基幹系のVOS1システムを
オープンミドルウェアでそのまま移行
既存のプログラム資産を活用しながら、環境変化に即応できるIT基盤を構築するには、メインフレームからオープンシステムへのマイグレーションが有効です。
そこで神戸を本拠にグローバルな複合一貫輸送を手掛ける兵機海運株式会社(以下、兵機海運)は、株式会社ニッセイコム(以下、ニッセイコム)とともに基幹系のVOS1システムを日立のオープンミドルウェアを活用してWindows® プラットフォームへそのまま移行することに成功。
運用コストの削減とビジネススピードの向上を実現しました。
兵機海運株式会社
管理部
情報システム室
次長
多田 健 氏
神戸港ポートアイランド内に本社を構える兵機海運は、1942(昭和17)年に兵庫県下の全内航業者(218社)と船主が集約統合された兵庫機帆船運送株式会社を前身とする、独立独歩の物流企業です。
内航・外航・港湾・倉庫・国際輸送という各事業の強みを有機的に連携させることで、さまざまなお客さまのニーズに合わせたグローバルなロジスティックサービスを提供しています。
同社は1971(昭和46)年より日立のメインフレームを導入し、在庫・輸出入・業務台帳・経理などの重要データを管理する基幹システムとして運用してきました。しかし、年々競争が激化する海運業界において、システム運用コストの低減と、情報活用の迅速化によるスピード経営に寄与するには、オープン環境への移行が必要と決断。既存プログラムをそのまま生かしたマイグレーションを選択しました。
同社で長年、メインフレームの運用を担ってきた情報システム室 次長の多田 健氏は、 「AP7000で運用してきたプログラムには、当社の長年にわたる業務ノウハウが詰まっています。また、後継者への業務引き継ぎが急務になっていたため、システム基盤の移行後も既存資産をそのまま生かすことが絶対条件でした」と経緯を振り返ります。
兵機海運のオープン化を支援するSIベンダーには複数社が名乗りを上げましたが、選ばれたのは長年にわたり同社のシステム運用と開発をサポートしてきたニッセイコムでした。
「輸出・在庫システムや業務台帳システムなど、当社のシステムの大半はニッセイコムさんに開発していただきました。業務内容を理解してくださっている安心感、そして移行に必要なオープンミドルウェアを開発している日立さんとも密に連携しているところが大きなポイントになりました」と多田氏は語ります。
ニッセイコムは多田氏とともに、既存資産をオープン環境で継続運用させることを目的としたプロジェクトを2011年3月からスタート。
COBOL85の業務ロジックをそのまま移行できる「COBOL2002」や、データベースの移行工数を削減でき、データを情報として有効活用できる「HiRDB」、高度なトランザクション処理を実現する「OpenTP1」などを活用し、効率的なコンバージョン作業を推進しました。
画面系と帳票系は「XMAP3」によって新環境での使いやすさを優先したカスタマイズを施したほか、バッチ処理やジョブネットも「JP1/Script」および「JP1/AJS3(*)」によって継続的な自動運用を実現。
株式会社ニッセイコム
関西支社 神戸支店
営業第一課
主任
松森 久晃 氏
株式会社ニッセイコム
関西支社 神戸支店
営業第一課
村田 佳奈子 氏
そして、通常の業務遂行と並行した“無理のない確実な移行”をめざしていた同社の計画どおり、2年後の2013年4月に、日立アドバンストサーバ「HA8000」をプラットフォームとした新基幹システムがカットオーバーしました。
「驚いたことに、二十数年前の古い入力画面やファイル形式に対応したオープンミドルウェアが準備されていました。オンラインリレーショナルデータベース形式は、さすがに手直しが必要かと覚悟していましたが、こちらも日立さんから“ストレートに移行できます”とあっさり言われたときは、“さすが堅実な日立さんだ”と感激しました」と多田氏は当時を振り返ります。
ニッセイコム 関西支社 神戸支店 営業第一課 主任の松森久晃氏も、「オープンミドルウェアの性能もさることながら、その裏で日立さんのサポート体制が盤石だったことが心強かったですね。何か不明点があってもすぐにミドルウェア技術者の支援をいただくことができたので、当社SEだけでなく、お客さまも安心してマイグレーションが進められました」と語ります。
実際に、新環境での本番稼働当初に、オープンプリンターでの出力に印字ズレなどの問題が発生した時も、「立ち会っていただいたXMAP3の技術者の方が、すぐに当社SEと連携した調整作業とパッチの手配をしてくださり、すぐに問題が解決できたのは本当に助かりました」と、ニッセイコム 関西支社 神戸支店 営業第一課の村田 佳奈子氏は付け加えます。
高度な処理性能と柔軟性を備えたオープン環境への移行により、兵機海運の基幹システムにはさまざまなメリットが生まれています。
「これまで5時間以上かかっていた夜間バッチが約30分に短縮されました。日常的な業務でも体感的に処理速度が向上しており、画面の反応が遅くてイライラすることが全くなくなりました」と多田氏は語ります。
また、基幹系の業務情報をエンドユーザーが柔軟に活用・加工できるようになったことも、経営スピードのアップと業務負担の軽減に大きく貢献しています。
「従来ですと、このデータをCSVファイルで欲しい、経営資料にまとめて欲しいといったオーダーが頻繁にあったのですが、今は誰でも業務データをPCから柔軟に活用できるので、本業に専念することができています」と多田氏は評価します。
すべての業務プログラムを完全に移行できたことで、「プロジェクトは大成功だった」と喜ぶ多田氏。今後は、新たなシステム開発担当者への業務引き継ぎに注力していくと言います。
ニッセイコムの松森氏も、「日立のオープンミドルウェアは日立製メインフレームだけでなく他社製メインフレームをオープン化する際にも効果を発揮します。当社は今回の移行実績とノウハウを、同じ悩みを持つ他のお客さまにも積極的に横展開していくつもりです」と意気込みます。
日立オープンミドルウェアの活用により、IT基盤の構築に成功した兵機海運。これからも日立はニッセイコムと連携しながら、同社の競争力強化を継続的にサポートしていきます。
VOS1マイグレーションの移行イメージ
USER PROFILE
兵機海運株式会社
[本社] 兵庫県神戸市中央区港島3-6-1
[設立] 1942(昭和17)年12月
[資本金] 6億1,200万円
[従業員数] 218名
[事業内容]
内航海運、外航海運(在来船)、港湾運送、倉庫、通関、国際複合輸送、貿易代行ほか
Partner Profile
株式会社ニッセイコム
[所在地] 東京都品川区大井1-47-1 NT ビル
[設立] 1974年2月
[資本金] 3億円
[従業員数] 799名(2013年4月1日現在)
[事業内容]
情報システム、ネットワークシステムの企画・構築・設計・運用・教育サポートまでのシステムインテグレーション、アプリケーションパッケージの開発・販売およびASPサービスなど