蓄積された業務ロジックとノウハウを
オープン環境にそのままマイグレーション
プログラム資産は、企業競争力の維持に必要不可欠な要素です。
しかしプラットフォームが時代の進化にキャッチアップできなければコスト増を招く可能性があります。
42年もの長期にわたり日立のメインフレームを使い続けてきた讀賣テレビ放送株式会社(以下、讀賣テレビ放送)は、既存資産を継承しつつ、より低コストな運用環境への移行をめざし、オープンミドルウェアを活用したマイグレーションを実行。
処理スピードの大幅アップと周辺システムとの柔軟な連携により、戦略的な機能拡張への道を切り開きました。
讀賣テレビ放送
株式会社
総務局
情報システム部
部長
赤澤 俊徳 氏
1958年、近畿広域圏に開局した讀賣テレビ放送は、今年55周年を迎えます。日本テレビ系列の準キー局として情報番組やバラエティ、アニメ、ドラマなど数多くの人気番組を制作し、関西のみならず全国の視聴者にも親しまれています。同社では1971年に、番組送出システムとテレビCMスポット販売システムを日立のメインフレームで稼働させて以来、1986年には編成、テレビCM販売、放送、財務会計、制作費管理、事業費管理と、ほぼ業務全域を網羅する基幹業務を1台のメインフレームで担ってきました。
「転換期となったのは1994年でした。この頃から時代はクライアント・サーバ・システムへと移行し始め、当社でも費用対効果の高いシステムについてはオープン系システムヘ切り離す流れが加速したのです。そのため2010年時点でメインフレーム上で稼働していたのは、『計数システム』と呼ばれる会計システムのみになりました」と振り返るのは、総務局 情報システム部 部長の赤澤俊徳氏です。
2010年8月、運用コストの低減と周辺システムとの連携強化を図るため、計数システムについてもオープン化する方針を決定。 当初はパッケージソフトの導入も視野に入れ、現行機能とのFit & Gap判定を行ったものの、「50%程度のFit率で、不足する部分のカスタマイズ費用を考えると、やはりマイグレーションによる移 行がベストだと判断しました。放送局独特の管理会計の仕組みや分析ツールなどは、当社の競争力の源でもあるため、今後も継続・発展させていきたい思いが強かったからです」と赤澤氏は語ります。
讀賣テレビ放送
株式会社
総務局
情報システム部
副部長
南方 裕之 氏
プロジェクトでは、業務ロジックや操作性といったユーザビリティの継承と処理時間の向上、事業継続を担保するシステムの安定稼働、既存資産を柔軟に改良・機能追加できる保守性などを重点目標に設定。今回のマイグレーションでは、長年にわたる運用実績と讀賣テレビ放送の業務を熟知したSEの存在、オープンミドルウェアによる移行パスの確立などにより、日立が選定されました。
情報システム部と日立のプロジェクトチームによって進められた移行作業では、データベースをXDM/RDからHiRDBへ、言語はCOBOL85からCOBOL2002へ、ジョブ定義と実行基盤はJCLからBJEX※1およびJPl/AJS3※2、オンラインコントロールはXDM/DCCM3からOpenTPlへと、それぞれ適切なミドルウェアが移行ツールおよび新環境に選定されました。
「移行作業は、すべてツールによる変換とし、手修正は行わないことを原則としました。移行作業のツール化により、後のテストフェーズにおける変換部分の修正や、資産の差分発生時の作業効率が向上できると考えたからです」と語るのは、情報システム部 副部長の南方 裕之氏です。
また開発環境はSEWB+へと移行しました。「メインフレーム時代は、プログラムの保守と新規開発の生産性を高めるため、業務ロジックが記述されたUOC(ユーザー・オウン・コーディング)のみを編集すればいいように画面や帳票など22種類のパターンをEAGLE2に登録していました。SEWB+によってオープン環境でも現状の環境を維持することができたため、新しい担当者への引き継ぎが容易になった点も助かりました」と赤澤氏は語ります。
讀賣テレビ放送
株式会社
総務局
情報システム部
副主査
広瀬 孝昭 氏
プロジェクトが進展する中、新たに情報システム部に加わった広瀬 孝昭氏は、長年の保守・開発ノウハウを受け継ぐ後継者として、新旧システムでジョブ実行と画面操作の結果が同一になるかどうかのテストなどを通じ、計数システムの内容把握と保守作業に習熟する作業を重ねました。
「着任した当初は計数システムの仕組みさえ知らない状態でしたが、マイグレーション作業と各種テストを通じて、システム内容を着実に理解していくことができました。その立場で双方を比べると、移行後は直感的なユーザーインターフェースやHiRDBと周辺システムとの連携性の高さ、コマンドではなくGUIで使えるJP1の柔軟な運用監視も含めて、非常に使いやすくなったと実感しています」と広瀬氏は語ります。
2012年11月に本番稼働を迎えた新計数システムでは、信頼性とオープン性を両立させたUNIXサーバ「EP8000」が新たなプラットフォームとなりました。これによりデータベースバックアップが従来の2時間から30分に、検索等の処理スピードが一桁以上改善されるなど処理性能の向上を実現。「システム全体のレスポンスも体感できるほど速くなり、経理部などのユーザーからは非常に喜ばれました。夜間バッチの高速化で、サービス向上に寄与しています」と南方氏は評価します。
バックアップに必要なテープ装置も、従来比500倍の高密度となるLTO※3に変更されたことで、大型装置から高さ10cmほどのラック組み込み型に代わり、サーバルームの省スペース化に役立っています。運用コストも年間2割ほどの削減効果が出ており、「移行費用は数年で回収できるでしょう」と南方氏は期待を寄せます。
EP8000のシステムリソースには十分な余力があることから、今後は連結決算対応も視野に入れ、計数システムをグループ会社にも展開していく構想が本格化しています。
「オープン化によって、ようやく長年積み上げてきた計数システムの業務ノウハウをグループ会社にも提供できる準備が整いました。日立さんの協力をいただきながら早期に実現したいと考えています」と赤澤氏は語ります。
この間、マイグレーションを支援した日立に対し南方氏は、「何度も困難な局面に遭遇しましたが、日立さんのご協力により、最後までやり遂げることができました。心から感謝しています」とコメント。続いて広瀬氏も、「運用・保守では引き続き日立さんのお世話になることが多いと思います。新機能の提案についても、ぜひご支援いただきたいですね」と語ります。
その期待に応えるため、これからも日立は讀賣テレビ放送のシステム安定稼働を支援しながら、オープンミドルウェアをベースとした付加価値の高い機能拡張やソリューションの提案を行っていきます。
讀賣テレビ放送に導入されたシステムの概要
USER PROFILE
讀賣テレビ放送株式会社
[本社] 大阪府大阪市中央区城見2-2-33
[設立] 1958年2月13日
[資本金] 6億5千万円
[従業員数] 518名(2013年3月31日現在)
[事業内容]
放送法による基幹放送事業、放送番組の企画・制作および販売、文化事業および放送に関連ある一切の事業、各種ソフトウェアによる放送・通信サービスの提供