日立のSOAプラットフォーム「Cosminexus」で
SOAに基づき営業情報システムを開発。
営業情報の可視化と効率的活用を実現
日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(以下、日立ソフト)は、社内の営業情報システムをSOAに基づき開発し、2008年11月から利用を開始した。
SOA基盤として採用したのは、日立のSOAプラットフォーム「Cosminexus(コズミネクサス)」のプロセス統合基盤「uCosminexus(ユーコズミネクサス) Service Platform」だ。
営業支援システムとして活用しているパブリッククラウド(社外Webサービス)や複数の既存システムを、SOA基盤上でサービス連携させることにより、営業プロセスにまたがる情報の可視化と効率的活用を実現した。
今後、日立ソフトでは、今回獲得したノウハウをもとに、コンサルテーションや製品化することを計画しており、SOA関連ビジネスをさらに強化していく。
日立ソフトウェア
エンジニアリング株式会社
技術開発本部
情報システムセンタ
経営情報システム第1グループ
グループマネージャ
渡邊修二 氏
日立ソフトウェア
エンジニアリング株式会社
通信・産業システム事業部
第2通信・産業システム本部
第1システム部
GrM・シニアコンサルタント
坂口直樹 氏
日立ソフトウェア
エンジニアリング株式会社
通信・産業システム事業部
第2通信・産業システム本部
第1システム部
ユニットリーダ・
プロジェクトマネージャ
北林拓丈 氏
情報システムは、保守・運用しながら使っ ていくものであり、開発生産性だけでなく保 守性がきわめて重要である。
「ひと昔前であれば、情報システム部門は システム単体の保守性を考えていればよかっ た。しかし現在では、『情報の可視化』が高度 に求められています。複数システムの統合的 な保守性を実現していかなければなりません」 と渡邊氏は語る。
そこで注目されるのがSOAだ。
社内の各システムは、開発言語もプラット フォームもアーキテクチャも異なっている。従 来の開発手法で、これらをつないで横断的に 情報を取り出そうとすると、膨大な数のインタ フェースを開発しなければならない。
「SOAなら、複数システムを柔軟につない で、業務視点での横断的な情報活用を支援 できるはずです」(渡邊氏)。
一方、通信・産業システム事業部では、 企業の合併やシステム再編成が頻繁に起き ている業界に向けて、SOAの導入を勧める 提案を続けていた。
「社内システムでSOA開発を経験してノウ ハウを身につければ、お客さまへのより具体的 な提案ができると考えました」と北林氏は語る。
そして、SOAの適用に最適だと判断された 社内システムが、営業情報システムである。
「既存のシステムは、営業支援システムとし て活用しているパブリッククラウドや複数の社 内システムを組み合わせて開発してきましたが、 受注より前の引き合い段階のプロセスで、 顧客情報を一貫して見られないという不満 の声があがっていました」と坂口氏は言う。
「営業プロセスごとに必要なシステムが複 数存在しており、この連携をプロセスごとに 開発するのは大変です。しかも、受注前のプ ロセスは変更頻度も高い。常に変化してい るプロセスに対応するには、SOAの疎結合 が望ましいのです」(渡邊氏)。
こうした思いが合致して、営業情報システム のSOAに基づく開発プロジェクトが始まった。
SOA基盤として採用したのは、日立のSOA プラットフォーム「Cosminexus」のプロセス統合 基盤「uCosminexus Service Platform」だ。
uCosminexus Service Platformは、ビジ ネスプロセス管理を行うと同時に、ビジネスプ ロセスとサービスを連携させるESBの役割を果 たす。営業支援システムにはパブリッククラウド の1つとして「Salesforce(セールスフォース)」を活用しているが、 このサービス連携はuCosminexus Service Platformで行っている。
また、業務プロセスに沿って、複数システムを サービス連携させ、その実行結果をダッシュボー ドに表示させるといったことも可能にしており、 ダッシュボードのアプリケーションはCosminexus のアプリケーションサーバ「uCosminexus Application Server」上で稼働している。
