近年、金融業界を始めとして、システムが大規模化していく中で、運用コストの増加や誤操作への対応が重要な課題となっています。コスト削減や誤操作の防止を実現する方法として、これまでシステム運用の自動化が注目を集めてきました。しかし、すべての業務を自動化することはまだ難しいのが現状です。特に障害対応など、状況に応じた判断を要する業務は手動の作業が必要となる場合が多く、大規模なシステムほど柔軟な対応が求められます。今回は、ゼロにはできない手動運用に着目し、課題と解決方法を紹介します。
図 システム運用の中での手動運用シーン
手動運用──オペレータが作業対象のサーバを指定してコマンドを入力する運用では、以下のリスクが存在します。
さらに、複数のサーバで構成されるシステムでは操作回数が多くなり、タイプミスなどの誤操作のリスクが高まります。タイプミスや誤操作があると、システムを停止する事態にもなりかねません。また、原因の特定や復旧のための作業がさらに必要になり、コスト増加にもつながります。そこで、日立は、GUIによる簡単操作の実現で手動運用を支援するツール「Ioperation」を提供しています。
Ioperationでは、GUI画面上のクリック操作だけでコマンドを実行でき、操作対象のサーバはメニューから選択することができます。コマンド名やサーバ名を入力する必要がないため、タイプミスを回避することができます。常に同一の画面で操作でき、プラットフォームを意識する必要もなくります。さらに、Ioperationは安全性、迅速性に関する課題を解決する、次のような特徴を持っています。
ログインしたオペレータの権限に応じて、操作可能なメニューだけが表示されます。このため、誤って権限のない操作をする危険がありません。また、誰がいつどの端末に対して操作したかという履歴を残すこともでき、安全な運用ができるような仕組みが実装されています。
サーバが複数ある場合、Ioperationでは複数のサーバに対して同時にコマンドを実行することが可能です。多くのサーバで構成される大規模なシステムほど、運用の迅速化に貢献できます。
図 Ioperation導入イメージ
このようなIoperationの操作性によって、ミスや障害の対応時間が短縮できると、コスト削減につながります。また、毎朝のリブート処理など、定期的に行う処理は自動化することも可能であり、さらなる効率化も図れます。
熟練者しかできないような複雑な作業も簡単な操作で実行できるようになると、システム運用の属人化を防ぐことができます。例えば、業務品質の確保が難しいとされている、企業のオフショア拠点などで現地スタッフが作業する場合も、スキルレベルに依存しない運用が可能になります。
Ioperationは、国内では金融業界を中心に多くの実績があります。一瞬でもシステムを停止することが重大な問題となる金融業界で、誤操作を防止できるIoperationは、システムの安定稼動を支えてきました。
いま、世界でもシステム運用の効率化やコスト削減を求める動きが増えています。2017年10月、日立はKDDI香港と販売代理店契約を締結しました。KDDI香港が販売パートナーとなり、Ioperationは「Hitachi System Operation」と名前を変え、アジア地域に販路を拡大します。日立は、アジア地域を皮切りに、ターゲット市場を世界へと拡大していきます。