オープンミドルウェアの活用で
既存資産の継承と新業務の開発を同時に実現
TCO(※1)の削減や、環境変化に即応できるIT基盤の構築をめざし、
メインフレーム上の基幹システムをオープンシステムへ移行する企業が増えています。
丸紅グループの総合エネルギー商社 丸紅エネルギー株式会社(以下、丸紅エネルギー)は、
受発注システムのオープン開発を契機に、VOSK基幹システムのマイグレーションを決断。
「COBOL2002」、「XMAP3」、「JP1」、「HiRDB」、「対話操作支援」、「NHELP実行支援ライブラリ」などの
オープンミドルウェアを駆使することで、既存資産を有効活用しながら、
両システムを統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony BS320」のWindows®プラットフォーム上へとスピーディに統合。
柔軟性とコストパフォーマンスをあわせ持つIT基盤の構築を実現しました。
丸紅エネルギー株式会社
業務推進チーム長
川端 良一 氏
丸紅エネルギー株式会社
業務推進チーム 担当課長
石田 克行 氏
総合エネルギー商社「丸紅」が持つ世界的な調達機能と、
独自の製油所・石油備蓄基地をベースに、国内における石油製
品の配送・販売からサービスステーション(以下、SS)運営まで、
全国規模での事業ネットワークを構築している丸紅エネルギー。
同社は激動するSS業界の中で、元売り各社との取り引きや商社
機能による情報収集・発信力を武器に、販売ネットワークの拡充を
推進。さらに、セルフSSやカード事業といった新サービスの提供、
エネルギーの価値そのものを高める新ビジネスの開発など、さらな
る可能性に向けた戦略的な取り組みを行っています。
丸紅エネルギーでは2007年、元売り各社とお客さまとをつなぐ
受発注業務のシステム化に着手。その過程で、日立のメインフレー
ム「MP5400(OS:VOSK)」で稼働していた基幹システムのオー
プン化も含めたトータルなシステム再構築プロジェクトをスタートさ
せました。
その経緯を、業務推進チーム長の川端 良一氏は次の
ように振り返ります。
「従来、SSや需要家、各種工場などからオーダーを受け、タンク ローリーの手配や配車、元売りなどへ発注をかける受発注業務は、 Excel®をベースとした手作業で行っていました。2006年、この業 務の効率化を図るタスクフォースを立ち上げ、販売管理機能も付 加したオープンシステム化を検討していましたが、基幹系とのシー ムレスなデータベース連携を考えた場合、運用管理コストの最適 化を図る意味でも、基幹系も同時にオープン化するのがベストで はないかという結論に至ったのです」。
受発注システムの新規構築と基幹システムのオープン化。
この2つのビッグプロジェクトを同時に推進するには、スピーディかつ適正なコストで双方の業務システムを設計・構築・連携できるSIerの支援が不可欠です。
そこで丸紅エネルギーは複数ベンダーの中から、日立が提案した基幹システムのマイグレーションプランを採用。
採用の決め手は、基幹系も含めたスクラッチ開発なら構築期間が約30か月必要であるのに対し、基幹系をマイグレーションすることでトータルな構築期間を約19か月に圧縮できること、さらに構築コストが大幅に抑えられることでした。
「機能的には問題のない既存資産をそのまま有効活用できること、そして最少のコストと期間で最新鋭のIT基盤を構築でき機能拡充が容易になること、また、当社の要望を的確にとらえた提案内容が日立さんのソリューション力の裏付けとなりました」と、川端氏は選定理由を語ります。
2007年4月、まずは第1フェーズとなる受発注システムの開発がキックオフ。
『MEDOC(※2)』と名付けられた新システムは、Windows.NETを開発基盤に、「JP1」、「HiRDB」といったオープンミドルウェアを活用することで、これまで効率性に課題のあった仕入れ計画業務の標準化に加え、出荷・配車依頼の自動化、EDI自動発注・FAX自動送信などによる、受発注業務の大幅な効率化を実現。さらに、会計システムと連携した債権管理と入金との連動で、迅速な与信管理とリスク回避にも寄与するなど、効率性と信頼性を両立させた新システムが誕生しました。