uCosminexus Service Platformを採用した のは、国内で開発された製品であり、迅速で 手厚いサポートが提供されるからである。実際 に日立ソフトは、日立の開発担当者と意見交 換しながら、確実な開発を進めていった。
SOA基盤を用いた新営業情報システムは、 2008年11月から利用を開始。ESBへの接続 方法はさまざまだ。
上から管理者画面、案件情報一覧画面、多次元統計、
表画面、統計グラフ画面。
Salesforceは、SOAPインタフェースで接続 し、Java™アプリケーションは、Java™部品 をサービス化して接続。Microsoft® .NET® アプリケーションは、uCosminexus Service Platformのアダプタ機能を使って、データベー スから直接データを取り込む構造にした。
「uCosminexus Service Platformは、直 感的なGUIでビジネスプロセスのフローを容易 に定義できます。業務アプリケーションの各機 能をマウスでマッピングし、ビジネスプロセス のフローを定義するだけで、プログラミングが ほとんど発生しませんでした」(坂口氏)。
今回の開発手法は、ウォーターフォール型 ではなく、ユーザー・レビューを繰り返して完 成度を高めていくという「反復型」を採用した。
「反復型の開発は、ユーザー部門を巻き込 んでの開発を進める手段として、非常に良い 組み合わせです。SOAは形がないサービスと いうものを扱うので、レビューが必要です。 またSOAでは、最初に対象領域が定義され ているため、ユーザーの要求がどこまでも広 がっていく懸念がありません」(坂口氏)。
新営業情報システムでは、複数システムに存 在する営業情報を、営業プロセスに沿って自在 に抽出できるようになった。業務プロセスの全 体を俯瞰して、製品ごとの問い合わせ件数や商 談状況、各セミナーやキャンペーン毎の契約成 立率なども、リアルタイムに把握できるのである。
今回開発したシステムは、契約までの営業プ ロセスが対象だったが、今後は入金プロセス まで範囲を拡大し、SAPR R/3Rやプロジェクト 統合管理システムなども統合していく計画だ。 実現すれば、開発の進捗度や入出金の状況 もリアルタイムに参照できるようになり、営業 支援の効果はさらに高まる。
SOAによるシステム開発で実感した成果の ひとつとして、不馴れな技術者でも業務プロ セスが理解しやすく、年月が経ってもブラック ボックス化しないシステムを作れたことが大きい という。つまり、将来の変化にも迅速に対応し ていけるのである。さらに、社外のパブリック クラウドをESBへ接続するノウハウを獲得した ことも大きな成果である。今後は、社内外の システムを、物理的な場所を意識することなく、 柔軟に組み合わせて対応していけるのだ。
「SOAでの開発というと、欧米ではシステム の全自動化が目的となっていることが多いので すが、日本ではヒューマンワークが残る前提で 業務・システムの効率化を考える必要がありま す。日本のビジネススタイルの良いところは残 し、効率化できるところはSOAを活用する、こ のバランスが重要だと考えています」(北林氏)。
今後、日立ソフトでは、今回獲得したノウハウ を活かして、SOA関連ビジネスを強化していく。
「SOAシステム化コンサルテーション」や今 回の成果を反映した「SOA開発ガイドライン」、 「反復型開発ガイドライン」などの提供を通 じて、変化への迅速な対応ができるSOAの メリットを、多くの企業へ提供していきたいと 考えているのだ。
USER PROFILE
日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社
[本社] 東京都品川区東品川4-12-7
[設立] 1970年9月21日
[資本金] 341億円
[従業員数] 5,283名
システム開発、サービス、プロダクト&パッケージの 3つを主な事業領域とする総合システムインテグレータ。 官公庁・金融・保険・証券業向け大規模業務システム、 メインフレームの基本ソフト、オープンシステムのミドル ウェア製品など、幅広く開発。