使い続けるには、次世代の技術者の育成が欠かせません。日本では古来より、20年ごとに社殿を造り替えることで新しい宮大工を育成して技術を継承する仕組みがあるように、新しいシステムづくりを通じて第3次オンラインシステムを熟知する古参の技術者から、新しい技術者へと歴史を引き継いでいく必要があるのです。
勘定系システムのブラックボックス化を解消し、自らの手に取り戻し、来るべき「2025年の崖」に向けて万全に備え、今こそレガシーシステムからの脱却を真剣に議論すべき時が来ているのではないでしょうか。