一方、これと並行する形で2007年8月からは第2フェーズとなる基幹システムのマイグレーションがスタート。 日立はVOSKと親和性の高いオープンミドルウェア製品と高効率な移行ツールを適用することで、既存資産を最大限に活用しながら、丸紅エネルギーの作業負担とコストを最小化する新基幹システムへの移行に取り組みました。
VOSKマイグレーションの実現イメージ
日立はまず、『BIS(※3)』と呼ばれる基幹システムのプログラムを棚卸しすることで移行資産を精査した後、COBOL85プログラムの業務ロジックをそのまま「COBOL2002」へとコンバージョン。 リレーショナルデータベースも、索引ファイル入出力文をそのまま流用できる「HiRDB」へ移行することで、入出力部分に手を入れずにデータベースアクセスを実現しました。 画面系は「XMAP3」によって使い慣れたGUIの操作性を再現したほか、メニューパネルやガイダンスパネルといったVOSK対話処理と同等の環境を構築できる「対話操作支援」の適用で、メインフレームと変わらない操作性が提供されています。
さらに、ソート機能やデータ抽出などに使われていたNHELPは「NHELP実行支援ライブラリ」によりストレートに移行。夜間バッチや月次決算に利用されていたAOM(※4)とAJSによるジョブネットも、「JP1/AJS2(※5)」によって継続的に自動運用することが可能となりました。
2008年11月、Windows®環境へのマイグレーションを完了したBISは、先行構築されたMEDOCとともに、新プラットフォームである「BladeSymphony」の小型高集積モデル「BS320」へと実装され、翌12月より両システムをシームレスに連携させた新システムが本格稼働を開始しました。
「基本的な機能や操作性は以前とほとんど変わっていないので、本番稼働後もユーザーからの問い合わせやクレームなど大きな問題は出ませんでした。既存資産をそのまま継承できたうえ、MEDOCとの連携によって業務効率がトータルに向上したことは、われわれにとって非常に大きなメリットです」と語るのは、業務推進チーム 担当課長の石田 克行氏。続けて川端氏も、「BISのハードウェア投資コストは従来の1/5以下になり、データセンターへのハウジングコストも含めたランニングコストが約半分になりました」と、マイグレーションによるTCO削減効果を高く評価します。ただしこのコスト削減の背景には、アウトソーシングに対する丸紅エネルギーの戦略変化も大きく寄与しているとのこと。
「従来は、エンドユーザーからの問い合わせや障害の切り分けなども、すべてベンダーさんにお任せしていました。しかし今回のプロジェクトを契機に、受発注をはじめとするコア業務の運用保守は社内で吸収し、ノンコアな部分はアウトソーシングするというスタンスに変えることで、社内における運用ノウハウの蓄積とIT統制を進めていこうと考えたのです」(川端氏)。
ビジネス環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるIT基盤の整備により、丸紅エネルギーでは将来に向けた“攻めのIT戦略”へのモチベーションが高まってきました。
「系列を超えた自由な取り引きやチャネルの多様化など、石油業界の経営環境は大きく変化しています。次期フェーズでは、従来の業界常識にとらわれない新しい業務開発にも挑戦していきたいですね。その意味でも、幅広い業界・業種のシステム構築に精通している日立さんの知恵やノウハウを、お借りする機会が今後も増えてくると思います」と強い意気込みを語る石田氏。川端氏も、「当社のシステムを熟知している日立さんだからこそできる、低コストで付加価値の高い戦略的な提案を期待しています」と笑顔をみせます。
その期待に応えるため、これからも日立は高信頼のオープンミドルウェアを核としたサービスプラットフォームの継続的な強化により、丸紅エネルギーの競争力向上と戦略的情報活用の進化を力強くサポートしてまいります。
USER PROFILE
丸紅エネルギー株式会社
[本社] 東京都千代田区神田駿河台2-2 御茶ノ水杏雲ビル
[資本金] 23億5千万円(2009年4月1日現在)
[従業員数] 183名(2009年4月1日現在)