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量子コンピュータとCMOSアニーリング

〜量子コンピュータの“今”と、半導体技術で大規模最適化計算に挑むCMOSアニーリング〜

【後編】半導体技術を活用した「CMOSアニーリング」

量子コンピュータとは異なる半導体というアプローチで、
社会課題の解決に挑む

前編では、量子コンピュータは優れた計算性能が期待されるものの、現在の技術では取り扱いが非常に難しいことをご紹介しました。
そんな中、量子コンピュータが扱う計算を、量子コンピュータとは異なるアプローチで実現することができる技術として今注目されているのが、「CMOSアニーリング」です。「量子アニーリング方式」の量子コンピュータと同じく、「組み合わせ最適化問題」を解くことに特化したコンピュータです。

「CMOS(シーモス)」とは半導体の一種で、「Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)」の頭文字をとったものです。非常に小型で、消費電力が少ないにもかかわらず、高速に動作することが特徴です。

さらに、CMOS集積回路(ICカードの「IC」は集積回路のこと。半導体の上に電子回路を形成した電子部品をさします)は、「大量のICチップを組み合わせることができる」という優れた特長をもっています。これは、「1つのICチップでは計算できないことも、大量のICチップを接続すれば計算できるようになる」ということで、これにより高いスケーラビリティ(拡張性)を得られるため、量子コンピュータよりも多い約100,000個の変数を扱うことが可能です。これは、膨大なデータが行き来する現代社会での活用において、非常に大きなメリットとなります。

「CMOSアニーリング」は、すでに広く利用されている半導体技術をもとにして作られているため、一般的なコンピュータと同じく、室温で問題なく動作します。
より手軽に使える利便性と、量子コンピュータに勝る変数を扱えることから、社会に数多く存在している「組み合わせ最適化問題」を解く技術として、高い注目を集めています。

CMOSアニーリングの特長

実は身近にある「組み合わせ最適化問題」

「CMOSアニーリング」や「量子アニーリング方式」の量子コンピュータが扱う「組み合わせ最適化問題」について詳しくご紹介します。
「組み合わせ最適化問題」は、決して学問の中だけの課題ではなく、私たちの実生活の中でも見つけられるとても身近なものです。
例えば、シフト制をとっている職場の勤務シフト作成がその一例です。
早番・遅番といったシフトや有給希望のほか、「このトレーナーとこの新人さんを同じ時間に勤務させたい」「責任者は各時間帯に1名必要」などのさまざまな条件を考慮する必要があります。シフト作成は多くの場合人手で行われており、非常に時間がかかるうえ、人数が多くなれば全ての人の希望を受け入れることは不可能で、なかなか希望を反映してあげられない、ということが起こります。さらに、それが100人を超える規模になってくると、個々の希望をすべて聞き入れることはほぼ不可能になっていきます。

ほかにも、小中学校の時間割作成も「組み合わせ最適化問題」のひとつです。
音楽室の使用が2つ以上のクラスで被ってはいけない、この先生は1年生の担任だけれど2・3年生の授業も受け持つことができる、この時間は次の授業の準備のためこの教室は使用不可…等々となれば、各学年×各クラス分の時間割を作るのはかなり大変だと思いませんか。

「限られた数の携帯電話基地局で最も多くの人口をカバーするには、どこに基地局を建てれば良いか」や、「ポストをどこの道に設置すれば、最も多くの住人にとって家から徒歩圏内にポストがあることになるか」といったことも「組み合わせ最適化問題」です。
このように、身近な困りごとから、社会問題に至るまで、「組み合わせ最適化問題」は私たちの身近に、様々な場所で見つけることができるのです。

あなたの日々の生活や仕事の中に、どんな「組み合わせ最適化問題」があるか探してみませんか。
「膨大に存在する選択肢の中から、最適解を見つけたい。」
そんな「組み合わせ最適化問題」に直面したら、ぜひCMOSアニーリングの活用を考えてみてください。自力では解決が難しい「組み合わせ最適化問題」を解くヒントがあるかもしれません。日立が全力であなたの課題解決のお手伝いをいたします。ぜひご相談ください。

日立のCMOSアニーリング活用事例

日立では、CMOSアニーリングの適用を拡大しています。

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